ロシアがウクライナで目指すこと

AP通信撮影

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ロシア政府が関心を持っているのは、統一されたウクライナの維持と、親ロシア的な南東部の意見のウクライナ政府による尊重である。それに向けた努力の主な目的とは、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を許容せず、非同盟的地位を守ること。

 ウクライナ政府は南東部の意見を聞くべきであると、ロシア政府は正式に示唆した。南東部の住人はロシア語で会話し、伝統的にロシアに近い。そのためロシア政府は、ウクライナの将来的な国家機構の原則を定めるための、ウクライナ政府と南東部の人民共和国の政府の直接対話を促している。

 

ウクライナ南東部の主張

 ウラジーミル・プーチン大統領はこう述べている。「技術的な問題だけでなく、ウクライナ南東部に暮らす住人の法的利益を無条件に保障するための、ウクライナ南東部の社会および国家機構の政治組織の問題について、本質的かつ内容のある協議を速やかに始める必要がある」

 このような協議の結果、ウクライナは「邦連」になるかもしれない。ベラルーシの首都ミンスクで91日に行われた協議で、南東部の代表はこれについて話した。人民共和国独自の軍備組織および司法制度が認められる特別な地位を与えること、関税同盟への加盟権までの対外経済活動の特別な権利を与えることなどを求めた(関税同盟に加盟した場合、ウクライナの地方の間で内部通関が発生するため、邦連制では異例となる)。南東部の代表は一方で、「ウクライナの平和維持のため、また統一された経済的、文化的、政治的範囲維持のため、最大限の努力を払う」と約束した。

 ロシア政府は、ウクライナ崩壊には反対している。プーチン大統領が南東部の幹部に宛てた要請には、ウクライナの領土の一体性維持が含まれている。

 

「ウクライナをロシアの緩衝国にする」

 ロシア国立人文大学のセルゲイ・マルケドノフ助教授によると、ウクライナ政府と南東部の平和協定がいかに結ばれるかに、ロシアはさほど関心を抱いていないという。「地位的な問題は二の次であって、重要なのはこのプロセスが連邦化なのか、邦連化なのかということである。プロセスは目的達成の道のりにすぎない。目的とはウクライナが緩衝国であって、ロシア抑制の道具に変わらないこと」。これを可能にするのは、ウクライナ内に西部の反ロシア・エリートとのバランスをとるロシア語地域を維持し、その地域を国家の外交、経済、また教育の分野の政策の管理ツールにすることだけである。

 ロシア大統領の声明と、ドネツィク人民共和国、ルハンシク人民共和国の分離独立派支持は一致するのか、との疑問を外国のオブザーバーが持つかもしれない。ドネツィク人民共和国、ルハンシク人民共和国が降伏した場合、ウクライナ全体が対ロシアの前哨地になるため、クレムリンは南東部の軍事的敗北を嫌がっている。

 ウクライナ自体の重要性というよりも、ロシアと欧米の関係である。ウクライナの中立的立場はロシア政府にとって極めて重要であり、関係者もそれを指摘している。「ウクライナ政府が中立をやめた場合、非常に大きな影響を与える。NATOが自分たちのインフラをロシア国境まで広げようと計画しているのだから、中立撤廃はロシアを震撼させる」と、ロシア外務省の消息筋はコメルサント紙に話した。ウクライナ政府の中立撤廃は、安定への望みを断ちかねない。

 

南東部の協議を長引かせてはいけない

 ロシアの政治学者の一部は、協議のプロセスの長期化が、ウクライナ国家を崩壊させかねないと警告する。その事態が起こった場合、南東部の独立の要求を支持する以外の選択肢が、ロシア政府に残らなくなる。「12ヶ月で、ドネツィク人民共和国、ルハンシク人民共和国をめぐる軍事衝突が、経済、社会、公共の分野の崩壊に発展し、新たな政治危機を発生させる可能性がある。このような状況になれば、ロシアはもはや譲歩などに関心を持たなくなり、完全に反ロシア的な、半崩壊、敗戦したウクライナと、自国の領土の間に、緩衝を設けることを考えるようになる。この緩衝になり得るのが、オデッサからハルキウまでの南東部全域。沿ドニエストル型、ロシア保護下の一部承認国家に変わることになるであろう地域」と、ロシアの独立政治学者であるアンドレイ・エピファンツェフ氏はロシアNOWに説明した。

 欧米での憶測とは裏腹に、ロシアはこのシナリオを回避したがっている。まず、ウクライナ西部には、ロシアからヨーロッパに送られるガスの通過パイプラインがあるため。このシナリオが発生すれば、パイプラインの安全性が脅かされる。次に、ロシア政府が南東部を管理し、復興させなくてはいけなくなるため。しかもその領域は、国際的に未承認の国家となる。