PhotoXPress撮影
親の敷くレールを進む
調査の結果、ロシアの親が子どもに就いてほしいと思っている職業は、法律家(24%)、医師(21%)、経済専門家と会計士(19%)、実業家、軍人、プログラマーとシステム・アドミニストレータ(14%)、技術者(13%)、建築家とデザイナー(10%)、通訳(9%)。アーティスト、作家、芸術家などのクリエイティブな仕事を望む親は、わずか3%だった。これより少し多かったのが、政治家(6%)、スポーツの選手、ジャーナリスト、有資格労働者(7%)。
国立高等経済学院の研究員で、「住民の革新的行動モニタリング」プロジェクトのリーダーであるコンスタンチン・フルソフ氏は、法律家と経済専門家の職業には、安定した収入とキャリア展望のイメージが強いと説明する。医師はいつでもステータスの高い職業だったが、親の間で人気が出始めたのはつい最近である。民間医療や任意医療保険システムの発展により、医師の収入が増加したことで、意識が変わった。
ただ、国の求める人材と一致している人気職業は医師だけである。ロシア政府が予算枠(学費免除)を拡大したのは、大学の医療、工学技術、自然科学の分野で、連邦教育・科学省のデータによると、「経済」と「経営」では、これが19.8%減少している。
社会学者のデータによると、高学年の子ども(15~17歳)の4分の1が、職業を選ぶ時に親の意見を尊重し、5分の1がインターネットの情報をもとに将来を決めるという。
心理学博士で、モスクワ大学労働心理学研究室の研究員であるイリーナ・ブリンニコワ氏はこう話す。「卒業を控えた生徒の多くが親の指示にしたがって職業を選ぶからといって、生徒が自分について考えていることや、自分の将来に関して思い描いていることと、親の意見とが一致しているとは限らない。親が年上だから言うことを聞いているにすぎない場合が多い。ただロシアでは現在、親が子どもにああしろこうしろと言わずに、子どもの行きたい学校で学ばせるという、別の傾向も拡大している」
時代の変化
就職サイト「スーパージョブ・ル(Superjob.ru)」は、高学年の生徒の好みを分析し、収入と出世の早さ・簡単さという2つの点で職業を選んでいると説明している。職業のステータス、社会的ステータス、自己実現、人の役に立つことなどは、10分の1の生徒しか重視していない。スーパージョブ・ルによると、大学卒業後に学んだ専門職に就く学生は、経済で38%、法律で52%、保健で72%。
ブリンニコワ氏によると、1990年代は人文系の専門が好まれていたという。「大学で心理学部、社会学部、外国語学部などが次々と開設され、求人も多かった。ソ連時代は人文学部が希少で、学ぶ人も一握り。残りは自分たちの希望にかかわらず、工学や技術の学位を取得していた。また心理学者という職業は存在していなかった」
興味よりも収入
ここ数年は、これとは逆の傾向が見られるという。「人文系の職業の需要が徐々に減っているが、労働市場が飽和状態にあることが主な原因。雇用側が必要としているのは技術系で、生徒も労働市場の需要に合わせ始めている。ソ連時代は技術者が憧れの対象だったが、ゆっくりと確実にそれに戻りつつある」とブリンニコワ氏。
労働・社会関係アカデミーのエヴゲニー・コジョキン学長は、ここ10年で大きな社会的多層化が起こっていると話す。ソ連の学生は現代の学生よりも、精神的に自由に職業を選んでいた。以前は自分の興味で選べたが、今は将来いくらもらえるかを考えなければいけないという。「学生は市場プラグマティズムに移行し、職業を選ぶ時の重要な要素がお金になった。安定した職業に就きたがり、多くが公務員になることを夢見ている」
高学年の生徒は今のところ、それほど技術の道に進んでいないという。「国の産業発展やこの分野の展望を見いだしていないため、大学を卒業したら良い就職先を見つけられるという確信を持てていない」とコジョキン学長。
労働市場の専門家であるデニス・カミンスキー氏は、若い専門家の多くが自分の将来の仕事や出世について十分に考えていないため、労働市場についてよくわかっていないと話す。「たまに自分が就職したい大手企業を10社ぐらいスラスラとあげる学生もいるが、ほとんどが職場で何をしたいのかが、自分でもわかっていない。面談でありがちな答えが『人と接する仕事をしたい』だが、具体的にそれが何なのかを説明できる学生は少ない」
専門、地域、性別、年齢、市民権、宗教にかかわらず、ガスプロム、ルコイル、アップル、グーグルは誰もが働きたがる企業だという。
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