ウクライナ東部紛争の深刻化が懸念

ウクライナ東部のドネツィク空港近郊に位置するイベリア女子修道院内のイベリア生神女イコン教会。ウクライナ東部の戦闘で深刻な被害を受けた。

ウクライナ東部のドネツィク空港近郊に位置するイベリア女子修道院内のイベリア生神女イコン教会。ウクライナ東部の戦闘で深刻な被害を受けた。

ヴェラ・コスタモ撮影/ロシア通信通信
ウクライナ東部における砲撃の頻発および和平交渉の停滞を背景に、紛争当事者らは、ミンスク合意が破綻しかねないとの懸念を表明しはじめた。ロシアの専門家らは、ドンバス(ウクライナ東部)における現在の情勢の複雑さを認めつつ、交渉プロセスを葬り去るのはまだ早いと考えている。

 ウクライナ東部からは、緊張の激化と新たな戦闘の勃発に関する報告が寄せられている。紛争当事者らは、停戦合意に違反して居住地域を砲撃しているとして互いを非難している。8月10日未明、スタログナトフカ村付近の境界ラインで戦闘が発生した。

 自称ドネツィク(ドネツク)人民共和国の指導者アレクサンドル・ザハルチェンコ氏は、すでに8月7日に、「新たな戦闘激化が生じうる一連の間接的な徴候が見られる」と声明していた。ドネツィク(ドネツク)とルハーンシク(ルガンスク)の両人民共和国の代表らは、ミンスク合意は履行されていないとし、新たな「ノルマンディー四者」首脳会議の開催を呼びかけている。

 一方、ウクライナ当局は、交渉プロセスを破綻させようとしているとして親露派およびロシアを非難しており、また、ロシア外務省は、ドネツィク(ドネツク)およびルハーンシク(ルガンスク)との直接対話をウクライナ当局に呼びかけている。

 

交渉は続いている

 しかし、ロシアの専門家らは、交渉は続いており、ミンスク和平合意に見切りをつけるのはまだ早い、と考えている。基金「政治テクノロジーセンター」のボリス・マカレンコ理事長は、ロシアNOWにこう語った。「ミンスク合意は、今も完全に有効です。ミンスク合意は履行されていないとか原則として履行されえないと言う人たちは、それがまず第一に停戦に関する合意であるという大切なことを忘れています。双方が砲撃をしているとはいえ、大規模な戦闘作戦や犠牲者は1月から見られていません。今のところそれらがないということは、ミンスク合意が機能しているということです」

 

緊張激化の張本人は?

 一方、和平プロセス停滞の原因に関して、アナリストらの見方は分かれている。マカレンコ氏は、和平交渉を妨げているのはミンスク・プロセスの主な参加者の間の信頼の欠如であるとし、ミンスク合意の各参加者に相手方を非難するまっとうな言い分がある、という点を強調している。

 しかし、ロシアでは、すべての観測筋がミンスク合意の不履行に対する責任は紛争当事者すべてに均等にあると考えているわけではない。大方は、主な責任はウクライナ当局にあると確信しており、政治学者のセルゲイ・ミヘエフ氏は、まさにウクライナ当局が合意の政治的部分における実現を妨げているとし、「ミンスク合意を完全に履行すれば、“過激主義者”らの条件でではありませんが、大幅な歩み寄りと憲法改革という条件でドンバス(ウクライナ東部)を統合することになります。そうなると別のウクライナを目にすることになるため、彼らはそれを望んでいないのです」と語り、現在のウクライナ当局にはそれができない点を強調した。

 

「ロシアン・タンブラースイッチ」

 国立高等経済学院・世界経済世界政治学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学部長は、ウクライナ当局は、西側へ何かを示せるように、ミンスク合意の政治的部分を履行するふりをしているとし、「ウクライナ当局の考えでは、ミンスク・プロセスは(ウクライナ)南東部の降伏です。ウクライナ軍のウクライナ・ロシア国境への配置(親露派支配地域とロシアとの関係断絶を目的とした)という合意の最終項目の履行に関する問題は、当初から提起されていますが」と、ウクライナには合意の残りの項目を履行するつもりがないことを念頭に置きつつ、述べている。

 

ミンスク合意

 ロシア、ドイツ、フランス(「ノルマンディー四者」マイナス・ウクライナ)の仲介のもと2015年2月11~12日にベラルーシの首都で締結されたミンスク合意で謳われているのは、ウクライナ東部における停戦および紛争の政治的解決をもたらすはずの一連の条件の履行であり、文書では、ウクライナ東部の一連の地域に特別の地位を付与し、法的に定めることのほか、ウクライナ当局による恩赦の実施、ウクライナ当局が支配していない地域における選挙の組織、脱中央集権化を目的とした憲法改革の実施、ドンバス(ウクライナ東部)とロシアの間の国境に対する監視のウクライナ側への移管について述べられている。

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