今年のロシア外交の重要な出来事

ロシア通信
 ロシアNOWは、2016年もロシアの当面の問題を規定する今年の五つの外交面の出来事を概観してみた。

1. シリアでの軍事作戦の開始

 9月末のシリアにおける過激なイスラム主義者らに対するロシア航空宇宙軍の作戦開始は、大方の観測筋にとって寝耳に水であった。その決定が何に起因するものであったかについては、今もさまざまな見方がある。専門家らは、いくつかの要因もしくはそれらが重なり合ってロシアの決定に影響を及ぼした可能性がある点を指摘している。

- 米国主導の連合が功を奏していないこと

- シリアをめぐる政治対話を促す試み

- ロシアが手を拱いているうちに西側がリビアの場合と同様の飛行禁止ゾーンをシリア上空に設定するとの懸念

 一方、悲惨ともいえるシリア政府軍の状態がシリアにおけるロシア軍の行動開始をもたらした、との見方がある。PIRセンターの評議会員で専門家のドミトリー・エフスタフィエフ氏は、本紙にこう語った。「ロシアの軍事作戦がなかったなら、来年までにシリアのバッシャール・アサド大統領の政権は倒れていたろう。明らかに窮地に追い込まれていたのだから」

 アサド政権が敗れていたなら、「イスラム主義のカオス」が、シリアを満たし、ほどなく アフガニスタンやタジキスタンへ波及し、ロシアの国境へ迫ったことであろう。

 現在、状況を変えることができた。軍事的イニシアティブは、シリアの政権の側へ移り、アサド氏とその同盟者らは、大きな成功を収めた。シリアの大統領は、自分の支配下にある地域およびそれらの地域に配置されている部隊をふたたび掌握することができた。

 エフスタフィエフ氏は、「南部の地域とダマスカスの一帯で大きな成功が見られ、戦略的に極めて重要なアレッポ周辺の地域がふたたび支配下にある」と述べている。

 アナリストらは、シリアにおけるロシア軍の作戦の現段階は、ほぼそのような形で、あるいは、ロシアの軍事プレゼンスの若干の増大を伴って、1月まで続く、と考えている。それは、天候状態、すなわち、航空機の飛行を妨げる砂嵐の始まりに起因しうるが、ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長は、まさにその時を政治的解決を促すために利用しうる、と考えている。あとは、ペルシャ湾諸国、イラン、トルコにシリアの政治的将来の問題で歩み寄る気があるかどうかといった地域の国々の姿勢に、多くがかかってくる。

 

2. Su-24撃墜事件

アレクサンドル・ヴィルフ撮影/ロシア通信

 11月24日のシリア・トルコ国境付近でのトルコ空軍によるロシアの爆撃機Su-24の撃墜は、シリア危機解決の問題においてトルコを前面に引き出した。両国の関係は、これを境に極めて悪化した。

 メディアでは、NATOのこの加盟国さらにはブロック全体とロシアの武力紛争の見通しについて語られはじめたが、ロシアは、軍事的報復ではなくトルコに対する経済制裁の導入を選択した。ロシアの反応の規模は、ロシアが予め計画された挑発をトルコの行動に見てとったことに関連している。

 この事件をめぐる状況は、それがまさにトルコの示威的なジャスチャーであり準備された政治的アクションであったと考える根拠を、ロシアの専門家らにも与えている。東洋学者でロシア戦略研究所の専門家であるエレーナ・スポニナ氏は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、自分に対する大衆の人気を揺るぎないものとするためにそうした形で「鉄拳に似たようなもの」を誇示したかった、と考えている。

 ロシア国際問題評議会のアナトリイ・コルトゥノフ氏は、エルドアン氏は、Su-24の撃墜を指示して、隣国シリアにおけるロシアの行動へのトルコの不満を指摘したかった、と考えている。同氏は、トルコ側が、トルコ・シリア国境に隣接するトルコ語系のシリア人やトルクメン人が暮らしているその地域における飛行禁止ゾーンの創設について、かねてから口にしていた、という点を指摘している。

 コルトゥノフ氏は、エルドアン氏は、自分をトルクメン人の庇護者に見せようとしており、トルコの指導部は、ロシア機を撃墜することによって、それらの人たちがアサド政権の支持者であるか過激な反対者であるかにかかわりなくトルコの庇護下にあることを知らしめた、と結論づけている。

 アナリストらは、トルコはロシアのあのような激しい反応を予想していなかった、と考えている。スポニナ氏の考えでは、トルコは、「ロシアが経済協力のあらゆる面に及ぶほど多面的に対抗してくるとは予想していなかった」

 スポニナ氏は、その事件の結果、数十年にわたって築かれてきた露土関係は潰え去り、それを再建するには「何週間や何ヶ月ではなく何年もかかる」、と考えている。

 コルトゥノフ氏は、ロシアもトルコも今さらなかなか後へ退けない、とし、「関係の緩和は考えられるとしても、従来のフォーマットや規模でのその再建はもはやあるまい」と述べている。

 専門家らは、露土関係そのもののほかに、ロシアで禁止されているイスラム国(IS)に対抗する現実的な国際的連合創出の努力をも、トルコとロシアの対立の犠牲とみなしている。しかし、彼らは、そのプロジェクト創出の道には、中東問題解決の方法に対する、主要プレーヤーたちの見方の相違に関連した問題が、それでなくとも非常にたくさんある、という点を強調している。

 

3. ミンスク-2

ロイター通信撮影

 ドンバス(ウクライナ東部地域)の状況は、シリア危機を背景に影を潜めた。しかし、ウクライナ危機は、2015年の大部分を通じてロシアの主要な問題であった。来年も、ドンバスの状況は、今の静けさにもかかわらず、その意義を失わない。

