米国覇権の終わりの始まりを象徴?

10月7~8日にインドネシアで開催される第25回APEC(アジア太平洋経済協力)サミット=Photoshot/Vostock Photo撮影

10月7~8日にインドネシアで開催される第25回APEC(アジア太平洋経済協力)サミット=Photoshot/Vostock Photo撮影

今週、東南アジア諸国は、世界政治の中心とは言わないまでも、アジア太平洋地域の注目の的になることは間違いない。10月7~8日にインドネシアで開催される第25回APEC(アジア太平洋経済協力)サミットでは、経済統合の問題が話し合われ、政治問題のほうは、ブルネイで10月9~10日に開かれる、第23回ASEANサミットと第8回東アジア・サミットで討議される。

 つい最近まで、これらのサミットで何が話し合われ何が起こるかは、前から見当が付いていた。

 というのは、アメリカのオバマ大統領が、10月6日から12日まで東南アジアを訪れ、APEC、ASEAN、東アジアの3つのサミットに出席して、マレーシアとフィリピンも訪問すると、公式に発表していたからだ。その際、オバマ大統領は、この一連の訪問で米国側が取り上げる主な議題は、米国とアジア太平洋地域との経済協力、海上の安全保障、および「当地域と世界に懸念を生じさせる、その他のテーマ」と明言していた。

 だから、謎は何もなかった。米国は、東シナ海と南シナ海における領土問題を取り上げて、東アジアの一連の国と中国との対立を煽るつもりだったということだ。

 

敵の敵は味方 

 実は、米国の今回のこういう戦術は、別に目新しいものではなく、2010年にヒラリー・クリントン国務長官(当時)がもっとはっきりした形で展開していた。この時、彼女は、安全保障問題を討議する「ASEAN地域フォーラム」(ARF)で、米国の国益は、南シナ海における領土問題の解決に存すると発言した。

 米国は当時、“アジア重視”に戦略を転換していたが、クリントン長官の発言は、そこから発したものであり、明確な目的をもっていた。つまり、東アジア諸国との戦略的同盟関係をさらに強固にし、新たな戦術的連携の関係を築くことだ。

 米国のこうした政治的支援は、やはり同国が音頭を取っているTPP(環太平洋パートナーシップ)の構築と表裏一体だ。もっとも、こちらの経済面の“連携”のほうは、アジア諸国としては諸手を挙げて歓迎というわけではないが、このTPPについての協議は、とくにAPECで行われるはずだった(APECは、統合に向けての影響力を次第に失ってきている)。

 

予算審議に足をとられ戦術は不発に 

 ところが、オバマ大統領が、米国の予算の協議をめぐる問題に足をとられて、東南アジア歴訪を見合わせたことで(とりわけ2つのサミットをキャンセルしたのが大きい)、同地域の国々は、またもお馴染みの問題に直面することになった。すなわち、アジア太平洋地域において中国を抑止してきた米国の役割は、一体保たれているのか。中国と対立する国に、今後も支援は与えられるのかという問題であり、その焦点の一つが、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの4カ国と中国の間の、南シナ海の島々をめぐる領土問題だ。

 訪問をとりやめたオバマ大統領の代わりに、ケリー国務長官がサミットに出向き、「米国は、アジア太平洋地域の同盟国を見捨てません」と説得せねばならない訳だが、ケリー氏は必ずしもこの任に相応しいわけではない。オバマ大統領の一期目に、米国が“アジア重視”に転換した際、ケリー氏は懐疑論を吐いたことがあるからだ。

 「米国内で何が起ころうと、そのせいで、米国のアジアのパートナーに対する義務が、いささかなりとも“目減り”するようなことはありません」。ケリー氏はこう釈明したが、実際に米国が内外の困難にもめげず、アジアのパートナーたちへの援助を続ける意向だと納得させるのは、簡単ではない。

 

シンガポール首相:「これは米国のためにならない」 

 オバマ氏が訪問をやめたことは、アジアでは警戒感をもって受け止められている。米国は実は、内政の状況に関係なくパートナーを助ける気などないのだ、と。

 「我々は、(オバマ大統領の訪問中止に)落胆している」と、インドネシアのティファトゥル・スンビリン通信情報大臣はため息をついた。シンガポールのリー・シェンロン首相は、訪問中止について、「これは米国のためにならない」とズバリ述べた。非公式のレベルでは、他の国の指導者またはスポークスマンも懸念を表している。

 こうした気分で、来るサミットで漁夫の利を得るのが中国に他ならない。最近、中国の高官たちは次第に、近年多くのアジア諸国に対して用いていた、強硬なレトリックを改めるようになり、恫喝の力から、発展する中国経済のソフト・パワーへと軸足を移している。実にオバマ大統領は、良いチャンスを中国に与えたものだ。

 今週のサミットでは、中国が主役となり、習近平・国家主席は、最高指導者に就任してから初めてとなる、この東南アジア訪問で、米国でも他のどの国でもなく、中国と建設的対話を行うべきだと指導者たちに訴えることになるだろう(面白いのは、米国の主要な同盟国の一つであるフィリピンのアキノ大統領が、中国と個別の首脳会談を行わないことだ)。

 

“経済の飴”をバラマキ 

 中国の主たる武器は経済協力だ。習近平主席は早くも、マレーシアとの貿易額を2017年までに3倍近く増やす約束をしている(額にして約1600億ドルまで)。インドネシアとは、総額330億ドルと見積もられる23もの経済協定に調印している。来るAPECサミットでは、さらに“経済の飴”がばら撒かれることだろう。

 政治と経済は表裏一体だ。東南アジア諸国を自分の方に向き直らせるまではいかなくとも、少なくとも宥めるために、中国は、色んなリップサービスを振りまいて、統合プロセスにおけるASEANの中心的役割を持ち上げるだろう。これまでにも取り上げられたことのある、地域における集団安全保障システムの構築が、再度提起される可能性も高い。

 

日本とインドの台頭? 

 こうして中国は、米国の影響力を次第に削ぐように努めていくだろう。これは、東アジアにおける米国の覇権の「終わりの始まり」だろうか?多分そうだ。少なくとも、今我々が見ている形での覇権は、終わりに向うだろう。

 国際関係は、大きく変化する可能性がある。米国の残した「力の真空」を埋めるべく、中国の他に、二つの国が自己主張するようになるだろう。それは日本とインドだ。米国は、内政に足をとられ、他の地域をもっと注視するようになる。その米国の“祝福”を受けた2カ国が、台頭する中国に対峙するリーダーとなり得るのだ。

 

イリヤ・ウソフ紙、ロシア戦略研究所アジア・中東センターの主任研究員