アントン・ウニツィン、ロシア通信撮影
二人の可愛い亜麻色の髪の乙女が代わる代わるもう一人の女の子の髪を引っ張る。その子はごみだめのそばの地面に倒れる。二人の乙女はその子に自分たちの靴に口づけさせる。
ネット上に流される
数カ月前、13歳の女子生徒たちが同級生をいじめる様子を映したこのビデオはロシアのユーチューブのあらゆる記録を塗りかえた。女の子の両親はビデオがネット上で流れ、警察が来た時に初めて事態を知った。
2年生のワレーラはどうして隣の席の生徒が席を替え、優等生のナージャが自分と口をきかなくなったのか、すぐにはわからなかった。
ほどなく、彼は「でか耳」というあだ名をつけられた。最初は抵抗を試みたものの、クラスのみんなを相手にすることはできなかった。
次々と新しいいじめ
「どんな集団にものけ者が必要なのは、のけ者が重要な機能を果たしているからだ。子供たちは集団的な攻撃において互いの結束の強さを示そうとする。生徒たちの世界は競争が激しく、そこにはヒエラルキーがある。のけ者とは他人のステータス争いの犠牲なのだ。のけ者自身はもともと自分のステータスに甘んじているから、しつこい同級生たちの目を逃れるのは容易ではない。たとえ、そののけ者が転校しても誰かが代役にさせられる」
マルク・サンドミルスキー氏、心理学者
いくら抵抗してもクラスメートたちは次々に新しいいじめを考え出す。彼のノートを窓から放り投げたり、彼の背中にチョークでいたずら書きをしたり。
「学校へ行くのがいやで、おまけに先生がいつも僕を黒板の前に立たせました」とワレーラは振り返る。
彼は学校の廊下で三人の同級生に殴られた。両親は医務室から電話がかかってきて、息子が学校でいじめに遭っているのを知った。
「女性教師がみんなの前で息子に『あなたは耳が大きいくせに何の知識も耳に入らないのね』と言ったそうです」と母親のエレーナ・シェベリョワさんは語る。
ワレーラが別のクラスへ移されると、いじめはなくなったという。
「教師と生徒のいずれがいじめているのか。いじめの原因を探ることが大事」とモスクワの第1589番中等・高等学校のソフィヤ・ボゴロジツカヤ校長は語る。
いじめられやすい子
最もいじめられやすいのは身体的な特徴のある子供、あまり裕福でなく、あまり幸福でない家庭の子供。あるいは、すぐかっとなるデリケートな性格の子供だという。
田舎から都会へ引っ越してなまりの取れない子供は決まってクラス中の笑い者にされる。
アーニャの母親マリーナ・ロゴワさんは「ある時、娘の食欲がなくなり、頭痛も始まった」と切り出して、いじめのことを話してくれた。
ある日、びしょぬれの服で学校から帰ってきた。いくら尋ねてもアーニャは泣くばかり。マリーナさんは翌日、学校へ足を運んだ。アーニャは当番の生徒たちが床を洗ったバケツの水をぶっかけられたという。
それを聞いてかっとなったマリーナさんは娘をいじめた女子生徒に持っていたボトルの水をぶっかけた。学校は大騒ぎとなり、マリーナさんは暴力行為で刑事責任を問われ、クラス内でのアーニャの立場は一層苦しくなった。
マリーナさんは悔しがった。「自分は子供のために何もできなかった。自分の身は自分で守るしかない」
エスカレートを防ぐ
自分の子供がいじめられていると分かった時、親が子供を支えて一緒に困難に立ち向かうことを心理学者は勧めている。いじめがますますエスカレートしかねないからである。
ボゴロジツカヤ校長は語る。「いじめられる子は誰かが手を差し伸べれば自分の本領を発揮できる。自分がリーダーになれる居場所を見つけてあげることが大切だ。そうすれば自信がわいていじめられることもなくなる。それができるのは教師だけだ」
心理学者たちもいじめられる生徒に眠っている才能を見いだし助言を与えている。自分に得意の分野があれば、のけ者のレッテルなど自然にはがれ落ちよう。
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