マリウポリ市ヴォストチヌイ団地に落ちたグラードミサイル、1月25日。=AP通信撮影
ウクライナ東部で衝突が発生し、悲劇および両当事者の非難の応酬がくり返されることとなった。住宅地への砲撃によって、少なくとも30人の一般市民が死亡。OSCE監視員はすぐに、義勇軍による砲撃であると主張した。
砲撃が起こる前に、ドネツィク人民共和国のアレクサンドル・ザハルチェンコ首相は、マリウポリへの攻撃開始について発表していた。ザハルチェンコ首相はその後、街を攻撃する意図はなく、作戦は「ウクライナ軍の拠点を抑え込む」ことを目的とした、挑発への対抗策だと説明した。
義勇軍とロシアへの非難があるものの、ロシアの立場は、いまだに表明されていない。
ロシアの沈黙
ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所国際安全センターのアレクセイ・アルバトフ所長は、ロシアの沈黙をOSCE監視員への同意と解釈することも可能だと考える。今後立場を表明しようとしているようにも思えないという。「ロシアではOSCEの客観性が認められているし、OSCEの結論を証明とすることも多い。特に、ウクライナ軍からの銃撃を断定している時」。事象によって同意したり、反対したりと態度を変えれば、「ダブル・スタンダード」になるという。
国際人道・政治研究所のヴャチェスラフ・イグルノフ所長は、ロシアNOWの取材に対し、マリウポリをめぐる「ダブル・スタンダード」はいずれにしても回避できないと考える。オデッサの労働組合会館で連邦化支持派の市民が焼死した時(昨年5月2日)は、「国際的な独立広場支持者からは、ほとんど反応がなかった」。その反対派は、これとちょうど対称的な態度をとる。だが今回のマリウポリの砲撃は、対ロシアで利用されることになると、イグルノフ所長。
独立調査を求める
ロシアがこの事件に対して表明を行うと考えるのは、ロシア国立研究大学「高等経済学院」欧州・国際共同研究センターのティモフェイ・ボルダチョフ所長。いつも通り、控えめで、いかなる当事者側にもつかない表明になるという。
「ロシアはこれまでと同様、独立調査の実施にこだわる。OSCE監視員が事件直後に述べたことは、そのような調査の結果になり得ない。徹底的な解明はされていない」
経済制裁は
マリウポリ砲撃が1回限りの事件ではなく、この街や他の街を巻き込んでの大々的な攻撃の序章となった場合、欧米の反応は極めて厳しくなると、アルバトフ所長は考える。「そうなれば制裁の新たな波は避けられない。制裁に続いて、ウクライナへの兵器供給、またブルガリアやルーマニアを含む、東欧におけるNATOの軍事関与の強化などの対策が講じられる」。ただ、義勇軍の計画を理解することは簡単ではないという。「今日言っていることが、明日になるとまったく変わっている」
イグルノフ所長は、義勇軍が攻撃に転じた場合、新たな経済制裁が発動される可能性があると考える。とはいえ、ヨーロッパにはユーロを崩壊させかねないギリシャという問題があるため、制裁はそれほど厳格にならない可能性があるという。ロシアとの関係悪化は、ただでさえ”敏感”な今のヨーロッパの経済指標を、さらに低下させる。
新たな打撃は、欧州連合(EU)よりも、アメリカからもたらされる可能性がある。ロシアの経済紙「コメルサント」は、アメリカ国務省の消息筋の話として、ヨーロッパが仮に措置を取らなくとも、アメリカが独自にロシアをSWIFTシステムから外す可能性を排除しないと書いている。しかしながら、「軍事的な麻痺」の後に、協議をともなう比較的平和な期間が再び訪れる、と考えるロシアの専門家の方が、今のところ多い。
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