プーチンの対IS計画

ロイター通信
 過激派組織「イスラム国(IS)」に対抗するため、イラク軍やクルド人武装組織以外に、シリアのバシャール・アサド大統領に忠実なシリア政府軍を加えた、反ジハーディスト(聖戦主義者)の統一戦線を創設することを、ロシアが国際社会に提案した。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は3日、アメリカのジョン・ケリー国務長官およびサウジアラビアのアデル・ジュベイル外相と、カタールの首都ドーハで会談し、これを伝えた。しかし、ロシアの専門家は、この提案がアメリカや中東の同盟国から支持されないと考える。

「シリア軍、イラク軍、クルド人その他の統一戦線を

 ラブロフ外相は会談で初めて、ロシアの対IS計画の詳細を明かした。この計画には、ウラジーミル・プーチン大統領が6月末に言及していた。ロシアの提案とは、シリア軍、イラク軍、クルド人、その他の当該地域の国々の武装組織を統一することである。だが、アメリカと一部の中東諸国がアサド大統領の退陣に固執していることが、ネックとなっている。

 ラブロフ外相は、「(アメリカ主導の有志連合がISに対して行っている)空爆だけでは不十分」、「地上で武器を手にテロリストの脅威に立ち向かっている人を含めた、志を同じくする人の連合を創設することが必要」とロシアは考えており、「これはシリア軍、イラク軍、クルド人を含む」とドーハで話した。対IS有志連合は合意された国際法にもとづいて結成されるべきであり、国連安保理からの委託を受ける必要があるという。

 同時に、スイス・ジュネーブでシリア和平会議が行われた際、「国連安保理を含む国際社会、トルコ、欧州連合(EU)、アラブ諸国は、政権交代ではなく、政治的移行期間について署名した」のだから、ロシアがアサド大統領を支持していることについて議論する意味はない、とラブロフ外相は述べた。

 

特に反応はなし

 ロシアの提案に対する反応は明らかになっていない。独立系科学センター「中東研究所」のエヴゲニー・サタノフスキー所長は、現状においてこのような会談の効果は出てきにくいと考える。アメリカの政策では、アサド政権への態度を変えることは想定されておらず、これがロシアの計画の実現を不可能にしている。アメリカは「打倒アサド」を“依頼”されており、「依頼国の一つはサウジアラビア」だという。これを背景に、シリア問題の突破口を期待することはできない。

ISの活動はアメリカの国益に直接的な影響を与えないため、ISの脅威の高まりさえも、アメリカのシリアの支配体制の問題に対する取り組みに影響しないと、サタノフスキー所長は考える。

 

アメリカによるシリア反体制派への支援

 ロシアの呼びかけにもかかわらず、アメリカはアサド政権に対する立場を事実上強化したことが、3日に明らかになった。アメリカが訓練したシリアの「穏健な」反体制派が攻撃を受けた場合、アメリカは相手がISでもシリア政府軍でも、防衛するという。

 アメリカ国防総省は、「防衛的射撃支援」すなわち空爆を、先月31日にすでに実行したと発表した。標的となったのは、アルカイダ系武装勢力「ヌスラ戦線」。空爆支援は、「彼ら(シリアの『穏健な』反体制派)の攻撃相手が誰かにかかわらず」、行われる

 ラブロフ外相はドーハで、このような活動が国際法に違反すると指摘。対IS統一戦線の結成を妨げると強調した。さらに、「(中東の)近隣諸国で、アメリカはいわゆる穏健的な反体制派の戦闘員の訓練を行ってきたが、どれも戦闘員の大半が過激派になるという結果に終わっている。これが最も重要な点だ」と述べた。

 「アメリカの立場を揺るがすことができたとは思わないが、この問題では、両国の意見は明らかにわかれている」とラブロフ外相は総括した。