「対露制裁の目的は政権交代」

フョードル・ルキヤノフ氏=セルゲイ・ピャチャコフ撮影/ロシア通信

フョードル・ルキヤノフ氏=セルゲイ・ピャチャコフ撮影/ロシア通信

冷戦後、ロシアがこれほどの強い圧力を西側から受けたことはなかった。欧米のマスメディアでは、ロシアとウラジーミル・プーチンのイメージが悪魔化されている。それでもロシアに対して徹底的な経済制裁を科すことを許さないヨーロッパ人の”貪欲さ”を過大評価したり、BRICSが自国の利益のためにロシアを支援すると期待したりする必要はない。フョードル・ルキヤノフ外交・防衛政策会議議長がニュースサイト「レンタ・ル」のインタビューでこのように述べた。

-ロシアが西側からの差別に慣れることはできないため、現在の制裁は不快なものであるが、致命的ではないとの意見があります。これについてはどう思いますか。

 制裁はもちろん致命的ではありませんが、経済分野全体に制裁が科されれば、経済状態を著しく悪化させ、まったく異なる発展モデルを適用しなければいけなくなります。そのようなモデルは今のところ存在しておらず、西側からの厳しい封鎖の際のメカニズムもつくられていません。中国経済などのように現代のグローバルな環境に深く入り込んでいない、独特なロシア経済ですが、それでもロシアは世界市場、特にヨーロッパと密接に結びついています。ですので、大したことではないと、制裁に無関心でいてはいけないのです。

 私はヨーロッパの”貪欲さ”に期待しません。ロシアに対する制裁がヨーロッパにとって大きな不利益となることは間違いありませんが、アメリカからの圧力は非常に強大で、ウクライナ情勢やボーイング777型機をめぐる情報は極めて厳しいものになっています。国際的なメディアは事実上、ロシアを「のけ者国家」扱いしていますが、かつてこれほどの情報攻撃はなかったと思います。

 言い換えれば、パニックになるような要素はないものの、ロシアがソ連崩壊後直面したことのないような、深刻な政治・経済的、情報的対立が起こることを予期しておく必要があるということです。

 

-中国をはじめとするBRICS諸国への接近は、壊れた西側との関係の穴埋めになりますか?

 ある程度はそうでしょう。ですがそのためには、かなり積極的に動き、主導的かつ粘り強くなる必要があります。ロシアがBRICS諸国やその他の元「第三世界」の国々から、ウクライナ政府への対抗を支持されることはありません。これにはあまり関心がないからです。ロシアの行動が国際的に認められた国境を変える事態になったこと、隣国の分離独立主義を支援したと見なされていることは、中国、インド、その他の新興国が考える、国際関係におけるふるまいに合っていません。

 同時に中国、インド、ブラジル、南アフリカ、イラン、ブラジルは、ロシアの行動にはそれまでの長い歴史の経緯があったこと、また自分たちの影響力を無闇やたらに拡大する西側からの未曾有の圧力に対する対応だったことを理解しています。そのため、アメリカが結成している“ロシア非難組”に入ろうとはしないのです。また、中国は、例えば、「ウクライナをめぐる戦い」が地域的な紛争ではなく、未来の世界のヒエラルキーの形成をめぐる衝突であると考えています。そしてロシアが負けた場合、それはアメリカの台頭と中国への圧力増強を意味するようになるのです。ということで、一定の支援は得られます。

 

-西側は次々とロシアに対する制裁を発動しながら、具体的に何を目的としているのでしょうか。

 ウクライナの親ロシア派に対するあらゆる支援の停止です。ウクライナ政府が軍事的に勝利することがアメリカにとって重要なため、これが直接的な目的です。ロシアとの国境を封鎖すれば勝利でしょう。これはウクライナ情勢を正常化させるものではありません。他の形での対立、不安定は続き、ウクライナ政府の総合的な国のコントロールが復活します。

 表立って言われることはないでしょうが、長期的な目的とは、ロシアの内政を変え、さらには政権を変えることだと思います。これほどいろいろあった後で、アメリカとロシアの指導部が普通に接触することは不可能でしょう。オバマ大統領だけでなく、その後の継承者にとってもです。ロシアもアメリカを公の敵と見なしますから、アメリカにとって理想的なシナリオとは、プーチン大統領の退陣になります。プーチン大統領を悪魔化する動きはピークになっており、攻撃も極めて個人的です。直接的な内政干渉はしないでしょうが、制裁でロシアの状況を悪化させることは、長期的な政権弱体化策と見なすことができます。

 

-イスラエル作戦「頑丈な崖」は、数日間で数百人の命を奪いました。なぜ西側では、ウクライナ情勢ほどの憤慨にならないのでしょうか。

 理由は複数あります。まず、誰もがパレスチナとイスラエルの対立激化に慣れてしまっているということです。次に、イスラエルの行動を全面的に支持する、たくさんのイスラエル同盟者をアメリカが抱えていることです。イスラエルのロビー活動にはとても影響力があります。最後に、ヨーロッパにはアメリカ以上にパレスチナ人に同情する人が多いものの、ヨーロッパ人は今でもホロコーストの罪の意識を強く感じていることです。そのため、軍事的に自分たちの安全を確保しているイスラエルを非難することには、少し不快感がともなうのです。

 

記事全文(露語)

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