コンスタンチン・アグラゼ氏 =ロシースカヤ・ガゼタ撮影
日本の山中伸弥教授によって、5年前にすべてが変わった。患者本人が内蔵を培養するための幹細胞のドナーになれば、精神的な負担や、生体適合性の問題について心配しなくて済む。アグラゼ氏は京都大学の日本人研究者らとともに、大きな成果をあげた。
-世界のメディアは当初、アグラゼさんたちが世界で初めて試験管の中で人工心臓を培養したと報道しました。その後、これについてより慎重な評価が出てくるようになりました。実際には何をされたのか、どのような発見をされたのか教えてください。
これは再生医学の話です。人工多能性幹細胞から、人間の完全な心筋組織を人工的に培養したというだけではありません。我々の前にも個別の細胞の培養は行われていましたが、培養量は多くはありませんでした。我々は特別な高分子ナノ繊維の3次元支持体を用いて、構造化された心臓組織をつくれるようになりました。この支持体で心臓細胞を培養できただけでなく、細胞を完全な心臓組織につくりあげることができたのです。
-この組織から心臓をつくることは可能でしょうか。
基本的には可能ですが、何よりも薬物製剤の試験のために組織をつくったのです。このような心臓組織のモデルは、新薬を開発する薬剤師にとって極めて重要です。薬剤師は最初に個別の臓器で試験を行い、その後動物実験に移るわけですから。でも動物の心臓細胞は人間のものとは異なります。我々の研究はこの部分を補完するもので、これによって効率的で的を絞った新薬開発が可能となり、コストも大きく削減できるようになるのです。
次に、患者本人の細胞を、心臓組織の細胞に再プログラム化するという課題もあります。この細胞をその後、患者に適合するインプラントへと培養することも可能です。これはもっとも盛んに研究が行われている再生医学の一つで、心臓組織のシートと呼ばれています。このシートは心臓組織の損傷部分に当てたり、縫いつけたりすることができます。
-このシートをつくる際、高分子をご利用になりますね。この材料に副作用はないのでしょうか。
我々の方法論は患者本人の細胞を利用するということにもとづいているので、免疫防御の問題はそこで解決されるということになります。シートの支持体になるナノ繊維は、治療や回復のプロセスで完全に血中で溶解する生分解性材料です。
-京都の研究所で皆さんの方法論を築くのに、どれほどの時間がかかりましたか。
3年以上です。方法論をゼロから打ち立てました。このノウハウは今後ロシアにも継承されますが、京都大学の研究所と協力しながら、発展させていくつもりです。モスクワ物理工科大学科学教育センターの主な課題は、細胞生理のコントロールの可能性を探ることです。我々は危険な不整脈の先進的な治療法および予防法を研究しています。そしてこの課題には京都大学の私の研究所も取り組んでいます。
-モスクワ物理工科大学の研究所は1年前に開設されたばかりですが、何か成果は得られたのでしょうか。
研究所はすでに活動していますが、日本と同じような成果を得るまでには、長い期間が必要です。ですが、状況が良い方向に進んでくれることを期待しています。研究所はすでにありますし、ロシアのうちの学生は皆、とても飲み込みが早いです。
*記事全文(露語)
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