OSCEが厳しい対露決議案を可決

写真提供:OSCE

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欧州安全保障協力機構(OSCE)議員会議が、ウクライナ東部へのロシア軍の関与を初めて認め、“反ロシア”決議案を可決した。「厳しい」決議案の投票はロシア代表団不在の中で行われた。専門家によると、非難は想定内で、さほど大きな影響もなさそうだという。

 OSCE議員会議が5~9日、フィンランドの首都ヘルシンキで行われた。8日、「ウクライナに対する武力侵略行為」でロシアを非難する決議案が可決された。これは「これまでにない厳しさ」と評された。というのも、OSCEはずっと、ウクライナ東部でのロシア軍の関与を認めていなかったからだ。今回は、紛争地域におけるロシア軍の存在について言及しただけでなく、「いわゆる人道支援隊を介すことを含む、ウクライナのドネツィク州およびルハンシク州の違法武装集団へのあらゆる支援」を止めるよう求めた。

 また、OSCE議員はクリミアで人権の状況が急速に悪化したと考えており、「クリミアの不法占拠」を決議案に加え、さらに「ロシアの侵略」のせいでウクライナが改革の効果を活用しにくくなっているとの内容も加えた。

 この会議はロシア代表団不在の状態で行われたため、最終的な決議案に影響を与えることはできなかった。というのも、1日にフィンランドがEUの制裁対象となっている、ロシア連邦下院(国家会議)のセルゲイ・ナルイシキン議長および複数の議員の入国を拒否。これを受けて、同日、ロシア代表団が全員での会議のボイコットを決定したのである。ニコライ・コヴァリョフ下院議員は、この会議のすべての決定がロシアでは「法的に無効」とみなされる、と警告した。「本決議案も、我々はそのようにみなすことになる。法的には取るに足らないということだ」とコヴァリョフ下院議員。

 

建設的なプラットフォーム

 ウクライナ代表団とカナダ代表団の議員が作成した最終的な決議案の投票では、96人が賛成、7人が反対を投じ、32人が棄権した。ロシア代表団が協議に加わっていないことを理由に、フランス、スイス、イタリア、アルメニアの議員らが、投票を辞退した。

 「ロシア代表団不在のOSCE議員会議は、具体的な作業ではなく、一種のプロパガンダ活動を行う方に誘惑されてしまった」と、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は反ロシア決議について述べた。

 「我々はいなかったのだから、コメントのしようがない」と下院国際問題委員会のアレクセイ・プシコフ議員は、ロシアの「コメルサント」紙の取材に答えた。プシコフ議員はこれまで、OSCE議員会議を、より建設的なロシアと西側の対話のプラットフォームだと言っていた。

 とはいえ、まだ議論の余地はある。OSCE議員会議はこれまでと同様、「より建設的なロシアと西側の対話のプラットフォーム」であると、下院CIS・ユーラシア連携・同胞関係問題委員会のレオニド・スルツキー委員長は、ロシアNOWの取材に対して話した。また、決議案の厳しい文調は「ロシア代表団不在で十分に予想できたこと」だという。

 

決議案の影響

 厳しい決議案については、専門家も予想していた。

 「作成したのはウクライナとカナダ。ウクライナの立場は明白だが、カナダについては、現政権がウクライナ系カナダ人の票に相当頼っていることがその理由。カナダではこの秋、議会選挙が行われる。現政権は票を維持するために対ロシアの姿勢を厳しくしてきている」と、国際人道・政治研究所のヴャチェスラフ・イグルノフ所長は話す。とはいえ、ロシアが議論に参加していたら、決議案がある程度緩和された可能性があるという。

 「アメリカと“衛生国”がOSCE議員会議の過半数の票を握っているというだけ。OSCEに加盟しているのは、ヨーロッパの28ヶ国以外に、トルコ、ノルウェー、カナダ、アメリカ、また明白な理由で領土の一体性の保護に関するあらゆる決議案を支持するアゼルバイジャンなど」と、ロシア国立研究大学「経済高等学院」欧州・国際複合研究センターのティモフェイ・ボルダチョフ所長はロシアNOWに説明する。「最近進められている最後通牒的要求」の結果でロシアが歩み寄らなかったことへの反応としている。

 ただ、OSCEのさまざまな機構のこれまでの声明と比べて、今回のOSCE議員会議の決議案の過激さについて云々するのも、正しくはないと、ロシア国際問題会議のアンドレイ・コルトゥノフ事務局長は話す。(例えば、ウクライナに派遣されるOSCE監視団は、ウクライナにロシア軍がいると認めたことは一度もなく、ランベルト・ザニエルOSCE事務総長も「認めるには無理がある」、「自分で見たことはない」と話している。)「OSCEの機構をわけて見ることが必要。議員会議であれば、これまでずっと、他の機構よりも厳しめの立場をとっていた」とコルトゥノフ事務局長。この決議を政治宣言、シグナル程度かそれよりも弱いものととらえるべきだという。これはロシア、ウクライナ、またOSCE議員会議で野党側にいるEU内の勢力に向けられている可能性がある。

 「今やアメリカ人はまた新たな旗振りができる。それ以上の影響はロシアにはない」とボルダチョフ所長は考える。

 OSCE議員会議は制裁的な決定を行えないことを、イグルノフ所長が改めて説明した。反ロシア決議があったからといって、外国政府による具体的な措置など、他の動きは起こらないという。「ある期間、反ロシア的プロパガンダが高まるというだけ」とイグルノフ所長。