 ドンバスにおける危機の解決は、2015年2月12日にベラルーシの首都で締結された合意(ミンスク-2)の遵守の必要性に関するスローガンのもとに、図られてきた。その際、ロシア、ドイツ、フランス、ウクライナの首脳は、長時間の話し合いの末、ウクライナ南東部において停戦をもたらし和平プロセスをスタートさせるはずの基本的な措置を定めた。

 ミンスク-2にもかかわらず、戦闘行動や砲撃は、以前ほど熾烈ではないものの晩夏まで続き、ドンバスに真の静寂が訪れたのは、9月頃であった。

 専門家らは、停戦は和平プロセスへの米国の事実上の参加およびウクライナに対する西側からの圧力の結果となった、と考えており、ロシア連邦社会院のメンバーで専門家のイオシフ・ディスキン氏は、米国のヴィクトリア・ヌーランド国務次官補が7月にキエフへ赴いて議会を訪れた点を指摘し、「ロシア連邦は、ロシアの立場が紛争の最小限化を目指しており、ウクライナの立場が米国とEUの頭痛の最大限化を目指していることを、西側に納得させることができた」と本紙に語った。

 ウクライナ政府とドンバスの双方は、ミンスク合意を遵守していないとして相手を非難し合っている。砲撃が再開されたが、それは、主として銃火器によるものである。

 ドンバス当局によって2月に延期された地方選挙の実施が、ミンスク合意を遵守する双方の決意のほどを見きわめる大きな試金石となる。その延期は、南東部の地域へのより大きな自治権の供与に関するものをはじめとしたミンスク-2によって見込まれている法律の採択のための時間を、双方とりわけウクライナ政府に与えるためのものであった。

 しかし、今のところ、メディアは、然るべき法律の承認という面での何らかの進展について報じていない。西側では、まさにミンスク合意の履行が制裁撤廃の主な条件とみなされているため、それは、対露制裁撤廃の見通しを不透明なものにしている。

 

4. イランをめぐる取引

ロイター通信撮影

 7月半ばに達せられたイランの核プログラムに関する合意は、想定内のものであった。六者(国連安保理常任理事国五ヶ国とドイツ)とイランの間の多くの原則的な合意は、4月に達せられていた。

 7月には、最終的かつ相互に受け入れ可能な歩み寄りに至ることができた。六者とイランによって達せられた合意は、イランの核プログラム(西側諸国はこれを核兵器の入手を目的とするものとみている)の推進への大きな制限と引き換えの、対イラン制裁の段階的な撤廃を、見込んでいる。

 ロシアがこの合意の達成において演じた役割は、西側諸国にとって想定外であった。米国のバラク・オバマ大統領は、こう語った。「私は、プーチン氏とロシアの指導部がこれ(これら二つの問題:イランとウクライナ)をすっぱり切り離したのに驚いた。好い合意を達成するために私たちおよび他の六者のメンバーと協力するロシアの用意がなかったなら、私たちは、この合意を達成できなかったろう」

 一部の観測筋は、ロシアがこの取引を支持したことに首を傾げている。というのも、制裁が解除されれば、イランの石油が世界市場に出回り、このロシアの重要な輸出品がさらに大きく値を下げるはずだから。

 しかし、ロシアの考えでは、ロシアにとってのこの合意のプラス面は、考えられるマイナス面を上回る。PIRセンターのドミトリー・エフスタフィエフ氏は、イランが重要なパートナーとしてロシア連邦に必要である点を指摘している。モスクワカーネギーセンター・プログラム「非拡散問題」の担当者ピョートル・トプィチカノフ氏によれば、イランの制裁からの脱出は、ロシアにとってまず第一に軍事技術協力の分野および平和的性格の核テクノロジーの分野における好い見通しをもたらす。メディアで報じられたところでは、潜在的な契約の額は、軍事技術協力の分野だけで200億~700億ドルと評価されている。

 専門家らは、イランが多面的な外交および通商政策の形成という観点からロシアにとって原則的に重要である点を強調している。

 イランは、また、ロシアとともに、シリア危機の解決にも積極的に参加し、アサド政権を支持している。コルトゥノフ氏は、制裁の撤廃は地域および国際舞台におけるイランの行動の合法性を増す、と考えている。

 

5. BRICSおよびSCOのサミット

ロイター通信撮影

 2015年7月、BRICSと上海協力機構(SCO)のサミットが、ロシアのウファで同時に開催された。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)のサミットでは、同組織をいっそう充実させるためのさらなる一歩が踏み出された。専門家らは、会議の主な成果として緊急時外貨準備金基金やBRICS銀行(新開発銀行)といった金融メカニズムの事実上の始動を挙げている。ロシアにとって、それは、制裁のためにロシアが資本市場から多くの点で切れ離されていることを背景として、特別の意義を有している。資本の額が1000億ドル(約12兆円)となるBRICS銀行の最初のプロジェクトは、早くも2016年に融資を開始する。

 ピョートル・トプィチカノフ氏は、同組織の質的変化がSCO(ロシア、中国、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、ウズベキスタン)のサミットの成果となった、と考えている。インドとパキスタンの加盟申請の承認が、SCOに新たな質を付与している。モスクワ国立国際関係大学・東アジアSCO研究センターのアレクサンドル・ルキン所長によれば、それは、SCOをより強力な世界のプレーヤーとしており「ユーラシアの第二の非西側の極」にしている。ロシアは、外交上の国益を実現するための新たな大きな梃子を手に入れつつある。

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