ロシア通信撮影
8月に全ロシア世論調査センターが実施した調査によると、ロシア人の3分の2が移民により犯罪発生率が上昇したと回答している。
100万人
モスクワ(人口1150万人)に住む移民の数。そのうち3分の1が不法移民。
75%
不法移民のうち、ロシアと査証免除協定を結んでいるCIS出身者の割合。
また、調査対象者の40%が移民はロシア経済に対して悪影響を与えると回答している。
ロシア人はよく、移民は地域社会に溶け込まず、地元住民との世間的な関わりを持つこともなく、ロシア語をしっかり習得しないと非難する。
在ロシア移民は高まる民族主義の格好の標的にされている。
「住民登録書類の確認」という名目のもと、警察はしばしば移民から賄賂を徴収する。
モスクワの取り締まり当局も多くの犯罪を移民のせいにしている。
公式統計では、モスクワにおける犯罪の2割近くが移民によるものと記録されているにもかかわらず、モスクワ市検察庁は、ほぼ半数の犯罪が移民によって行われたと発表したことを、ロシア通信が今年報道している。
モスクワの人口1150万人のうち、移民は100万人を占める。そのうちの3分の1が不法移民だ。
このグループの大部分は低所得層にあり、ゴミ収集、清掃、道路工事など大多数のモスクワ市民が嫌がる3K(危険、きつい、汚い)の仕事に従事している。
ウラジーミル・プーチン大統領自身も移民が問題の種となっているとコメントして彼らを批判している。おそらく、大衆の感情に迎合したものであろう。
「ロシア人のためのロシア」というスローガンが次第に目立つようになってきている。こうした中で、民族主義者は外国(およびロシア国内の他の地域)からの移民を彼らの出身地に強制送還したいと考えている。
もちろん、こうした措置はソ連時代の国内での国民の動きを制限する制度が復活されない限りは不可能であることは言うまでもない。
ロイター通信撮影
経済底辺支える
民族主義運動組織の「モスクワの盾」は非登録住民の(不法)移民労働者の完全退去を目標に掲げている。
9月27日にはこの組織の活動家たちが野球のバットを手に、移民労働者の居住場所となっていた建物に乱入し、正式な住民登録書類を持ち合わせていなかった労働者たちを追放した。
経済が繁栄していた時代に、旧ソ連の中央アジアの共和国から建設事業のためにやって来た移民は1100万人にのぼる。
ロシアは4580万人の移民がいる米国に次いで、2番目に大きな移民人口をかかえる。その次は98万人のドイツだ。しかし、全人口に占める割合では7.7%に過ぎず、ドイツや米国よりもずっと低い。
移民はモスクワのような大都市に集中する。それにもかかわらず、ロシアの首都が彼らに提供できるインフラやサービスは少ない。この都市には「移民に優しい」ホステルが1軒だけ郊外にある。1泊わずか5ドルだ。
「警察には1日に何回も職務質問されるんだ」と、ダゲスタン出身で20歳のホステル居住者のマキシムが言う。「だからなるべく目立たないようにしている」
マキシムはスーパーのレジで仕事をし、1カ月1500ドル稼ぐという。ロシアの辺境の地方なら、その1割でも立派な稼ぎである。
このホステルに滞在できる幸運な人は少ない。多くの移民は職場に住み込むというケースがよくあり、その「職場」は建設現場ということさえある。
連邦移民局のコンスタンチン・ロモダノフスキー局長はロシアの移民政策が失敗したことを認めた。彼は、違法移民労働者のための特別収容所の設置を提案したが、これらの施設が移民の求職活動や居住許可証の取得を支援するものなのか、国外退去のための施設かは明言を避けた。
移民入国の自由化を訴える人もいる。大統領府直属の企業経営者の権利のためのオンブズマンを務めるボリス・チトフ氏がその例だ。
ロシアNOWに対して、チトフ氏は「すべての移民労働者を一挙に国外追放したら、経済が崩壊してしまいます」と語った。
「現在、ロシアでは15人に1人の職は移民が担っています。人口減少のロシアで労働力に対する需要は増加するばかりです。だれがこの需要を満たすというのでしょう?」
ロシアは高齢化が進んでいる。2030年までにロシアの就労人口が8750万人から7740万人に減少すると予測されている。
チトフ氏によれば、不法移民のうちの75%は、ロシアと査証免除協定を結んでいるCIS出身である。これらの移民の間でロシアに永住して国籍を取得することを希望する人は5分の1でしかない。
ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)研究員のセルゲイ・ マルケドノフ氏によれば、カフカスや中央アジアからの移民に対してビザの障壁を強要する試みは、これらの国々で反ロシア感情をあおることになるという。
CIS諸国のカザフスタンに300万人、ウズベキスタンには100万人、アゼルバイジャンには12万人と、依然として多くのロシア人が居住していることも、覚えておくべきであろう。
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