ミハイル・ココリチ氏=コメルサント紙撮影
「宇宙に行くことをあれこれ思案しているわけじゃない。行くと100%確信している。宇宙は従来のような、高額で行きにくい場所ではなくなっている」と、民間宇宙企業「ダウリヤ・エアロスペース(Dauria Aerospace)」の創設者であるココリチ氏は話す。
宇宙を股にかけて
2013年のロシア連邦宇宙プログラムには40億ドル(約4000億円)かかった。主に宇宙基地に使われたもの。
ココリチ氏は宇宙を自身の主なビジネスにした。2013年までに、モスクワ市郊外とアメリカのシリコンバレーで格安の小型人工衛星の生産を展開し、ドイツのミュンヘンで衛星から送られるデータを処理するクラウド・プラットフォームの会社を設立した。さらに宇宙で撮影されたデータとM2M遠隔測定を使いながら、事業者が消費者向けのアプリやサービスを考案することができる、宇宙アプリ・ストアを開設する計画もある。
民間企業は1990年代半ば、すでに宇宙市場に参入し、産業で使われているコンポーネントを衛星の製造に採用していた。2000年代末には、製造にロケットや有人宇宙船も加わった。1999年、小型人工衛星産業に統一規格「キューブサット」が現れた。
人工衛星の組み立てだけでは道半ばである。軌道上にこれを運ぶには、打ち上げロケットが必要だ(打ち上げ費用は5000万~1億ドル≒50億~100億 円)。だが小型人工衛星を他の大きな宇宙機と一緒に打ち上げる随伴打ち上げなど、コストを大幅に削減する手段が考案された。数十基の人工衛星がこのようにして一度に打ち上げられている。また、国際宇宙ステーションから送る方法もある。ゴミ廃棄用の穴から軌道に人工衛星を送る、または宇宙飛行士が船外に出て 押すなど。
このような方法により、軌道に小型人工衛星を投入するコストを、数十万ドル(約数数千万円)まで抑えることができた。とはいえこのような衛星の多くは最近まで、科学や娯楽のためにしか使われてこなかったが。
ココリチ氏は自身の宇宙ビジネスを、この衛星の製造からスタートすることにした。シリコンバレーの「ダウリヤ・エアロスペース」は、小型人工衛星用のコンポーネントを製造していた小さな企業と合併した。
「ダウリヤ・エアロスペース」は2012年、ロシア連邦宇宙局の小型人工衛星2基の製造案件を落札。契約総額は数千万ドル(約数十億円)ほどだという。
宇宙からの情報とサービスの販売も
ココリチ氏は販売用人工衛星の製造が楽ではない、利益を生みにくいビジネスであることを理解していたため、「ダウリヤ・エアロスペース」のビジネスに、人工衛星だけでなく、情報とサービスの販売も含めている。ただしそのためには、軌道に独自の人工衛星群を投入する必要がある。
ロシアは2012年、宇宙に24基のロケットを打ち上げた。失敗したのは1基のみ。世界の民間打ち上げ市場におけるロシアのシェアは約30%。
最初の人工衛星打ち上げは2014年2月の予定。これは世界の大洋の船舶によって伝達されるAIS受信機つきの実験用DX-1。
次なるステップは、「ペルセウス(Perseus)」宇宙撮影用人工衛星群の展開。ココリチ氏は500万ドル(約5億円)の人工衛星を6基軌道に投入しようとしている。重量は約12キログラムで、随伴打ち上げされる。ペルセウスの主な用途は、3スペクトル領域の宇宙からの地球撮影。アメリカの「ランドサット」からも画像を得ることが可能だが、これは18日に1回しか地表の撮影を行っていない。ペルセウスは1日1回である。例えば、森林火災をすぐに発見し、洪水や違法な森林伐採および建築を監視することができる。「航空撮影と迅速性を競いながら、著しく安い価格でデータを提供できるということ」とココリ チ氏は説明する。
宇宙のアプリストア
「ダウリヤ・エアロスペース」は、宇宙情報を保存および頒布するためのクラウド・プラットフォーム「クラウデオ(CloudEO)」を通じて、情報を販 売しようとしている。これは宇宙のアプリストアのようなものだ。ココリチ氏は国ではなく、多くの小口顧客と仕事をしようと考えている。
もう一つのプロジェクトは人工衛星群「ピクシス(Pyxis)」。打ち上げ予定は2015~2016年。この衛星は、ロシア、カナダ、北欧諸国の北極圏のインターネット接続を安定させる。石油・ガス分野が通信を必要としている地域の通信を、特別な楕円軌道に投入されたピクシスが円滑にする。
「宇宙に投資するには、宇宙を好きでなければならない。そして真剣な投資活動と、投資家説得術も必要。うちはそれが何とかうまくいった」とココリチ氏。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。