米との核削減協議は制裁解除で進展?

ラミル・シトディコフ/ロシア通信
 アメリカとロシアで核兵器を相互削減することを条件に、アメリカは対ロシア経済制裁を見直し、一部の制限を撤廃する可能性がある。アメリカの次期大統領ドナルド・トランプ氏が、イギリスの新聞「タイムズ」のインタビューの中で、このように話した。軍事専門家によれば、ロシアにとって有益な内容であるが、NATO(北大西洋条約機構)の方針が変更されない限り無理そうだという。

 トランプ氏は、ウラジーミル・プーチン大統領と核兵器の大幅削減で協議したいと考えており、うまくいけばロシアに対する経済制裁の一部または完全な解除を検討する。

 「欧米はロシアに対して経済制裁を発動した。ロシアと何らかのうまい取引ができるか考えよう。核兵器の大幅な削減もその一つ」とトランプ氏。

 トランプ氏の新たな発言は、昨年末の発言とは異なる。1ヶ月前には、アメリカが「核能力を大いに強化、拡大する」必要があるとの見解を示していた。

 

クレムリン(大統領府)の立場

 ロシア政府は今のところ、トランプ氏の今回の発言について、控えめなコメントをしている。ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、記者団に「もう少しがまん」するよう求めた。

 「ちょっとがまんして、トランプ氏が大統領に就任するまで待とうではないか。就任後に、この提唱に対する何らかの評価をしよう」とペスコフ報道官。

 

賛成派の意見

 「この提案はロシアにとって有益であり、実際に言われたら、承諾すべき。ただ、トランプ氏には予測不可能なところがある。今日行ったことが明日変わる。アメリカの新国務長官から公式にプーチン大統領に提案があるまで、または少なくともセルゲイ・ラブロフ外相に電話があるまで待つ必要がある」と、ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所の首席研究員で退役少将のウラジーミル・ドヴォルキン氏はロシアNOWに話した。

 核兵器削減の提案は何ら新しいものではないという。バラク・オバマ大統領は2013年、配備核弾頭をさらに3分の1まで削減する必要があると話していた。

 2010年の第4次戦略兵器削減条約で、アメリカとロシアは配備核弾頭数の上限を1550発まで減らした。

 「2013年以来、我々は全力で新たな削減に抵抗してきた。アメリカのヨーロッパ・ミサイル防衛システム、戦略非核攻撃について話し、ロシアの専門家による調査結果にもとづいた反論が行われても、核兵器削減はロシアの核抑止力の潜在性に影響を与えると主張し、まったく根拠のない論証を取り入れてきた」とヴォルキン氏。

 

反対派の意見

 「アメリカは配備核弾頭数を1000まで、またあらゆる種類の搭載ミサイルを500まで減らすことを提案している。だがロシアとアメリカでは、核兵器の意味が異なることを理解する必要がある。ロシアにとって核兵器は抑止力だが、アメリカにとって核兵器は戦場で使用してはいけない、メンテナンスに多大なコストのかかる厄介者」と、退役大佐でタス通信の独立軍事専門家であるヴィクトル・リトフキン氏はロシアNOWに話す。

 核兵器の代わりに、アメリカは核弾頭に劣らない威力のある通常弾頭を備えた巡航ミサイルを開発し、装備している。

 「現代の戦争では、300キロトンの爆発力のある、誤差数十キロの兵器は必要ない。50年前のシステムとは異なり、今日のすべての兵器は高精度。爆発後に放射能汚染を残さず、世界中の人に多大な心理的影響を与えない100キロトンの通常弾頭で十分である」とリトフキン氏。

 ロシアとの核軍縮協議を成功させるには、ただ制裁を解除するだけでなく、ヨーロッパおよび世界で地政学的状況を和らげる必要があるという。

 「沿バルト海諸国、ポーランド、ルーマニアに新たなNATO軍が出現し、ミサイル攻撃システムに変わり得るミサイル防衛システムが配備されている時に、核弾頭数を減らす協議を行うことは、ロシアにとって困難」とリトフキン氏。

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