ロイター通信撮影
ロシア大統領報道部の声明
ウクライナ東部のドネツィク州とルハンシク州で11日、事実上の独立の是非を問う住民投票が、「ドネツィク人民共和国」と「ルハンシク人民共和国」を目指す親ロシア派によって実施され、ドネツィク州で89%、ルハンシク州で96%の住民が賛成票を投じた。これを受けてロシア大統領報道部は12日、次のような声明を発表した。
「ロシア政府はドネツィク州とルハンシク州の住民の意思を尊重する。キエフ(ウクライナ暫定政府)、ドネツィク、ルハンシクの代表の対話を通じて、いかなる暴力の再発もなしに、文明的な方法で、住民投票の結果を実現していくべきだ」
「上からの押し付けは御免」
今回の住民投票を観察した、ロシア連邦大統領直属市民社会発展・人権問題評議会の会員であるマクシム・シェフチェンコ氏は、ウクライナ南東部の住民が、「上」から押しつけられた人間ではなく、地元の代表を中央政府に加えたがっているとロシア通信に話した。
「誰もがウクライナの状況の変化を望んでいる。『自分たちをだますような政治家にはもう投票したくない。人民の自治政府にして、市や地域の予算を自分たちで管理し、これまでとはまったく違うウクライナ中央政府との関係を構築し、中央政府には自分たちの代表に入ってほしい』と言っている」
対話のテコに
観測筋は、ロシア政府が今回の住民投票を、ウクライナ暫定政府と南東部代表の対話のきっかけとして利用していると話す。ロシア大統領報道部はこう伝えている。「このような対話実現のために、欧州安全保障協力機構(OSCE)経由を含めた、あらゆる仲介の努力が歓迎される」
ドイツの外交官ヴォルフガング・イシンガー氏を、OSCE側のウクライナ国内対話の調整役に任命するというOSCEの提案を、ウクライナ暫定政府は受け入れている。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は12日の記者会見で、ウクライナ問題に関する新たな国際会議「ジュネーブ2」の実施について、南東部の代表がいなければ意味をなさないと述べている。「ウクライナ問題に関する新たな会議は今のところ計画されていないが、努力が阻止されることなく続けられ、すぐにでも何らかのプロセスに発展することを望む。4者協議を再び行っても、見込みは薄いため。情勢打開のための直接対話に反政権派が加わらなければ、いかなる成果も得られない。それはアメリカのジョン・ケリー国務長官、ドイツのフランクヴァルター・シュタインマイヤー外相などの私の対話相手も同じで、ジュネーブの原則をウクライナの両当事者間の直接対話に移行させることに賛成している」
瓶の外に出た魔物
ロシアの専門家の一部は、ロシア政府がすぐに今回の住民投票の結果を承認することはないと考える。ロシア政治研究センターのドミトリー・ポリカノフ副理事は、コメルサント紙にこう説明している。「ロシアはドネツィク州とルハンシク州の投票結果を、協議の推進手段のひとつにしようとしているのではないか。これはクリミアじゃない。将来的にどう扱っていいかわからないから、住民投票を承認しにくい」
ロシア政府は情勢を悪化させるべきではないが、かといって西側の政治家の言うなりになるのも賢明ではないと、政治学博士であるセルゲイ・チェルニャホフスキー教授は考える。「ウクライナ情勢で西側とロシアの関係は『額の突き合わせ』になった。先にそらした方が負け。『西側との関係を壊すべきか、壊さぬべきか』という問題は、現在のマクロの政治的観点からすれば、まったく重要ではない」
ウクライナの政治学者である、体系的分析・予測センターのロスチスラフ・イシチェンコ所長は、ウクライナ暫定政権からの何らかの特別な反応は予期できないと考える。「ウクライナ暫定政府は、南東部にはロシア軍とロシアからのテロリストだらけだと主張しているし、戦いを続け、すべてにおいてロシアを非難し続ける。同じことが繰り返されるだけで何も変わらない。暫定政府は独立した参加者ではない。独立した参加者とはアメリカのこと。アメリカが姿勢を変えるまで、暫定政府の姿勢は変わらない」
ポリカノフ副理事は一方で、いかなる海外勢力も、ウクライナ情勢を完全にコントロールしていないと考える。「西側が自分たちの人間を完全に支配下に維持することはできないし、ロシアも自分たちの支持派に100%影響をおよぼせるわけでもない。魔物が瓶の外に出てしまったのだから、戻すのはそう簡単ではない」
*ガゼータ・ル、コメルサント紙、タス通信、ロシア通信の記事を参照。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。