スノーデン氏が求職中

AFP / EastNews撮影

AFP / EastNews撮影

CIA(アメリカ中央情報局)元職員のエドワード・スノーデン氏は、今年8月にロシアへの一時的な政治亡命を許可され、現在、ロシア語を勉強するかたわら、仕事を探している。滞在は長引きそうだ。

 スノーデン氏は間もなく就職する見込みだと、同氏の弁護士で事実上の代理人であるアナトーリ・クチェリェナ氏は述べた。職探しのほか、スノーデン氏は「ロシア語の勉強もしており、それなりの成果が上がっている」とか。

表舞台に出るスパイたち

 スパイ等の極秘の活動に何らかの形で関わっていたロシア人が、ロシアに戻って意外なポストに就くことは珍しくなく、しばしばスキャンダルに近い騒ぎを巻き起こす。
 例えば、元ロシア連邦保安庁(FSB)職員アンドレイ・ルゴヴォイは、イギリスに亡命していた元FSB職員アレクサンドル・リトヴィネンコを放射性物質のポロニウムで毒殺したとして、同国で告発されるが、2007年には、極右「自由民主党」の党員となり、下院議員に当選した。
 米国からスパイとして告発され国外追放されたアンナ・チャップマンは、テレビ局「РЕН-ТВ」の司会者になった後、クレムリンを支持する青年組織「若き親衛隊」の社会評議会の委員になった。さらに、雑誌「Maxim」でヌード写真を披露して話題をまいた後、時の人、エドワード・スノーデン氏に、ツイッターで「私と結婚しない?」とプロポーズした。彼はこの女性スパイに、「チャップマンと絶対結婚したい!彼女を見てごらんよ!」と答えた。
 

 クチェリェナ氏は、「高収入の仕事を見つけられると確信している」と言う。すでにいくつかのオファーがあったことが、最近報じられている。

 

最初のオファーはロシア版フェイスブック

 最初にオファーしたのは、ロシアのソーシャルネットワーク「フ・コンタクチェ」のパーヴェル・ドゥーロフ社長だ。「エドワードは、わが社の数千万のユーザーの個人データを保護することに関心があるんじゃないかと思って」。

 「フ・コンタクチェ」のユーザーは4300万人に上る。ローカル市場でフェイスブックに勝った数少ない企業の一つだ。

 二人目は、ロシア連邦上院の個人データ保護に関する作業部会を率いるルスラン・ガッタロフ氏。しかし、これは仕事の提案ではなく面談だったらしく、ガッタロフ氏は、スノーデン氏を支援する基金の創設を提案した。

 「エドワードは金持ちではないので、そのうち生活費が底をつきます。彼の運命に関心を示したブロガーたちに対して、有難うと言いたい。もちろん私も、できる限り支援します」。こう上院議員は語った。

 

カスペルスキーの広告塔に?

 やはりロシア人女性のエカテリーナ・ザトゥリヴェテルは、イギリスのマイク・ハンコック下院議員(自由民主党)の助手をしていたが、2010年12月にMI5によりスパイ活動で告発された。ところが裁判では、2011年11月に、この種の事件としては史上初めて無罪となった。 彼女は、ルゴヴォイやチャップマンほど有名ではないが、絶えずマスコミに注目を浴びている。ロシアに帰国すると、テレビ局「Russia Today」で働き、今秋には、モスクワ市長選に出馬した野党指導者アレクセイ・ナヴァリヌイの選挙キャンペーンに参加した。

 ロシアの専門家の多くは、スノーデン氏の仕事が国家機密に関わるようなことはなく、いくつかの会社が広告目的で利用するのではないかと見ている。そういう企業としては、検索エンジン「メール・ル・グループ」やコンピュータ・セキュリティ会社「カスペルスキー・ラボ」などが考えられるという。

 では、この“内部告発者”はどんな仕事に就こうとしているのか?これについては、クチェリェナ氏は沈黙を守っている。「ノー・コメントです。彼が決めたら、すぐにお知らせします」。

 それでもクチェリェナ氏はヒントを一つくれた。スノーデン氏の仕事は多分、「ITか人権保護と関係したものになるでしょう」。

 

 

隠れ家を得てまた暴露

 同氏の父、ロン・スノーデン氏は、10月10~16日にロシアを訪れたが、去り際に、息子にはロシアに留まるように勧めたと、述べた。

 「私はロシアに旅行者として、つまり客としてやって来た。ロシアが息子に落ち着き先を提供してくれたことで、この国にとても感謝している」。こうロン氏は言った。

 ロン氏は、マルチビザを与えられたので、家族の他の者といっしょにまた来るつもりだという。

 氏によれば、息子はまだすべての秘密を暴露したわけではないので、ここに隠れ家を得たことで、ジャーナリストと通信しやすくなる。

 最近明らかにされた秘密情報としては、10月15日付けワシントン・ポスト紙に掲載されたものがある。それによると、米国家安全保障局(NSA)は、フェイスブック、Gmail、Hotmail、Yahooその他のネットユーザーの数億におよぶコンタクト、連絡先情報を追跡、収集している(情報シェアのサーバーも対象に含まれる)。

 スノーデン氏によると、NSAは、特殊なプログラムで、ユーザーがデータ送信やログインをしたとき、またデバイス間の同期時などに、連絡先情報を集めている。

 

ロシア文学の本をプレゼント

 これまでのところ、スノーデン氏がどこに住んでいるかも、何をしているかも分かっていない。クチェリェナ氏の伝える情報はごくわずかで、限定されている。この数ヶ月間で判明したのは、彼がロシアを自由に移動できるということだけだ。彼の顔を見てそれと分かる人間はほとんどいない。

 クチェリェナ氏は、スノーデン氏にロシアの古典文学の本をプレゼントした。そのなかにはドストエフスキーも含まれているという。

 「また本を持ってきました。本を読んで勉強したがっているようですから。もし、そんな可能性があれば、もっと旅行したでしょうけど」。こうクチェリェナ氏は言う。