オフショアや伝統的価値の喪失を批判

ウラジーミル・プーチン大統領の連邦議会あての年次教書。=ロシア通信撮影

ウラジーミル・プーチン大統領の連邦議会あての年次教書。=ロシア通信撮影

プーチン大統領は、ロシア企業の脱オフショア化の方針を示し、西側における「無性および不毛のトレランス(寛容)」への追随を批判し、ミサイル防衛(MD)システムの欧州配備によって核兵器削減に関する米国との合意は水泡に帰しかねないと警告した。

大統領令の履行状況を批判 

 12月12日、ウラジーミル・プーチン大統領は、連邦議会(上院)あての年次教書演説を行い、この一年を総括し、今後の課題を掲げた。演説の冒頭、大統領は、名指しは避けつつ、2012年5月7日の就任の日に氏が署名した社会分野の改革を目指す一連の大統領令の執行が非効率的であることに苦言を呈し、こう述べた。

 「大統領令の発布から一年半が過ぎました。皆さんは私が何を目にしているかご存知ですか? 社会の否定的な反応を呼び起こすような形でそれが履行されているか、まったく何も為されていないかのどちらかです」

 

「経済問題の要因は国外より国内にある」 

 国内総生産(GDP)の伸び率が低下し始めてから初めて、プーチン大統領は、ロシアの経済問題が国外よりも国内のファクターに起因している点を認めた。大統領は、従来の労働生産性の向上や新たなテクノロジーの導入のほかに経済の脱オフショア化を経済政策の中心課題の一つに掲げ、こう述べた。

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「私たちには、国の価値、歴史、伝統を身につけた国民を教え育てる学校が必要です。私たちは、外国の市民を対象としたロシアの大学における教育のための条件を創り出さなくてはなりません。

 ロシアの大学が自らの遠隔教育プログラムを発展させられるような一連の法令の採択を加速すべきです」。

 「オフショア(租税回避地)で登録され、所有者そして受益人がロシア人である企業の収益は、ロシアのルールに基づいて課税されるべきであり、税金は、ロシアの国庫へ納められねばならず、それを徴収するシステムを熟考する必要があります」

 大統領の考えでは、外国で登録されている会社は、国家支援に与る権利を失うべきであり、国家契約の履行には参加できない。

 高等経済学院・上席研究員のアンドレイ・チェルニャフスキー氏は、大統領のイニシアティブを理に適ったものとみなしつつも、その遂行のメカニズムは見えてこないとして、こう述べる。

 「現在、私たちは、経済の停滞の時期に突入し、連邦および地方の予算が大きな困難に直面しているため、大統領の発案のような形も含めて、どうにかしてサポートする必要があります。私たちは、国内の税率を引き上げたくはありませんが、せめて、国家の参加を伴う会社や国家の保証を受けている会社からの税収を増やすために、法整備を行いたいと考えています」

 

“無性”および不毛のいわゆるトレランス(寛容) 

 プーチン大統領は、自身の演説のなかで、経済の脱オフショア化のほか、「太平洋への展開」を行うよう呼びかけ、極東および東シベリアに、原料以外の生産を組織するために、特恵的な条件を具えた特区網を創設する案を打ち出した。

「箍(たが)が外れた南部の共和国の出身者および自分を金で売る警察官や民族主義者たちからなる『モラルなきインターナショナル』に勝利することが必要です」

 また、プーチン大統領は、移民入国の管理の強化を呼びかけ、法人および個人の企業家が、証明書に基づいて外国人を雇用する、という規則を導入するよう提案した。この証明書は、取得される地域においてのみ効力を有し、連邦構成主体がその価格を定めるという。

 このほか、プーチン大統領は、「“無性”および不毛のいわゆるトレランス(寛容)」および伝統的価値の喪失に関して意見を述べた。大統領は、今日、多くの国では、「善と悪が等価値であること」を社会に無理やり認めさせている、としたうえで、伝統的価値の破壊は、反民主的プロセスであり、国民の大多数の意思に反して実現されつつある、と述べた。

 

西側ではすでに数十年も語られていない言葉 

 大統領は、国際問題に関する部分のイントロで、「価値観」について語ったが、政治テクノロジーセンターのボリス・マカレンコ理事長は、このくだりに落胆したことを認め、こう述べた。「それは、西側ではすでに数十年も語られていない言葉で綴られています」

 国際舞台においてロシアが直面する課題について述べるなかで、プーチン大統領は、世界において、軍事・政治面、経済面、情報面での競争が過熱している点を強調し、ロシアは、国際法を守り国家主権を尊重しつつリーダーたらんとすべきである、と述べた。

 中東および北アフリカにおける最近の出来事について述べるなかで、プーチン大統領は、こう述べた。「近年、私たちは、あたかもより進歩的であるかのような発展のモデルを他の国々に強要する試みが、実際には退歩的な蛮行や夥しい流血と化しているのを、目の当たりにしてきました」

 プーチン大統領は、シリア問題について、外交上の成果を次のように自画自賛した。「シリア問題において、国際社会は、さらなる世界秩序の基盤の喪失、武力の権利の勝利、鉄拳の権利、カオスの増殖へと転落するか、集団で責任ある決定を行うか、という重大な決定を共同で行なわねばなりませんでした」

 

「なぜ未だにミサイル防衛(MD)が必要なのか」 

 シリア紛争からイランの核プログラムへテーマを移したプーチン大統領は、イランが原子力エネルギー経済を発展させる奪うことのできない権利を有している点を指摘するとともに、中東地域のすべての国には安全が担保されるべきであるとして、こう指摘した。

 「ちなみに、イランの核プログラムは、かつて、ミサイル防衛(MD)システム配備の主たる論拠となっていましたが、現在、イランの核問題は過去のものとなりつつあるものの、MDシステムは、単に残っているばかりか、さらに進展しつつあります」

 また、プーチン大統領は、ロシアは新たな軍備システムの開発についても懸念を抱いているとし、こう牽制した。「MDシステムの可能性の増大と併せた高精度の戦略システム・ポテンシャルの外国による増強により、戦略核兵器削減の分野でこれまでに達せられたすべての合意は、無に帰するおそれがあります」