ロシアがウクライナ軍官僚らをジェノサイドで告発

ロイター通信撮影

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ロシア連邦取調委員会(SK RF)は、「殺害の組織、禁止されている戦争遂行の手段や手法の使用、および、大量虐殺」に関する条項に基づいて、ウクライナの高級軍事官僚を刑事告発した。同委員会の公式報道官であるウラジーミル・マルキン法務少将によれば、同委員会は、ウクライナでロシア語系住民に対して罪を犯した官僚らの責任を追及する。

 マルキン氏によれば、刑事告発は、ロシア連邦取調委員会・取調総局によって、ウクライナのヴァレリイ・ゲレテイ国防相、ヴィクトル・ムジェンコ軍参謀本部長、オレグ・ミカス第25旅団指揮官、その他のウクライナの軍最高指導部および第93旅団の「未特定人物たち」に対して行われており、同取調総局は、これらの人物の行動に、ロシア連邦刑法の「殺害の組織、禁止されている戦争遂行の手段や手法の使用、および、大量虐殺」に関する条項によって見込まれている犯罪の兆候を見て取った。

容疑者らの国際指名手配を拒否したインターポール 

 マルキン氏は、こう語る。「ここで指摘しておくべきなのは、国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)が、この件において一般刑事事件のエレメントの存在を否定していないものの、それが主として政治的性格を帯びているとみなしている、という点です。インターポール憲章の第三条では、『機構には、政治的、軍事的、宗教的もしくは人種的な性格の何らかの干渉あるいは活動の実施が、固く禁じられる』と謳われています」

 しかし同氏によれば、ロシアにおいて同様の条項に基づいて告発されているウクライナの高級官僚ならびにアルセン・アヴァコフ内相およびドニプロペトロウシク(ドニエプロペトロフスク)州知事であるオリガルヒ(新興財閥)イーゴリ・コロモイスキイ氏の指名手配は、他国の政治的および軍事的な活動への干渉に関するインターポールの規程に矛盾する。

 取調委員会は、ウクライナの軍指導部は、国の南東部の分離主義者らを制圧するために禁止された武器を使用するよう命じたとみている。たとえば、ドネツィク(ドネツク)、ルハーンシク(ルガンスク)、スラヴャンスク、クラマトルスク、および、「ドネツィク人民共和国」と「ルハーンシク人民共和国」の「その他の居住地」への砲撃に際して、ウクライナ軍は、多連装ロケット砲の「グラード」や「ウラガーン」、カセット式弾頭を備えた航空機用無誘導ロケット、戦術ミサイル「トーチカ-У」、その他の大型の無差別攻撃兵器を使用した。

 その結果、ロシア連邦取調委員会の主張によれば、3000人以上の民間人が死亡し、5000人以上の民間人が重軽傷を負い、「ドネツィク人民共和国」と「ルハーンシク人民共和国」の30万人の住民が「自らの命と健康を守るために」ロシアへの避難を余儀なくされた。

 マルキン氏は、こう語る。「ロシア連邦刑事訴訟法第247条第5項には、『特別な事例において、重犯罪および特別重犯罪に関する刑事事件の審理は、もしも当該の人物がその刑事事件に関して外国で責任を追及されない場合には、ロシア国外にいる被告が不在のまま行われうる』と記されています」

 ロシアの告発に対抗して、ウクライナの最高検察庁は、「テロ組織への協力」に関する条項などに基づいて、ロシアの取調委員会のメンバーらを刑事告発した。しかし、具体的に誰が刑事告発されたかは、明らかにされていない。

 研究総合大学・高等経済学院・憲法地方自治体法講座のイリヤ・シャブリンスキー副主任は、こう述べる。「大量虐殺とは、民族的、人種的、宗教的な理由による一つの住民グループの差別を意味していますが、私は、今回の具体的なケースにそうした根拠を見て取っていません。ドンバス(ドネツ炭田)の居住地ではロシア人もウクライナ人も軍人たちの暴力行為の犠牲となっており、大量虐殺といった重犯罪について語るための根拠は何一つありません」

 同氏は、双方の告発はかなり政治的な性格を帯びているとし、こう語る。「テロリズムの徴しを見つけるのは難しいので、ウクライナの告発は対抗上のものと言えるでしょう。もっとも重大な行為は居住区への砲撃ですが、これは調査や分析の個別の対象です。ウクライナ人とロシア人の双方が落命したわけですから、まさにこれは骨肉の争いでした」

歴史が繰り返す可能性 

 軍事専門家のヴィクトル・リトフキン氏は、こう述べる。「西側のメディアではロシア・グルジア戦争と呼ばれている2008年8月のオセチア・グルジア紛争の新たな段階の後にも、そうした戦時犯罪の調査が行われました。しかし、ハーグの司法裁判所も特別裁判所もロシア連邦取調委員会を支持しなかったため、裁判は行われず、罪人を処罰することはついにできませんでした」

 同氏は、ユーゴスラヴィアでの戦争が終結した際に西側諸国が戦争犯罪人らを裁判にかけて住民の大量虐殺に関する問題を徹底的に追及しようとした点を指摘した。たとえば、戦時中に自分の支持者らが行った11件の残虐行為のかどで告発されているボスニアのセルビア人の元指導者ラドヴァン・カラジッチ被告に対する裁判は、今も続いているが、それらの罪状には、1995年のスレブレニツァにおける7500人のイスラム教徒の殺害も含まれている。

 同氏は、さらにこう付言した。「すべてこれらの裁判は、戦勝国もしくは連合が、自らの正当性や勝利の合法性を印象づけるために行っており、もしも罪人の処罰の問題において国際社会の支持がなければ、裁判は行われないのです。たとえば、リビア、イラク、アフガニスタン、アルジェリアなどにおける戦争で罪を犯した西側の罪人たちに対する裁判は、現在、行われていません」