APECサミットに寄せて

画像:ドミトリー・ディヴィン
 APECサミット前に、プーチン大統領が、アジア太平洋地域の経済成長を加速するための、地域の経済協力のあり方を論じる。

 11月18~19日、マニラで、APEC(アジア太平洋経済協力会議)加盟国による、恒例の首脳会議が行われる。今回のサミットは、議長国フィリピンの提案で、「包括的発展を通じての世界の向上」をモットーとして行われる。

 長きにわたり、アジア太平洋地域および世界の他地域での経済成長の動力は、貿易・通商だった。だが、関税のリベラル化のもたらす効果が低下するにつれて、追加的な合意が必要であることが明らかになった。それらの合意は、サービス、投資、非関税障壁、競争力強化のための政策、補助金なども包括するものである。当然、困難な交渉と互いの妥協なしにそれを実現することは不可能だ。

 こうした状況からの突破口の一つとなり得るのが、地域の経済統合を深化させることだろう。今日、ロシアは、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスとともに、ユーラシア経済連合を成功裏に発展させつつある。我々の統合プロジェクトは、当初は、他国およびその統合体との協力を目指すものだった。今年5月には、ユーラシア経済連合とベトナムとの間で、自由貿易圏に関する協定が締結されている。同様の協定を結ぶ可能性を、現在40カ国が検討中だ。

 透明なパートナーシップの例を示したのが、ユーラシア経済連合と中国のシルクロード経済ベルト構想(一帯一路)との連携に関する合意である。このプロジェクトを実現することで、一連の「狭い場所」を、交通インフラ、通関手続きとサービスの正常化の領域で「拡大する」ことが可能になる。これは、アジア太平洋地域の経済統合に重要なはずみとなるだろう。

 また、伝統的な、あるいは「再生可能な」エネルギーの領域で、さらに、非常事態への対応、食糧安全保障、農業の分野で、来年ロシアのソチで開催されるロシアASEANサミットにおいて、相互に有利な合意がなされるものと期待する。

 たしかに、新たな自由経済圏の創設は、全体としては、アジア太平洋地域における商品流通と投資のリベラル化に好適な条件の形成をうながす。だが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の創設に関する交渉の非公開性をみると、それがアジア太平洋地域の揺るぎなき発展に寄与することはあるまい。

 APEC加盟国の発展のポテンシャルを実現するには、現在の通商、物流に対する「ゲームのルール」だけで合意しても不十分である。IT技術に基づく「新経済」の、いまだ初期段階にある市場をいかに形成し、調整していくかについて、共通のアプローチを作り上げねばならない。加盟国の企業が現代的で有望な製品を生み出し、良い職場を創出するために、追加的な可能性を保障する制度と規則を作ることが必要だ。 我々の確信するところでは、戦略的な道程は、自由経済圏の数を増やすことばかりに存するのではなく、APEC加盟国相互の立場と利益を考慮しつつ、あらゆる加盟国において、現実のリベラル化の最良の形態をともに練り上げ、根付かせていくことにある。また、これに関連し、APECの役割を高める路線を継続していくべきである。その役割とは、閉鎖的な障壁から自由で、開かれた、差別なき、地域に共通の市場を形成していくために提出される、様々な統合上のイニシアチブを調整する者としてのそれである。この点で特別な意義をもつのが、2014年に北京で採択された「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現に向けたAPECの貢献のための北京ロードマップ」だ。

 ロシアも、アジア太平洋地域における新たな金融機関――BRICS銀行(新開発銀行)とアジアインフラ投資銀行――の活動に、積極的に参加している。それらの活動は、同地域の発展をうながすだけでなく、世界の金融システムの安定強化にも寄与すると確信している。

 ロシア一国のレベルでは、最大限に快適なビジネス環境を作り出すべく徹底的に取り組んでおり、その努力は、国際的にも評価された。この4年間で、世界銀行のビジネス環境ランキング「Doing Business」で、120位から69ポイント上がって、51位にランクされた。

 とくに注意を払っているのが、ロシア極東の潜在力だ。今年、いわゆる「率先発展領域(TOR)」の創設作業に着手した。これは、ロシアではかつてなかった、税制その他の特恵を備えた経済特区だ。ウラジオストク港についても、自由港の地位に関する特別法が採択されている。こうした制度を、極東の他の主要な港湾にも広げる計画だ。

 極東の港湾、北極海航路、鉄道幹線の現代化などが、アジア太平洋地域における相互関係の強化の促進要因となり、同地域と欧州とのインフラの重要な環にならねばならない。

 また、アジア太平洋地域では、地域内に共通の教育空間を創る、ロシアの提案に大きな関心を示している。同地域が、世界をリードする「技術センター」としての地歩を確実に固めつつある今日、大規模な研究のプラットホーム及びセンターを創設すべく協力することがいよいよ焦眉の課題となっている。これに関連して指摘しておきたいが、ロシアのこの分野での主導的な役割は、パートナー国の認めるところとなり、ロシアはペルーとともに、APEC教育大臣会合の共同議長国の任を委ねられた。この会合は、リマで2016年に開催される。

 急速な経済成長の達成は、アジア太平洋地域でのエネルギー安全保障と、公正かつ長期的な気候適正化なしには不可能である。APECのフォーラムの活動は、燃料・エネルギーの域内輸送システムに投資するための好適な条件の創設、エネルギーの統合された市場のさらなる発展、環境に優しい、また再生可能なエネルギーの比重の増加、低炭素エネルギー技術の普及などに向けられているが、ロシアはこれらの活動を支持する。

 間もなく12月にパリで国連気候変動会議が開かれ、そこで、温室効果ガスの排出削減をめぐり、グローバルな合意を達成する試みがなされる。我々は、こうした活動の成功に関心を抱いており、ロシアのこの方面での貢献についての報告を提出済みである。

 APECが直面している課題の規模と多様さは、強烈な印象を与えずにはいない。我々は、相互のパートナーシップという基本原則に則り、我々の諸国民の福祉のために活動し、単一のアジア太平洋の家族の形成を推し進めつつ、これらの課題を成功裏に解決していけると確信している。

 

*筆者はロシア連邦大統領

 

ロシア語原文は、ロシースカヤ・ガゼータ(ロシア新聞)に掲載され、その国際プロジェクト「Russia Beyond The Headlines」の日本語版「ロシアNOW」が和訳した。