オランダ「マレー機撃墜捜査報告」

ロイター通信
 オランダ検察庁を中心とした国際合同捜査チームは、マレーシア航空ボーイング777型旅客機(MH17)のウクライナ東部での撃墜事件に関する中間報告を発表し、ロシアに非があるとした。ロシアはこの影響を受けるだろうし、その覚悟をしておくべきだと、専門家は考える。

 ウクライナ東部で2014年7月17日にMH17が墜落した件をめぐり、オランダ検察庁は28日、国際合同捜査チーム(ウクライナ、ベルギー、マレーシア、オーストラリア、オランダの関係者で構成)の捜査報告の第2部を発表した(第1部は2015年10月に発表)。MH17を撃墜した地対空ミサイル「ブク」は誰のものだったのか、どこにあったのかという疑問に対する答えを、捜査関係者はここで示している。

 報告によれば、2014年7月に義勇兵の管理下にあった領域(ペルヴォマイスク村の近く)からミサイルが発射され、ブク自体はロシアからウクライナに運ばれ、撃墜後にロシアに返送されたという。

 このようにして、捜査チームはロシアに非があるとしたが、具体的な人物名などは公表しなかった。容疑者として、約100人のリストを捜査チームは作成しているが、オランダ検察の主任検察官で捜査チームの調整役であるフレッド・ウェスタービーク氏は、ロシアに対して公式に疑惑をかけるのかについては、言及しなかった。最終結論は国際裁判所に提出され、報告はそこで証拠となる。捜査期間は現時点で、2018年初めまで延長されている。

 

証拠写真はどこに?

 ウクライナ東部のドネツィク人民共和国は、証拠が示されていないとして、この報告を「嘘」だと言い、否定した。「こうやって報告はするが、アメリカの画像にあるという証拠を誰も見せることができていない。2年も経過しているのに、誰もその画像を見たことがない。ウクライナも自国のレーダー基地からの上空の様子を見せることを拒んでいる。欺き、嘘が横行している」と、ドネツィク人民共和国国防省兵団のエドゥアルド・バスリン副司令官は、ロシアのラジオ局「モスクワが話す」のインタビューで述べた。

 今回の報告発表では画像が示されたが、衛星画像ではなく、ブクが運ばれるところを見たとする目撃者の写真や、発射地点と推定される場所の焦土の写真などもあった。

 ロシア政府は事前に、証拠は説得力に欠けるものとなると考えていた。報告発表が始まる1時間前に、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、MH17の件で義勇兵は「明白な」無罪だと話した。ロシア側が証拠となる新たなデータを2日前に発見したことも伝えた。

 新たなデータとは、ロシアとウクライナの国境付近に位置しているロシアのレーダーのデータである。これによれば、MH17の撃墜が可能となるのは、ウクライナ軍の管理下にある領域の方向から発射された場合のみ。そのため、義勇兵の管理下にある領域から撃墜された可能性は排除されるという。「データは明白。そしてこれらのデータにはミサイルはない。ミサイルがあったとしたら、他の領域からの発射のみ可能である。(中略)反論の余地のない、議論不可能なもの」とペスコフ大統領報道官。

 ちなみに、このロシア側の証拠は、捜査チームの報告では参考にされなかったことが、報告発表の後に伝えられた。

 

「何をつけてもロシアが悪い」

 国際裁判所はロシアの罪を認めるのだろうか。欧米はロシアが悪いとしか考えていないと、ロシアの専門家らは考える。

 「真の原因を知ることはないと断言できる。ロシアがこの件に何らかの形で関与しているのならば、欧米は可能なことをすべてやるだろうし、資料をすぐに公表するはず。こうやって2年半も待つわけはない」と、「国際専門家連盟」のアレクサンドル・グセフ理事は、ロシアのラジオ局「コメルサントFM」で話した。

 「国際人文・政治学研究所」のヴャチェスラフ・イグルノフ所長によると、欧米のエリートはロシアに非があると考え、そこで終わっているという。「国際裁判所が反対の判決を出したとしても、空気は変わらないだろう。あと、国際裁判所は無罪判決を出せないと思う。良くて証拠不十分と言うだけ」とイグルノフ所長はロシアNOWに話した。

 ロシアは、当然のことながら、このような裁判を認めないため、「欠席裁判になる」、と予測するのは、「高等経済学院」世界経済・政治学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学部長。だが、影響は深刻になり得る。悪ければ海外の国有財産の差し押さえにまで発展するかもしれない。「報告発表の時期は、シリア情勢をめぐる論争の時期と重なった。一方でシリア政府軍への攻撃があり、他方で国連の人道支援の車列が空爆を受けて怒りの波が起こった。ここでもロシアが悪いと非難されている」とスズダリツェフ副学部長。人道支援の車列が空爆されたことを受けて、イギリスのボリス・ジョンソン外相はロシアに対する経済制裁を求めた。アメリカでもジョンソン外相を支持する声があがった。さらなる欧米との対立がロシアを待ち受けていると、スズダリツェフ副学部長。

 新たな経済制裁について、ロシアNOWが取材した専門家らは、可能性が低いと考えている。MH17の件では、捜査が始まる前からロシアが非難されていたため、ロシアに対する経済制裁がかなり強化された。今は制裁できる分野がほとんど残っていない。だがロシアの対抗措置の余地は大きい。

 「ロシアは攻撃され続けても(例えば、リオ五輪前の選手の問題など)、強力な対抗を行わず、ずっと忍耐強く、慎重に対応してきた。戦術的にこれは正しいが、問題が生じているのも事実。何かあればロシアが悪いというのが、公理になりつつある」とスズダリツェフ副学部長。