ウクライナはこれからどうなる?

AP通信

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ウクライナのポロシェンコ大統領は、6月20日に自らが主張した停戦を、これ以上延長しないとの声明を出した。「我々は攻撃に転じ、我々の土地を解放する」。こう大統領は、6月30日から7月1日にかけての夜に、国民に対する演説の中で述べたが、それと同時に、停戦に先立って発表した平和に向けてのロードマップは効力を失っていないと強調した。

停戦は有名無実 

 停戦とはいえ、その最中にも、ウクライナ南東部の武装勢力と、同国の正規軍の間では銃撃戦が続いていた。相変わらず誘拐事件が発生し、ロシアのテレビ局「第1チャンネル」の撮影技師アナトーリ・クリャンが被弾して死亡した。国連のデータによると、6月末の時点で、同国の住民11万人以上がロシアに難を逃れ、また南東部以外の地域でも5万4千人以上が避難先を探している。

 ロシアの政治学者エフゲニー・ミンチェンコ氏は、停戦は有名無実だったと言う。「いずれの側も、停戦を急速と部隊の移動に利用していただけ」

 一方、ウクライナを専門とする政治学者アンドレイ・オカラ氏は、いずれにせよ停戦は実現できなかっただろうと考える。どちらの側も、自分達の部隊を十分コントロールできていないからだ。「南東部の武装勢力は、非常に雑多な集団だ。戦争がビジネスである者もいれば、武器を手に入れた前科者もいるし、自分の信念で戦っている者もいる。ロシア政府とプーチン大統領は、もちろん彼らにとって権威だが、無条件に服従するほどではない。一方のウクライナ軍といえば、ようやくこの2カ月間編成されつつあるのが実情で、それ以前は無きに等しかった」

 さらに、停戦に対するウクライナ国民の反応も一様ではなく、ポロシェンコ大統領は、このことも考慮せざるを得なかった。例えば、6月28日にはキエフで大集会が開かれ、参加者たちは、南東部に戒厳令を布き、停戦をやめることを求めた。停戦は戦闘を拡大させるだけだというのが彼らの意見だった。

 以上の点からオカラ氏は、ポロシェンコ大統領の決定は、軍事のみならず内政の観点からも捉えるべきだと考える。 

 

難民とパルチザン

 ミンチェンコ氏は、戦闘再開は当然の成り行きとしながら、今後の展望については極めて悲観的だ。「戦闘は延々と続き、人々は家を捨てるだろう。これは双方にとって良くないことだが、どちらももう戦いを止めることはできない。ウクライナ軍は、市街戦に引きずり込まれる危険を冒しており、これは武装勢力の思う壺だろう。これはつまり、街のインフラと市民の生活が破壊されることだ。しかも、武装勢力はパルチザン戦を開始し、他の地域でも展開していく可能性がある」

 ミンチェンコ氏の懸念には十分な根拠があるようだ。ポロシェンコ大統領が国民に演説していたその時、ドネツィクの鉄道では4度の爆発事故が起きたし、その前日には、戦闘の行われていないハリコフでも爆破事件があった。

 とはいえ、オカラ氏は、ウクライナ軍の編成が漸次進むにしたがって、優勢になるだろうと言う。

 

政治的正常化

 この間にも、政治的正常化に向けての試みは続けられていた。停戦延長せずのポロシェンコ声明の前日には、ドイツ、フランス、ロシアの首脳が長時間の協議を行い、EU(欧州連合)は、ロシアに対し、任意の時期に制裁を課す用意があると警告した。今度の制裁は、個人ではなく、経済の特定の分野を標的にしたものだという。

 「政治的正常化は、ロシアの利益にも適うのだが、いかんせん、キエフにもドネツィクにも、交渉できる窓口がない」とミンチェンコ氏は言う。「一方、EUも、ウクライナと連合条約を結んだばかりだから、紛争の集束に関心をもっている。私の手持ちの情報によると、メルケル独首相は、武装勢力、ロシア、キエフの交渉の場に、ヴィクトル・メドヴェチュク氏が立ち会うことを主張し、キエフは承諾せざるを得なかったらしい」

 メドヴェチュク氏は、レオニード・クチマ元ウクライナ大統領のもとで大統領府長官を務めた人物で、一般にはさほど人気がないが、政財界に強い影響力をもつ黒幕だと言われる。

 またリークされた情報によれば、同氏のドネツィク州知事への任命が話し合われた。ミンチェンコ氏もオカラ氏も、これはいかにもありそうな話だと言う。なぜなら、このような形で、ロシアの利益とウクライナのオリガルヒ(財閥)のそれとを調整することができるので、キエフはこれを考慮せざるを得なくなるからだ。「すべての当事者が、だいたいこの線で妥協できるのではないか」

 とはいえ、戦闘も正常化の試みも、今のところは、各勢力がてんでんばらばらに行っているのが現状で、ミンチェンコ氏もオカラ氏も、これは認めている。