アルメニアでマイダンの序曲?

AP通信撮影

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アルメニアの首都エレバンでは、ここ数日、電気料金を値上げする当局の意向に抗議するデモが続いている。ロシア当局は、事態の推移を注視していると声明、ロシアの専門家らは、今回の抗議の社会的・経済的背景を指摘しつつ、エレバンでの出来事とウクライナのヤヌコヴィチ大統領を退陣に追い込んだ2013~2014年のキエフでの抗議すなわちマイダンとの間には共通性があまり見られない点を強調している。

 ここ数日、エレバンの中心部では、当局が予定している電気料金の値上げに抗議するデモが行われている。6月23日の早朝、警察は、放水車を使用してデモ隊を追い散らした。約240人が、逮捕されたもののほどなく釈放され、20人以上が、退散させられる際に負傷した。同じ日、デモ隊は、ふたたびエレバン中心部に集まり、メインストリートの一つであるバグラミャン大通りを封鎖した。

 6月17日、アルメニアの公共サービス調整委員会は、今年8月1日から電気料金を16%以上引き上げると発表した。当初、ロシアの「インテルRAO」の子会社「アルメニア電力網」は、40%の値上げが必要であると主張したが、当局は、これを認めなかった。そして、抗議デモが始まったのちに、アルメニアのオヴィク・アブラハミャン首相は、値上げは経済的に十分根拠づけられたものであり、それに代わる案はない、と声明した。

 

「もっとも近しいパートナー」

 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、6月23日の火曜日、ロシアは、アルメニアでの出来事の推移を注視しており、速やかに法に則って事態が収拾されることを望んでいる、と声明し、「アルメニアは、われわれのもっとも近しいパートナーであり、われわれは、アルメニアそしてアルメニア国民との歴史的な絆で結ばれている」と述べた。

 ロシアの連邦会議(議会上院)では、アルメニアでの出来事に関し、より具体的な発言が見られた。同会議の国際問題委員会のイーゴリ・モローゾフ委員は、アルメニアにおける抗議行動はウクライナにおけるクーデターの第一段階と酷似している、と述べた。同氏は、6月24日、ロシア通信に対し、「アルメニアは、銃火器の使用を伴うクーデターに近づいている。それは、もしもセルジ・サルキシャン大統領がウクライナのマイダンの教訓を活かして然るべき結論を出さないならば、現実のものとなろう」と警告した。同氏は、また、今回のエレバンでの出来事には「在アルメニア・アメリカ大使館が積極的に関与している」との見方を示している。

 

社会的公正の探求 

 しかし、ロシアの専門家らは、見解を異にしており、エレバンでの出来事とキエフでの抗議行動との間に共通性はあまりないと見ている。まず第一に、アナリストらは、今のところ今回の抗議デモには際立った政治的要素が見受けられない点を指摘している。ポータルサイト「カフカースキイ・ウーゼル」のグリゴリー・シヴェードフ編集長は、ロシアNOWに対し、今回の抗議デモでは政治的要素がまだ形成されていない、と語ったうえで、「当局が徒らに強硬な行動に出れば」それは起こりうる、と言い添えた。その際、同氏は、「今回の出来事の背景には、社会正義の模索やさまざまな国家機関に対する大方のアルメニア国民の信頼の欠如がある」と述べた。

 カフカス地域の問題に詳しい政治学者セルゲイ・マルケドーノフ氏は、ロシアNOWへのインタビューで、アルメニアのさまざまな野党の政治勢力が今のところ抗議行動とは一切無関係である点に注意を向けた。メディアが報じたところでは、抗議行動を組織したのは、交流サイトによってグループ「略奪ノー」に集結した活動家たちであり、同氏は、キエフでの抗議行動の際には、首相となったアルセニー・ヤツェニュク氏やキエフ市長に選ばれたヴィタリイ・クリチコ氏といった野党の政治家がさかんに活動した、という点を指摘した。同氏は、また、何らかの外的な介入が抗議の根本的原因であるとの見方を否定し、アルメニア国民が具えている「豊かな抗議文化」を指摘しつつ、今回の抗議行動がもっぱらアルメニアの国内的性格のものである点を強調した。同氏は、さらに、キエフでの出来事とは異なり、エレワンでの抗議行動の参加者たちが、アルメニアはロシアと西側のどちらにつくかとの問題を提起していない、という点に注意を向けた。

 

「抗議を横取りする」試み 

 一方、新興国研究所のアレクセイ・マルトィノフ所長は、ロシアNOWへのインタビューで、社会的・経済的問題に起因した「抗議を横取りして」それをキエフのマイダンを模して反露的なアクセントを付して政治的土俵へ移そうとする試みがある点を指摘した。その際、同氏は、一連のウクライナの活動家がエレバン入りしたとのメディアの報道を引用した。しかし、同氏は、アルメニアにおける社会的気運や広く浸透しているロシアへの共感からすれば、反露的スローガンを掲げる何らかの大規模な抗議行動が起こることはありえない、と述べている。