ロシアへ、それとも?

セルゲイ・サヴォスティアノフ撮影/ロシースカヤ・ガゼタ紙

セルゲイ・サヴォスティアノフ撮影/ロシースカヤ・ガゼタ紙

クリミアの都市の或る通りでは、ロシア国旗を掲げた義勇隊員たち、別の通りでは、苛立ちを隠せないタタール人たち、ほかのすべての通りでは、いつもと変わらぬ町の暮らし。彼らは実のところロシアに入りたがっているのか、市街戦は行われているのか、徽章のない軍服姿の男たちはクリミアでいったい何をしているのだろう?

雰囲気

 2月27日、シンフェロポリの最高会議前での集会。いつでも喧嘩ができる服を着た男たちで埋まる広場。

 年金生活の技師アレクサンドルさんは、二人を相手にこう語る。「今や文明間の戦争の時代! 西側の文明はイスラム文明を駆逐しようとし、私たちはその中途にあるのです」

 同い年のアンドレイさんは、しきりに相槌を打つ。「そう、そう」

 私は、彼らにこう訊ねる。「どうして人々はこの広場へ出てきたのです?」

「彼らは、そうしなければ死があるのみということを脊椎でひしひしと感じているのです」

 キエフの状況は、捉えどころのなさで人々を驚かせた。いったい誰が権力を握っているのか、バンデーラを崇拝する民族主義者それとも道理を弁えた人たちなのか、いったいこれからどうなるのか? 脳みそが働かなければ、なるほど、脊椎が反応するというもの。

 私はアンドレイさんにこう語りかける。「まるで破局ですよね。でも、何が問題なのか、どうやって闘うのか、なぜこんなことになったのか、誰も知りません。人々は、おののいて、みんな、思い思いに行動しています。逃げる人もいれば、助ける人もいます…」

「掠奪する人も…」とアンドレイさん。

「ところで、あなたは何をしているのですか?」

「私は掠奪者たちを銃で撃ちます!」

 何かをしなくてはと感じつつも、その何かがわからないから、広場へ行ってそれを探る。最高会議前の群衆の頭上を高らかな歌声が流れてゆく。「おまえを心に刻んだ、ロシアよ、わが祖国よ!」。ロシアは、クリミアそして海軍基地のあるセヴァストポリで形成された文化における救済のイメージなのだ。その他の旧きよきソ連の伝統も、ここでは、ついにほかのものに取って代わられることはなかった。

 

義勇隊員 

セルゲイ・サヴォスティアノフ撮影/ロシースカヤ・ガゼタ紙

 セヴァストポリの義勇隊員パーヴェルさんは、クリミアのロシアへの併合の是非を問う住民投票を支持する集会に参加するため、セヴァストポリからシンフェロポリへやってきた。

「五十三というこの歳になって初めて、私には別の人生を歩みはじめる可能性が現われました」とパーヴェルさん。

「どんなふうに?」

「まずやるべきことは、まっとうな人々に政権の座についてもらうこと」

「まっとうな人々は現れますか?」

「もちろん! まず第一にロシア人がやってきます」

「それで人生が変わるのですか?」

「よくなります。よくなりますとも。ロシアとウクライナはまるで違います。オリンピックをご覧になりましたか? まさに天晴れ! 多くの人がスポーツに携わっていて、はるかに大きな可能性が感じられます。私は信じています。私は法律家で、現在、五人の子供をもつ女性の問題を扱っているのですが、市の行政府は、形式的な口実のもと、彼らを路頭に迷わせようとしています。私は信じています。ロシアでそんなことはありえないと!」。

「そうしたことは、ロシアでも欧州でもありえますよ」

 パーヴェルさんは、一瞬口を噤んでから、こう述べた。

「ソ連時代には私たちはもっといい暮らしをしていました。私は信じています。暮らしはよくなって国内に秩序がもたらされると!」

 義勇隊員たちは、道路に最近お目見えした検問所に立ち、市街をパトロールし、集会に参加している。彼らは、ウクライナの民族主義との闘いというスローガンのもとに集まったが、クリミア半島ではバンデーラを崇拝する徒党は今のところ見られない。集会から遠い場所では、人々がふだんどおりに街を歩いている。

