ネット上の完全監視「デジタルDNA」

エヴゲニー・チェレシネフ氏

エヴゲニー・チェレシネフ氏

=報道写真
 エヴゲニー・チェレシネフ氏は、「デジタルDNA」技術の試験を行うため、皮下インプラントをつけて2年過ごした。これはインターネットのユーザーを、アカウントIDやパスワードの入力なしに、生体的特徴で認証するもの。

ネットに現れる特徴で個人を識別

 「カスペルスキー研究所」の職員であるチェレシネフ氏は、一人ひとりのユーザーがインターネット上に固有の「デジタル・フットプリント」を残すと考えている。これにより、ユーザーがわざわざアカウントIDやパスワードを入力しなくても、声、脈拍、指紋といった生体指標で総合的に識別し、さらにはユーザーの行動まで予測することができる。この「デジタルDNA」は誰にでもある。

 理論を調べるため、チェレシネフ氏は実験を行った。チェレシネフ氏の手の皮下インプラントは、タイピング速度、交流サイト(SNS)上の語彙、生体データを含む、チェレシネフ氏のすべてのデジタル情報を収集した。

 「人が完全に追跡されることの危険性、人の行動パターンの分析と改変にもとづいた行動の操りの危険性を、うちのチームが調査した。実現し得る将来を見て怖くなった。そのため、人が完全にコントロールされるような未来を許さないよう、私のすべての力、知識、感情、経験を注いでいる」

 アメリカ・ニューヨークで1月末に開催されたTEDカンファレンスで、チェレシネフ氏はこの技術について話した。これより先に、カザンでも紹介している。

「すべての接続デバイスに対する常時監視のもとに人はあり、匿名になり続けるのはほぼ不可能。私達一人ひとりが固有で、画面の特定の部分でマウスを一定速度で動かし、予測可能なタイプミスをする。すべての動き、言葉、支払いを誰かにのっとられ、利用される可能性がある」とチェレシネフ氏。

 

ディストピア的支配の手段

 近い将来、ハッカーは他人の個性をコピーすることができるようになるし、大企業は顧客についての独占的知識を持つことになると考える。「デジタルDNAは具体的な個人の心理のカンニングペーパー」だとチェレシネフ氏。

 デジタルDNAへのアクセスによって、インターネットで個人を特定し、その人のデータにアクセスするだけでなく、その人の欲望、旅行、関心ごと、知識、また悪癖まで操ることができるようになる。 

 個人の固有の情報は、物理的かつ法的にその個人に属していなければならないという。「所有者の同意なしにデジタルDNAにアクセスする権利を、いかなる国もサービス・プロバイダーも持ってはいけない」とチェレシネフ氏。

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