ウクライナ軍の侵攻の可能性は?

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領とヴィクトル・ムジェンコ軍参謀本部長、6月24日、 2016年=

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領とヴィクトル・ムジェンコ軍参謀本部長、6月24日、 2016年=

ロイター通信
 ウクライナ東部での武力衝突の激化を背景に、ロシアでは、ウクライナはドンバス(ウクライナ東部)の自称共和国の支援者らに対する軍事作戦を開始するのではないか、との見方が広がっている。ロシアは、フランスとドイツに対し、ウクライナ当局へ圧力をかけるよう呼びかけた。

 ロシアのグリゴリー・カラーシン外務次官は、7月6日のドイツおよびフランスの大使との会談で、ドンバスにおける状況の悪化は、ウクライナ軍による軍事作戦の準備について物語るものである、と語った。カラーシン氏は、ロシアおよびウクライナの大統領とともに自国の首脳がドンバスでの危機の解決を目指す「ノルマンディー4者」協議に参加している両国の大使に対し、「軍事的シナリオを阻むべくウクライナに対して自国の影響力を行使するよう」求めた。

 翌日、ロシアと米国の大統領は、電話会談で、ウクライナ東部の状況について協議した。今回は、ロシアの首脳に対し、ロシアの庇護下にあるドネツィク(ドネツク)およびルハンシク(ルガンスク)の両自称共和国に関して、同様の呼びかけがなされた。オバマ氏は、プーチン氏に対し、「ウクライナ東部での衝突の再発に終止符を打つ措置を講じるよう」求めた。

 ドンバスにおける戦闘の深刻な激化に関する懸念の声は、ロシアばかりでなくウクライナでも上がっている。ウクライナは、これまでと同様、そうした可能性は、ウクライナ全体とりわけドンバスにおける状況を不安定化させたいとのロシアの思惑に起因するものである、としており、ウクライナのアンドリー・パルビー最高会議議長は、ロシアには「米国における選挙およびEUにおける危機的現象」を背景にそれを行いたいとの誘惑が生じうる、と述べている。

 

砲撃の数の増加

 どちらがウクライナ東部における安定化を促すべきかに関しては、一致した意見はないが、このところドンバスの分離ラインにおいて緊張が高まっていることに関しては、疑問の余地はない。メディアの報道によれば、ここ数週間で、ドンバスにおける砲撃の数は、三割強、増加した。欧州安全保障協力機構(OSCE)も、停戦違反が頻発化した、と声明している。

 一方、ロシアの専門家らは、ウクライナ軍によるドンバスの紛争地域への大規模な軍事侵攻の準備について語る根拠がある、とは考えていない。独立国家共同体(CIS)諸国研究所のウラジーミル・エフセーエフ副所長によれば、「(ウクライナによる)大量の軍隊の展開について語るべきではない」。それは、むしろ、ロシアと西側の関係悪化を望んでいる過激主義者らの挑発と言える[対峙ラインには、過激主義的な思想で知られる義勇兵団の戦士が多数いる]。

 軍事専門家で「アルセナール・オチェーチェストヴァ(祖国の兵器廠)」誌の編集長であるヴィクトル・ムラホフスキイ氏は、本紙へのインタヴューで、ウクライナ側が「何らかの大規模な軍事行動」を準備していることに関するデータを自分は持ち合わせていない、と語った。また、政治的軍事的分析研究所のアレクサンドル・フラムチヒン副所長は、ウクライナによる侵攻の準備に関する報道がないにしても、ドンバスにおける戦闘行動は完全に終熄したわけではなく、本格的な戦争は「いつで再発しうる」とし、その原因として、双方が現状に不満である、つまり、ウクライナもドネツィクおよびルハンシクもより多くを望んでいる、という点を指摘している。

 

「無意味な結果」

 ロシアは、7月8日、「ノルマンディー4者」協議の欧州の参加者に訴える試みを続けた。今回は、より高いレベルにおいてで、プーチン大統領は、電話会談で、ドイツとフランスの首脳に対し、ウクライナ軍が「挑発的性格の行動」を停止すべくウクライナへ圧力をかけるよう呼びかけた。

 ムラホフスキイ氏は、「ウクライナ側が、周期的に、ときには重火器を用いて、局地的な作戦において自国の部隊を試している」点を強調している。同氏によれば、これは、とくに義勇大隊について言える。これに関連して、同氏は、ドネツィク人民共和国の支援者らによって支配されているデバリツェヴォ付近での最近の衝突を例に挙げ、ウクライナ軍の二つの中隊は、中立地帯を掌握しようとしたものの、反撃に遭って撤退を余儀なくされた、と述べ、「軍事的観点からすると、[この作戦の]結果は、まったく無意味なものである」と結んでいる。

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