 最近の国勢調査によれば、クリミアの人口の12%はタタール人。

 シンフェロポリの民族テレビ局ATRを護るために集まったタタール人の男たちは、先を争って思いをぶちまける。「私たちは、ロシア人には反対しませんが、別の暮らしがしたいのです」

「私たちは、ちゃんとした法律も仕事も生活もあるヨーロッパに入りたいのです!」

 要するに、ロシア人もタタール人もよりよい暮らしを求めているが、一方はそれがロシアにあるとみなし他方は欧州にあるとみなしている、ということのようだ。

 

緑の兵士

セルゲイ・サヴォスティアノフ撮影/ロシースカヤ・ガゼタ紙

 夜毎、自動小銃をもち覆面で顔をかくし徽章をつけない緑の服に身を包んだ男たちが、最高会議ビル、空港、鉄道駅といった重要な施設を占拠する。朝になると、彼らは、自動小銃をいつでも撃てる状態にして彫像のように立ち、市民生活を妨げず、誰とも口をきかない。

 シンフェロポリの空港では、装填した自動小銃を手にしたくすんだ緑の服の四人の兵士たちが、「レストラン」という闊達な文字のしたで佇んでいた。兵士たちの前には、ジーンズやカーキ色のズボンを履いてだぶだぶのジャケットを纏った寒風で顔の荒れた義勇隊員の列。義勇隊員たちの前では、世界中から集まったジャーナリストたちが、ヒステリックなスタンドアップを書いている。

「これは、ロシアのそれともウクライナの兵士ですか?」とジャーナリストが道行く人に訊ねる。

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 クリミアのタクシー運転手たちは、笑みを浮かべて傍観し、住民は、みんな、それはロシアの兵士たちだと思っている。

「最高会議を占拠した人々は、いったい誰で、何人でしょう?」とジャーナリストがクリミア最高会議議員のグリゴリー・ヨッフェ氏に訊ねる。

「あれは、軍の制服ではなく、徽章もありません。彼らは、覆面をしており、私たちの質問に答えません。こうした場合にはそうするものなのでょう…。けれども、上官たちの話では、彼らはロシア国民の自衛隊と名乗っています」とヨッフェ氏。

 町が占拠されても、誰に占拠されたかを議員も知らない。明くる日、プーチン大統領は、クリミアへ軍を派遣する許可をロシア議会上院(連邦会議)から取りつける。

 クリミア最高会議の議長は、広場の人々に向かってこう述べる。「みなさん、今晩は! 最高会議の本会議は閉会しました。第一の問題は、ウクライナ構成下の国家としてのステータスのクリミア自治共和国への付与の是非を問う3月31日の住民投票の実施に関するものです」。

「ああああ!」。不満の声と叫び声が、広場に入り乱れる。「ウクライナだって! ロシアに入りたいのに! 私たちはロシア!」

 クリミアのすべての住民がいたわけではないが、広場の雰囲気はこんな感じだった。

 

民衆

セルゲイ・サヴォスティアノフ撮影/ロシースカヤ・ガゼタ紙

 3月1日、大祖国戦争を想い起こさせる黒とオレンジの聖ゲオルギーのリボンをつけた人々が、妻子を連れてクリミアの中心を練り歩いた。義勇隊は、まるでソチ五輪のように大きなロシアの三色旗を掲げて歩いていた。緑の兵士たちは、付近の通りや広場を封鎖して最高会議前の階段に陣取り、義勇隊員たちは、空港と同じように列を組んで兵士たちを護り、隣の歩道では、赤毛の猫が日溜まりで腹を暖めている。

 ベージュのジャケットを着た女性が、覆面を外した緑の兵士に深々とお辞儀をすると、その兵士は、逃げようもなく軽く会釈をする。女性がもう一ぺんお辞儀をすると、兵士も会釈をしたが、男性が携帯電話で撮影しようとすると、その兵士は手袋で顔を覆った。

 

*2014年3月6日付の雑誌「ルースキー・レポルチョール」9号に全文掲載。