ロシアと米国はそれぞれ1550個の戦略核弾頭を有している。これらの弾頭はすべての運搬手段、すなわち爆撃機、潜水艦、ミサイルに搭載できる。
しかし、核弾頭に防空システムをかいくぐるためのトリックがあることを知る人は少ない。
「トーポリM」大陸間弾道ミサイルの試験発射
ロシア国防省/TASS「核弾頭はいわゆる『複数個別誘導再突入体』を詰めた容器だ。言い換えれば、弾頭は敵の領土のさまざまな場所を攻撃するようプログラムされた複数の核爆弾に分離するのだ。こうしてミサイルは一つから複数に変わる」と雑誌『独立軍事評論』のドミトリー・リトフキン編集長はロシア・ビヨンドに話す。
例えば、ロシアが近く配備する大陸間弾道ミサイル「サルマト」の弾頭には、150~300キロトンの威力を持つ個別誘導再突入体が15個以上入る。再突入体は「ブドウの房」のように弾頭内に収納され、大気圏に突入すると複数の核爆弾に分かれる。
「現代のあらゆる核ミサイルがこの方式で作られている。ロシア、米国、フランス、中国などのすべての国においてだ。一発のミサイルが防空システムで迎撃される確率を下げることが狙いだ」とリトフキン氏は指摘する。
防空システムの課題をより複雑にするため、技師らは本物の核爆弾に混ぜて「フェイク」の複数個別誘導再突入体も仕込んでいる。
「対ミサイル兵器を無力化して本物の核爆弾の通り道を作ることが目的だ。軍事科学の研究は、潜在的な敵にとっての課題をいかに難しくするかという一点に向けられている」と編集長は続ける。
「フェイク」再突入体は本物の再突入体と同じようにレーダー上に光って映る成分で満たされている。
「これは燃料や金属テープ、特別なブースターなどから成る。レーダー上で『フェイク』を本物の核爆弾に見せる混合物だ」とリトフキン氏は言う。
RS-24「ヤルス」弾道ミサイル
Maksim Blinov/Sputnik「フェイク」を使って敵のコンピューターを騙すのは大陸間弾道ミサイルだけではない。
「敵に見つかった潜水艦は、レーダーが魚雷の接近を捉えたら、潜水艦一隻と同じ音を出す特別な装置を発射する。水中攻撃兵器とその誘導システムは概して音に頼っているため、この装置は魚雷の誘導システムを騙し、本物の潜水艦から引き離すことができる」と21世紀技術推進財団のイワン・コノヴァロフ開発部長はロシア・ビヨンドに語る。
彼によれば、飛行機やヘリコプターもフレアを利用して敵の赤外線ホーミング誘導ミサイルの目を眩ませて身を守る。
「こうしたシステムは世界中で防衛手段の一部として用いられている。新旧あるが、最先端のものほど敵の攻撃システムないし防衛システムを騙せる確率も高い」とコノヴァロフ氏は締め括る。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。