顔に酸性液をかけられたフィーリン氏続報

=タス通信撮影

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強酸性の液体を顔にかけられた、ロシア・ボリショイ劇場バレエ団のセルゲイ・フィーリン芸術監督は、救急病棟から一般病棟に移された。医師によれば、容体は安定しているという。

「目の予後は現時点では予測困難」 

ヘルムホルツ眼疾研究所の所長で、ロシア連邦保健省の主任眼科医であるウラジーミル・ネロエフ氏は、現時点でフィーリン氏の予後診断をすることは難しいとした。「当研究所は目のやけどについて、フィーリン氏と話し合いを行っている。このような状態で必要なのは、外科療法と温存療法だ。すべてはやけどの具合、診断、病理過程にかかっている。そのため簡単な状況ではない。現在は視力を維持することが最優先課題だ」。

頻繁だった脅迫、嫌がらせ 

ボリショイ劇場広報部のエカチェリーナ・ノヴィコワ部長は、何者かが電子メールのアカウントに不正侵入したことなど、最近フィーリン氏に対する犯罪的攻撃がひんぱんに行われていたことを伝えた。フェイスブックで不正にフィーリン氏になりすましてページを作成し、ボリショイ劇場の上層部に対する猛批判を行ったり、脅迫電話をかけたり、車のタイヤを切り裂いたりしていたという。

「顔の再生には何年もかかる」 

フィーリン氏は1月17日深夜、自宅近くのトロイツカヤ通りで襲撃された。フィーリン氏が自宅に近づこうとしたところ、何者かがフィーリン氏の名前を呼び、振り返った際に顔に強酸性の液体をかけて逃げたという。フィーリン氏は大やけどを負って第36病院熱傷センターに搬送された。

アンドレイ・ヴェセロフ熱傷専門医によると、フィーリン氏の顔の皮膚の再生には複数回の整形手術が必要になるなど、今後の治療は非常に困難なものとなる可能性があるという。「間違いなくⅢ度熱傷であれば、顔の表情はなくなる。再生には何年もの長い時間がかかる」。

セルゲイ・フィーリン氏

ロシアの功労芸術家であるセルゲイ・フィーリン氏は現在42歳。モスクワ振付学校を卒業し、1988年にボリショイ劇場のバレエ団に入団。「白鳥の湖」のジークフリート、「くるみ割り人形」の王子、「ロミオとジュリエット」のロミオなどを演じている。東京バレエ団、イギリス国立バレエ団、ハンガリー国立バレエ団などで招待ソリストとしても活躍した。2008年にバレエ・ダンサーを引退し、2011年3月にボリショイ劇場バレエ団の芸術監督に就任。

ウラジーミル・メジンスキー文化相は18日、ユーリイ・チャイカ検事総長に連絡し、この事件を特別捜査するよう求めた。フィーリン氏の襲撃は、ロシア連邦刑事法典「故意の重傷害罪」にもとづいて、刑事事件として扱われることとなった。犯人は最大で8年の禁固刑に処されることとなる。

職場のトラブル?個人的怨恨? 

内務省モスクワ市総局の広報部によれば、警察は職場のトラブルと見ているものの、私生活のトラブルも除外視していない。フィーリン氏の容体が安定したことから、警察当局が詳しい話を本人に聞いている。

劇場関係者らは事件の残忍さにショックを受けており、原因がわからないとしている。ボリショイ劇場のプリマ・バレリーナ、ニーナ・カプツォワさんはこう話す。「ただただショックだ。どうしてこんなことが起きたのかわからない。バレエ団の雰囲気はとても良く、困難、もめごと、問題などは知らない。フィーリン氏は品行方正で公明正大な人だったため、誰からも愛されていた」。

「ボリショイの体質に起因」 

ボリショイ劇場バレエ団の元芸術監督で、現在アメリカのバレエ劇場の振付師をしているアレクセイ・ラトマンスキー氏は、ボリショイ劇場に道徳感がないことが悲劇を起したと考える。「フィーリン氏の事件が起こったのは偶然ではない。チケットのダフ屋、行き過ぎたファン、報道の嘘、関係者のスキャンダラスなインタビューなど、ボリショイ劇場ではたくさんの病魔がひとつに凝縮されている。具体的な人々によって、ここの劇場の道徳観が徐々に壊されていった。今回の事件は偉大なる劇場の真の悲劇だ。セリョージャ(フィーリン氏の愛称)よ、すぐに元気になって気丈に乗り切ってくれ!」

*ロシア通信、インターファクス通信、コメルサント紙、コムソモリスカヤ・プラウダ紙、レンタ・ル、ガゼタ・ルを参照。