朝鮮半島情勢が再び緊迫

=ロイター通信撮影

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北朝鮮は「南北関係は戦時状況に入った」と宣言した。専門家はこの声明を、アメリカと韓国による北朝鮮国境付近での軍事演習に対する反応だと考えており、実際には戦争にまでおよばないとみている。北朝鮮と陸上国境線17キロメートルを接するロシアは、状況の行方を、固唾をのんで見守っている。

断固たる対抗の用意があるとのアピール  

 朝鮮半島情勢が緊迫したのは、3月30日だ。韓国と北朝鮮は戦争状態にあり、アメリカと韓国からの挑発があれば、核兵器による対抗を含めた応戦の用意がある、との声明を北朝鮮が発表した。

 専門家は、この発表は開戦宣言ではなく、政治的恫喝であると強調している。ロシア科学アカデミー東洋学研究所朝鮮・モンゴル科のアレクサンドル・ヴォロンツォフ主任はこう話す。「この発表は宣戦布告ではないと考えている。北朝鮮が自国側の休戦状態を解除することを発表したのだろう。開戦通告ではなく、何らかの挑発があった際に、それに対抗する決意があることのアピールだ」。

 それでも、これほど緊迫した宣言は長い期間なかった。同様の緊張や対立が起こったのは、北朝鮮が自国の海域でアメリカ海軍の環境調査艦プエブロを拿捕した、1960年代にさかのぼる。ヴォロンツォフ氏によると、この時は外交的手段で解決されたものの、それには1年もの期間を要した。

 

最悪のシナリオ 

 最悪のシナリオは、想定困難な展開の戦争が始まることだ。このような状況になれば、ロシアの沿海地方も危険にさらされるだろう。北朝鮮の北部と南部には30基の原子炉があり、「チェルノブイリとフクシマ」10個分の環境破壊のリスクが存在するからだ。北朝鮮の避難民は中国に逃れ、その後ロシアにも押し寄せるだろう。

 「北朝鮮が賢明な選択をできる能力を持ち、たとえ先制攻撃の権利を留保したとしても、一方的な開戦は計画していない、と信じたい。韓国とアメリカは今後の展開に大きな責任がある。戦争に発展させてはいけない」と、ヴォロンツォフ氏はロシアNOWの取材に対して答えた。

 

自国の安全を考えつつ外交手段で 

 朝鮮半島の対立の正常化で幾度となく仲介役を務めてきたロシアの観点からすれば、現状打開の最適な方法は外交的な対話だ。北朝鮮との国境付近に、過度にロシア軍を展開させたりしたら、外交的な対話に進めにくくなる。「それでも自国の国境の安全について考える必要がある。ロシアは慎重に行動しながら、バランスを見つけなければならない」とヴォロンツォフ氏は締めくくった。

 政治情勢センター長のアレクセイ・チェスナコフ氏は、大惨事に発展し得る情勢の悪化が続くのか、それとも北朝鮮が「回避する道」を見いだすことができるのかが、今後数日間で明らかになると考える。「いつものようにこの問題を先延ばしにすることは無理だ。北朝鮮問題を解決する責任を担っているのは韓国とアメリカだけでなく、6ヶ国協議に参加しているすべての国だ」。ロシアは緊張緩和のプロセスに適時参加しなければならないという。

 

「米国に対抗する能力はある」 

 ロシア下院(国家会議)国際問題委員会のアレクセイ・プシコフ委員長は、北朝鮮の宣言がアメリカへのシグナルであると考える。

 「北朝鮮はイラク戦争から教訓を得た。サダム・フセインは戦争への準備ができておらず、敵国の領土を攻撃できなかった。北朝鮮はアメリカ、アメリカ軍基地、その同盟国を威嚇しながら、イラクのようなことを北朝鮮にするなとアメリカに警告している。我が国に触れたら、すぐに応戦すると。応戦できる能力は北朝鮮に備わっている」。

 国際社会は北朝鮮の恫喝を単なるヒステリーだととらえているが、少なくともアメリカは深刻に受け止めているため、北朝鮮の目的は果たせたと、プシコフ委員長は考える。アメリカは今後どうするかを考えながら、北朝鮮の姿勢を注視していくだろう。