「トルコ渡航をしばらく控えては」

ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使

ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使

=ロイター通信
 ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が19日にトルコの首都アンカラで銃撃され、死亡した事件。国内では悲しみの声やテロを非難する声があがるとともに、なぜ犯人がこれほどまで容易に大使に近づけたのかとの疑問の声もでている。

 22歳のメヴリュト・メルト・アルトゥンタシュ容疑者(トルコ当局の情報によれば、今年7月15日のクーデター未遂事件後に解雇された元トルコ警察官)は、アンカラ現代美術館の企画写真展の開会式で、挨拶を行っていたカルロフ駐トルコ大使を銃撃した。

 このような悲劇を、ロシアは90年以上経験していなかった。1923年、スイスで白軍のヴァツラフ・ヴォロフスキーソ連全権代表が殺害されたのが最後である。

 

優しくて温和な外交官

 事件を受けて、ウラジーミル・プーチン大統領は、公式声明を発表。カルロフ駐トルコ大使の遺族および近しい人に哀悼の意を表明し、「殉職した」と述べた。プーチン大統領はカルロフ駐トルコ大使を個人的に知っており、「立派な外交官」だった、「優しくて温和な人」だったと死を惜しんだ。

 事件が発生した時、モスクワではロシア、トルコ、イランの三ヶ国外相会談が行われていた。プーチン大統領は事件を、改善しているロシアとトルコの関係を壊すことを狙った挑発だとし、「これに対する答えは一つ。テロとの闘いを強化する。ならず者はそれを実感することになるだろう」と述べた。

 

哀悼の意

 これは外交官社会にとって、特に大きな悲劇だった。事件があった日の夜から、モスクワのスモレンスク広場にあるロシア連邦外務省の建物には、人々が花をたむけるために訪れている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、両国の首脳が「残忍な殺人事件」の捜査で協力することで合意した、と話した。

 事件を企んだ者の主な目的はシリアにおけるテロとの効果的な闘いを阻むことだった、とラブロフ外相は考えており、うまくはいかない、と話した。そして、この困難な時に連帯を示した国民および外国の外交官に、感謝の意を表した。

 ロシア外務省は交流サイト(SNS)「フェイスブック」に、「仮想追悼帳」を作成。希望者は誰でもお悔やみの言葉を書くことができる。ここにはロシア人、外国人が書き込んでいる。「皆にとってつらいこの時、強さと不屈の精神を得られますように。国全体の気持ちはあなたとともにある。お悔やみ申しあげる」と、ユーザーのアンナ・メゼンツェワさん。「全世界がカルロフ大使の死を悲しんでいる。追悼が政治的暴力のない世界のために戦う他の人々を後押ししますように」と、ニュージーランドのデビッド・レミアさん。

 

背後にいた犯人

 カルロフ大使の遺族や仕事仲間への同情の意が表明され、テロリストに対する批判が行われる中、多くの高官が、なぜ犯人はこれほどまで簡単に写真展会場に入ることができ、また大使に近づくことができたのかとの疑問を示している。

 ロシア上院(連邦会議)国際問題委員会のコンスタンチン・コサチョフ委員長は、フェイスブックにこのように書いた。「犯人は7月15日のクーデター未遂後に警察を解雇されていたのに、警察手帳を持っていた。なぜそんなことが可能だったのか」。コサチョフ委員長は、犯人が警察の身分をまだ失っていなかったか、または警察手帳を返していなかったかのどちらかだと考えており、いずれにしても、トルコ警察の「ずさんさ」を指摘している。また、事件の状況がはっきりするまで、ロシア人はトルコへの渡航を控えたほうがいいと言っている。

 同様の見解を、オレグ・スィロモロトフ外務次官も示している。「トルコに行こうとしている人は、行く前にじっくり考えるべきだと思う。ほぼ毎日テロが起こっているから」とスィロモロトフ外務次官。

 

「ロシアは中東で嫌われている」

 とはいえ、安全性を保証できないのはトルコだけではないと、アラブ学者で国際ジャーナリストのマリアンア・ベレニカヤ氏はブログ「ライブジャーナル」に書いている。「用意できていなかった」とし、中東では多くの人が、シリアなどでのロシアの活発な活動により、ロシアを嫌っている、と指摘した。

 アメリカは中東において、「誰かに何時でも爆破される」ことを想定しており、自国の外交官を守るため、徹底した安全対策をとっている、とベレニカヤ氏。安全対策の強化は、中東で積極的な政策をとることの“ツケ”であり、カルロフ大使が殺害されたことは、安全確保の必要性を示すものだ、とベレニカヤ氏。