タス通信撮影
法案を提出した議員によれば、これらの措置を講ずることで、治安機関が、ヴォルゴグラードの自爆テロのような悲劇を防ぐのに役立つという。この年末の連続テロでは、34人が死亡し、70人以上が負傷した。
一方、専門家らは、テロ対策には現行の法律で十分だと考えており、ロシアが警察国家化し、犯罪の防止よりもむしろ一般市民の権利が狭められる、と懸念している。
FSBの職員が自ら市民を検査
法案を作成した議員の説明では、そのポイントの一つは以下の通り。
FSBの職員は、何らかの「疑い」が生じた場合、市民、その所持品、自動車などの交通手段を自ら検査することができる。現在の法律では、こうした権限は警察にしかない。FSBの職員がこのような権限を行使するのは、テロ対策の分野に限られていた。
これに合わせて、刑法も改正される。テロに関連して、新たな犯罪が既定され、罰則が強化される。
賛否両論
ロシア連邦保安庁の特殊部隊「アルファ」の元隊員からなる国際連盟の会長で、「ロシア治安対策連盟」の会長であるセルゲイ・ゴンチャロフ氏は、FSBの職員が自ら検査できるようになることは必要だと言う。「FSBの職員に対して、自ら市民や車を検査する権限を与えるのは正しいと思う」
一方、ニコライ・スワニゼ氏は、これに真っ向から反論する。氏は、有名なジャーナリストで、ロシア国立人文大学のジャーナリスト講座の講座主任であり、大統領の諮問機関「社会会議」の委員でもある。
スワニゼ氏の確信するところでは、FSB職員の権限拡大は、市民の権利を甚だしく侵害しかねない。「これは、汚職に大きな可能性を与えることになる。もし人が検査されたくないと思ったら、ちょっとしたモノを与えて、検査しないでくれと頼むだろう。人々は、テロリストも治安機関も怖がるようになる。しかも、法案の多くの項目は、はっきり規定されていないので、後になって深刻な問題が生じかねない」
電子マネーの規制
法案を作成した議員らはさらに、電子マネーに関しても、追加の規制を提案している。無記名で、つまり、支払者に関するデータを示さずに匿名で行われる、電子マネーの支払だ。
法案では、一回の支払額は、 1千ルーブル(約3千円)以下、ひと月の額は、1万5千ルーブル(約4万5千円)以下に限られる。
現在、匿名の電子マネーの財布は、ひと月4万ルーブル(約12万円)まで貯めることができ、一回の支払は、1万5千ルーブル(約4万5千円)までOKだ。
また法案では、ロシア国外での電子マネーによる決済、または外国の金融機関による決済は、一切禁止することをもくろんでいる。
ロシアのインターネット・ビジネスに関する情報誌「Roem.ru」を創刊したユーリー・シノドフ氏は、こうした措置で、零細ビジネスが深刻な打撃を被る可能性があると指摘する。「この措置のせいで、既に安定して行われている合法的なビジネスの多数が損なわれかねない」
ゴンチャロフ氏も、この措置に関しては、あまり意味がないだろうと言う。「テロリストが動かしている額は、そんなはした金じゃない。何十億、何百億ドルという額だ」
付き合うなら通知しろ
その代わり、ゴンチャロフ氏は、インターネットを注意深く監視することには賛成だ。法案では、個人または法人が、ネットのユーザー間で情報を広めるか交換するプロジェクトを立ち上げる際には、それがどんなプロジェクトでも、国の監督機関「ロシア情報通信監督局」に通知する義務を負う。
下院の情報政策委員会副委員長で、法案の作成者の一人であるレオニード・レヴィン氏の説明によると、こうしたプロジェクトの範疇には、あらゆる報道機関、マスコミ、電子メールサービス、ソーシャルネットワーク、トレントなどが含まれるだろうとのこと。
既にロシアで登録されている報道機関は、再登録の必要はないが、上に挙げたすべての機関、企業は、ユーザーに関する情報を6ヶ月以上守秘する一方、治安機関に通知しなければならない。違反した場合は、罰金を科せられる。レヴィン氏はこう説明する。
ロシアに何らかの情報を広めている外国の組織も同様に、半年の間、様々なネット上の情報の受信、伝達、加工について守秘しなければならず、当局の求めに応じて、提供しなければならない、と法案には記されている。
現在、顧客、ユーザーに関する情報は、通信オペレータだけが、3年間の守秘義務を負っているだけで、内務省とFSBは、それらの情報に対して、間接的にしかアクセスできない。
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