露中の絆を強めるAPECサミット

GettyImages/Fotobank撮影

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11月9日から11日まで北京で開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットの過程で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア外交にとっての東方ベクトルの重要性を改めて確認するものとなる一連の重要な二国間会談を行うが、米国の大統領とのコンタクトについては、今のところ未定だ。

 プーチン大統領は、中国の習近平国家主席と9日、北京で開催中のAPECサミットの初日に会談し、「露中の協力は国際法の下での平和維持と安定に極めて重要」と述べ、両国の関係を一層強化する意向を示した。また、中国への“西方ルート”によるガス供給に関する覚書など17の文書が調印された。西方ルートは、西シベリアのガス田から欧州へ送られるガスを中国へ転送することを可能とするものだ。 

 サミットの場でプーチン氏が初日に中国の習近平・国家主席と会談することは、訪問前から発表されており、ロシア大統領府の報道係はこう伝えていた。「両首脳は、二国間協力や焦眉の国際的および地域的な問題を協議し、来たるAPECおよびG20サミットの議題の主要テーマに関する両国の立場を調整し、会談後には、一連の二国間文書の調印が予定されている」

 5月のプーチン氏の訪中の際、双方は、包括的パートナーシップおよび戦略的互恵協力の新たな段階について声明するとともに、「主権や領土保全や安全の保障といった面を含む両国の核心的利益に係わる問題において互いを固く支持し合う」従来の義務についても確認したが、これは、ロシアも中国も今のところ公然と表明してはいない軍事同盟の可能性に対するかなり明白な暗示と言えよう。

 

露中蜜月時代へ 

 こうした姿勢のバックボーンとなっているのは、露中の経済関係の急激な加速化である。

 5月には、ガスパイプライン「シベリアの力」の建設および中国への天然ガスの供給に関する4千億ドル規模の巨額の契約が締結されたが、これは、もっぱら東方ルートに関するものであり、このほか、必要な場合には西シベリアから欧州へ送られるガスを中国へ転送することを可能とする西方ルートについても交渉が進められていた。こうした柔軟性は、ロシアにとって非常に好都合である。

 10月、国営コンツェルン「ロスネフチ」は、東シベリアの大石油産地開発プロジェクトの株式の10%を中国石油集団(CNPC)へ売却すると発表したが、この中国の会社は、ノヴァテク社のヤマル半島における液化天然ガス企業のプロジェクトの株式の20%を購入しており、事実上、ロシアは、ついに自国の資源開発へのアクセスを中国に認めたことになる。

 中国鉄建が参加するモスクワ・カザニ間のロシア初の高速鉄道幹線の建設プロジェクトについても、さかんに協議されている。取引の額は、約100億ドルであり、将来的には、北京まで支線が延びるという。また、華為技術は、規模の点で同様の携帯電話分野のプロジェクトについて協議している。

 取引を保障すべく、両国の中央銀行は、250億ドル規模のルーブルと人民元の通貨スワップに関する協定を締結した。これによって、ロシアは、外国の銀行での借入に対する西側の制裁を回避でき、中国は、外貨準備を節約できることになり、すべてこれは、結局は相互決済におけるドルの排除へ向けられたものとなる。

 つまり、露中関係は、明らかに蜜月を迎えており、プーチン・習会談が、その更なる裏づけとなろう。米国にとっては、これは、米国が今の自国の制裁政策によってロシアを中国の側へ追いやることでますますグローバルな対立における中国の立場を強めていることの明らかな裏づけとなろう。

 

“多面的シフト” 

 しかし、ロシアは中国一極にのみシフトしているとは言えない。

 北京でのサミットの場では、プーチン氏と日本の安倍晋三首相の会談も行われた。日本は、対露制裁の問題においては腕を捩じ上げられたもののシベリアにおける経済協力については協議する用意があるという秋波をさかんに送っている。しかも、日本は、この面においてはソ連時代から実際の経験を積んでいる唯一の国であり、たとえば、サハリンの石油産地のロシアとの共同開発を開始したのも、まさに日本である。

 一方、東方シフトを掲げたロシアは、多面的協力のために開かれており、サミットを目前にして、ロシア政府は、極東における急速発展地域に関する法案を国家会議(連邦議会下院)へ提出した。

 10月にアレクサンドル・ガルーシカ極東発展相が明らかにしたところでは、急速発展地域に関する法案には、外国の投資家も対象となる大幅な税の優遇と大規模な規制緩和という二つの柱となる構想が盛り込まれており、急速発展地域は、6千億ルーブル(約1兆8千億円)以上の直接投資および3万7千人超分の新たな生産性の高い雇用をもたらす。

 選定された14の地域からなるリストが承認されれば、急速発展地域網には、三つの海洋港、二つの物流拠点、三つの農工複合体クラスター、二つの化学クラスター、それぞれ一つずつの、航空機生産センター、建設資材生産施設、ダイヤモンド宝石貴金属生産施設、科学教育センターが、含まれることになる。極東発展省のデータによれば、14の急速発展地域のうち、大部分にあたる11は、中国と隣接する地域にあり、二つは、ヤクーチヤ(サハ共和国)にあり、一つは、カムチャトカ半島にある。14の急速発展地域のうち、5つは、沿海地方にあり、そこには、2012年にAPECサミットが開催されたウラジオストクのルースキイ島も含まれている。

 事実上、この法案には、経済協力をはじめとしたアジア太平洋地域における政策へのロシアの基本的アプローチが秘められている。