「核戦争があるとは思わない」

AP通信撮影

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2015年「核不拡散条約(NPT)再検討会議」(4月27日~5月22日)がアメリカ・ニューヨークで開催されている。何が核軍縮プロセスを妨げているのか。ロシア代表団の団長である、ロシア連邦外務省軍縮・軍備管理課のミハイル・ウリヤノフ課長に聞いた。

--NPTに参加している160の国と地域が、核兵器の人道的影響から、核兵器の完全な撤廃を呼びかけました。核大国5ヶ国は反対しています。NPTはバラバラになったのでしょうか。

 これほど多くの国、すなわちNPT参加国の圧倒的多数が核兵器の人道的影響に関するイニシアチブを支持しているのに、無視することなどできません。ロシアはこの取り組みに同意していませんが。

 第一に、この取り組みは核軍縮プロセスの現実的な問題から注意をそらします。なぜこの議題が2005年または前世紀の終わりに提起されなかったのでしょうか。なぜ2015年に突然始まったのでしょうか。世界ではこの間、核兵器の人道的影響のテーマについて議論するような異例の事態は何も起こりませんでした。問題を核兵器の禁止にもっていくために、あえてこれを国際議題にしたようです。

 第二に、この取り組みは核軍縮の分野で過度な期待を生みます。これは核不拡散条約の基本をゆるがします。

 

--多くの国が現在すでに、NPTを差別的だと言っています。

 確かに、核大国が優遇されていると言われています。他の国は核兵器を製造しない義務を負いましたが、核保有国は軍縮をしないのではなく、核のない世界の一部になってほしいという国際社会の期待に応えることを急がないだけです。

 

--差別的というのは、かなり論理的なようですが。

 この論理には、当然のことながら、常識的な根拠があります。ですが、このような評価は現実に反しています。アメリカも、ロシアも、ここ四半世紀で、配備されていた核兵器を85%削減しました。2005年から計算しても、配備されていた核弾頭の数は3分の1に減っています。これが遅いというのでしょうか。何度この話をくり返しても、聞いてもらえません。

 

--でも核軍縮プロセスは最近、鈍化していませんか。

分かりやすく:


世界の核兵器保有量

 核軍縮について話すなら、状況は確かに簡単ではありません。3年以内、2018年2月5日までに、ロシアとアメリカは最新の戦略兵器削減条約(START)で定められているレベルに到達しなければなりません。その後はどうなるのでしょうか。答えはありません。戦略的安定の分野の状況はかなり不確実です。例えば、ロシアがくり返し指摘しているアメリカのミサイル防衛システム、また宇宙への兵器配備の可能性、通常兵器分野の不均衡など。

戦略兵器削減の分野の新たな条約が今後締結されるのか、という質問には、おそらく、誰も今答えることができないのではないでしょうか。少なくともこちらには、議題にありません。

 

--ミサイル防衛システムの問題について、アメリカと対話できる可能性は残っているのでしょうか。

 ワシントンにその用意があるとの情報は聞いていません。大統領委員会を通じた戦略的安定についての対話は、ご存じの通り、中断されています。アメリカは、ロシアに関係なく、ミサイル防衛システムを建設すると言いました。また、システムをロシアに向けないことを法的に義務付けたいというロシアの願いも聞き入れられないと、明言しました。現在の両国の関係は総じて、このテーマの議論に戻れるような雰囲気にありませんし。

 

--核戦争の可能性が今高まっていると思いますか。

 高まっているとは思いません。世界で核兵器の使用を刺激するようなことは何も起こっていません。アメリカも他の核保有国も、自国の責任の重さをよく知っています。

 

--START14条には、ミサイル防衛システムの増強がSTART離脱の要因と見なされ得る、とあります。なぜロシアはいまだに離脱しないのでしょうか。

戦略兵器削減条約(START)とは?

戦略兵器削減条約(STARTは、露米間で結ばれた3つの条約を指し(2002年のモスクワ条約を入れると4つ)、双方とも、戦略核弾頭数1550まで削減することなどで合意した。しかし、米国等が進めるミサイル防衛(MDが履行の障害になっており、米国は、STARTが対露MD網の構築を制限しないとの立場だが、露側は、対露MD網が構築されれば条約を破棄するとしている。

 2011年11月、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領(当時)は、ミサイル防衛システムが何らかの段階で、ロシアの安全保障上の利益に影響を与えることになった場合、条約に対する自国の姿勢を見直す可能性があると話しました。今のところ、そのような状況は発生していないということでしょう。アメリカのミサイル防衛システムは現在、準備の初期状態にあります。

 

--ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ドキュメンタリー番組「クリミア、祖国への道」の中で、ウクライナ危機が激化している際に核戦力を臨戦態勢に置く可能性が検討されたという話をしました。これは核兵器の保有の意義が以前よりも大きくなったことを示しているのではないですか。

 プーチン大統領が述べたのは、このオプションが考えられたということで、核戦力を高い臨戦態勢に置いたとは一切言っていません。

 

--再検討会議で提起されたもう一つの喫緊のテーマは、中距離核戦力全廃条約(INF)にロシアが違反しているとの非難でした。

 このような問題は外交ルートを通じて解決する必要があります。NPT再検討会議とは無関係であると考えています。ですが、アメリカはこの問題を初めて提起したのですから、ロシアはもちろん、自国の立場を説明します。

 

--INFが結ばれた頃と比べると、軍事技術はかなり進歩しています。ロシア側は、アメリカがINFに違反していると非難しています。特に、無人攻撃機のことで。

中距離核戦力(INF)とは?

中距離核戦力(INF)全廃条約は、米ソが地上配備中距離ミサイルの廃棄を決めた条約で、冷戦終結への流れを促す一要因となった。1987年署名、翌年発効。ソ連崩壊後はロシアが条約を継承しているが、その後の軍事技術の進歩を受け、新たな争点が浮上。例えば、露側は、無人攻撃機が中距離および短距離ミサイルの定義に該当するとして、米国がINFに違反していると主張する。

 これらアメリカの無人機は、その機能にかかわらず、中距離および短距離ミサイルの定義に該当します。このような無人攻撃機を製造する前に、アメリカは我々に条約の修正を提案することもできたはずです。ですが、アメリカはそれをしませんでしたし、また条文を違反する道を進みました。

 

--ということは、条約の修正を許容するのですか。

 条約自体に修正の可能性についての文言があります。一方の当事者が、あらゆる修正を行うことができます。ただし、他方の当事者の合意が必要ですが。具体的なケースについては、個別に解決されなければなりません。ですが、ロシアはいかなる修正も行おうとはしていないです。

*元記事(露語)