空港の精密探知ワンちゃん

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警備犬の危険物質の探知精度は、新しい方法のおかげで高まった。動物の脳と中枢神経系の生体電気の分析を含むこの方法は、モスクワの「シェレメチェボ」国際空港で活動するイヌとジャッカルの交配種スリモフ犬で試された。

 あまり目立たない小さな犬が、シェレメチェボ空港の中を歩きまわり、時々、すばやく、ぶしつけに、誰かのカバンに濡れた鼻を突きつける。人懐こいワンちゃんに、人々の顔もほころぶ。犬は仕事が楽しくて微笑んでいるようにさえ見える。

 これは「ジャッカル・ハイブリッド」と呼ばれる、北カフカスのジャッカルとシベリアン・ハスキーをかけあわせたスリモフ犬。スリモフ犬の嗅覚は普通の作業犬より鋭いが、それでも間違うことがある。犬はごほうびをもらうために仕事をする。テロリストのカバンの中に爆発物を見つけたら、おいしいエサがもらえる。時々、ごほうびほしさに、カバンの中に何もなくても担当者にアピールするので、そのような間違いが起こるのだ。

 ロシアの航空大手「アエロフロート」航空安全管理部はここ14年、シェレメチェボ空港の警備にスリモフ犬を使っている。

 ロシアの研究者は、アエロフロートと共同開発した新しい危険物質発見方法(3月に特許登録)を、スリモフ犬で試している。この技術は探知犬の中枢神経系の変化を監視し、作業精度を向上させる。

 

犬にも良心の呵責

 この方法は7チャンネルの脳の生体電気活動の動態を分析するもので、その裏付けとして、さらに犬の心電図と呼吸も観察される。ネオプレン製の特別な探知犬のキャップには、電極がつけられる。犬の中枢神経系の複合反応は、リアルタイムでコンピュータに送られる。

 アエロフロート航空安全管理部のアザト・ザリポフ副部長は、ロシアNOWの取材に対して、こう話す。「我々は現在、作業の初期段階に位置している。使っている可動模型は、今のところ、かなり大きめ。当方の小さな犬にもつけられるほどではあるが」

 新しい方法によって、犬の「発見したフリ」の識別も可能になる。「犬は笑顔を見せないし、ウインクもしないから、その”ずるさ”を見破るのがこれまでは難しかった。だがこの方法だと、脳造影図が犬の良心を示す。犬は自分が間違っていることを知っている。中枢神経系の反応がまったく違ってくる」とザリポフ副部長。

 今のところ、測定数値は実験所の条件で校合されている。開発者によると、将来的には、犬のデータが空港の安全管理室や、畜犬学者のアイパッド、スマートフォンに送られる可能性もあるという。送られてくる信号は、犬が正しいか否かを緑色と赤色で示す。「音はない。人間に見抜かれていると犬が気づかないように」とザリポフ副部長。

 

機械は犬に劣るが、信用される

 「機械だと、どんなに高額でも、性能に限界がある。犬の嗅覚の可能性は数十倍も高いが、機械の方が信用される。機械ではすべてがはっきりあらわれるから」とザリポフ副部長。アエロフロートは最近まで、くり返しチェックの方法を活用していた。3頭の犬が順番に互いを確認しあう。

 このような従来の方法でも、犬の精度は60%。新しい方法は、有害物質の検出精度をほぼ100%まで高めると、ザリポフ副部長は説明する。研究者は約1000回の試験を行った。うち間違いは8件のみだった。

 

人間のガンも探知

 将来的に、アエロフロートの畜犬学者は、この方法を他の犬種にも応用することを計画している。連邦内務省や軍の犬も含めて。これらの犬は通常、ラブラドールとシェパードだ。スリモフ犬が新たな技術によって見つけられるのは、危険物質だけではない。においでガンの診断も可能。

 「肉食動物は自然の看護師。ジャッカルにとって病気の動物は、健康な動物よりも捕獲しやすい。実験を行ってみると、マウスはガンに罹患した3日後には尿と一緒に特別な物質を分泌させることがわかった。このようにして、犬は病気をにおいで嗅ぎわける」とザリポフ副部長。畜犬学者は現在、モスクワにあるロシア科学アカデミーA.A.ハルケヴィチ情報伝達問研究所および生態・進化研究所と共同で研究を行っている。

 スリモフ犬はこれ以外にも、大量の宝石や貨物の山の中から、象牙を簡単に見つけることができる。つまり、象牙のために年間数万頭殺されるゾウの問題を解決することができるのだ。「象牙の加工はアフリカ大陸では行われない。中国、ベトナム、イタリアへの輸送路がある。 実験したところ、当方の犬は簡単に骨のにおいを嗅ぎわけることがわかった」