=イゴリ・クラシコフ/ロシースカヤ・ガゼタ撮影
―2012年に露日関係で進展をみたことで、とくに重要だったのは何ですか? 今年2013年の展望は? 最も良い傾向が現れているのはどの分野でしょう? 今後の両国間の関係強化には何が必要でしょうか?
昨年は、9月のウラジオストクAPEC(アジア太平洋経済協力)サミットの成功裏の開催に象徴されるように、ロシアが目指す、アジア太平洋地域との経済関係強化において、重要な契機となったと思います。日本は、ロシアが、同地域との経済関係強化の関連で、極東地域の発展に本腰を入れ始めていることを歓迎しています。
こうした状況の中で、昨年11月に東京で開催された貿易経済に関する日露政府間委員会第10回会合において、極東・シベリア地域における協力をはじめ、エネルギー・省エネ、医療、現代化・イノベーション、運輸、農業などの各分野における協力と、貿易投資環境の整備の必要性に関して、建設的かつ具体的な議論が行われたことは、今後両国の協力関係を更に強化していく上で極めて有意義だったと思います。
今後の日露関係について言えば、昨年12月に行われた安倍総理とプーチン大統領の電話会談において、安倍総理より、アジア太平洋地域の戦略的環境が大きく変化する中で、この地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築・強化することは両国の利益にも合致するものであり、安全保障、互恵的な経済協力等あらゆる分野で協力していくこと、また、日露間の最大の懸案である北方領土問題の最終的解決に向け、プーチン大統領とともに双方が受け入れ可能な解決策を見い出すべく努力していく方針を伝えました。
こうした昨年の動きを踏まえ、本年はあらゆる分野において両国の関係をさらに発展・深化させていくことが期待されています。そのために不可欠となるのは相互の信頼です。北方領土問題の解決により、日本とロシアは真に信頼できるパートナーになれると考えています。
―極東の発展について、プラス面とマイナス面は? またその露日関係への影響は?
極東・シベリア地域は人口が少なく、しかもさらに減り続けており、インフラも不十分で、それらが同地域発展の足かせになっていると承知しています。昨年のウラジオストクAPECで、日本を含むアジア・太平洋諸国もロシア極東地域への関心を強めていること、また、ロシアが極東発展省を創設し、極東・シベリアの開発を重視する姿勢を示していることから、隣国である日本との協力の可能性はこれまで以上に大きいものがあると考えます。
極東・シベリア地域では、サハリンにおけるエネルギー資源開発のほかにも、現在、ウラジオストクLNG(液化天然ガス)プロジェクト、イルクーツク州における「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)とイルクーツク石油やガスプロム・ネフチとの共同開発や、北海道銀行の発意によるハバロフスク市郊外の農場における技術協力等、具体的な日露協力プロジェクトが進行しつつあります。
こうした分野のほかにも、輸送インフラ、省エネ、スマートグリッド、ハイテク技術、医療など、様々な協力のポテンシャルがあるので、これらの分野での優良案件の発掘、実現のため両国政府も協力していく必要があると思います。
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―ロシアにおける日本企業進出の展望は? その発展のための条件は何でしょう? 何か変化していることはありますか? 克服しなければならない問題は? どんな分野に需要があり、供給が足りないでしょうか? 何か新しい傾向はありますか?
日露の経済関係の現状は、例えば、2011年の日露貿易高は過去最高の307億ドルに達しましたが、両国関係の潜在性からみれば未だ不十分と言わざるを得ません。また、同年の極東地域と日本の貿易高は約77億ドルに過ぎません。
今後の日露経済協力のさらなる発展のためには、ロシア側の貿易投資環境の改善が不可欠です。
日本企業からは、ロシアとのビジネスを進めるにあたり、税関手続など行政手続の透明性の確保および簡素化・迅速化、政策の継続性、実効性のある汚職対策などの要望のほか、極東の港湾やシベリア鉄道といった輸送インフラの改善などに関する要望も多く寄せられています。
先に挙げた貿易経済日露政府間委員会第10回会合では、日本企業が対露進出する上で直面している制度上の問題について検討を行う、日露貿易投資環境作業部会を設置することで一致しました。同作業部会の開催によって、日本企業が直面する問題が解決され、日露の企業間の協力がより一層拡大することを期待しています。
―文化交流について、今年はどんな計画がありますか? 今、ロシアと日本で人気のあるものは? 残念ながら、あまり注目されずに終わってしまったものはありますか? 両国の文化は、お互いにどんな好影響を与えることができるでしょうか?
日本文化は昔から高い評価を得ており、かつては歌舞伎、茶道、生け花、俳句などの伝統文化に主な関心がありましたが、最近では、現代作家やアニメといった現代文化まで幅広く日本文化の愛好者が増えており、大変喜ばしい。とく、寿司に象徴される日本料理が大きなブームとなっており、日本料理レストランの数の多さには目を見張るものがあります。
日本でも、大変多くの日本人が伝統的な優れたロシア文化に親近感を感じています。チャイコフスキー等の音楽や演劇、バレエなどに根強い人気があるほか、プーシキン、ツルゲーネフ、トルストイ、ドストエフスキー、チェーホフといった文豪の作品も昔から日本人の間で親しまれています。「カラマーゾフの兄弟」は数年前に出版された新訳がベストセラーになり、現在、舞台を現代の日本に置き換えたテレビドラマが放映されているほどです。
日本とロシアの文化は互いに影響を与えあってきました。日本のこけしがマトリョーシカの起源だという説もあるし、サンボの創始者の一人は、日本で柔道を習得した人物です。柔道は、ロシアでも大統領をはじめとして愛好者が多く、ロンドン・オリンピックで金メダル3個を獲得したロシアの躍進は記憶に新しいところです。
また、ボリショイ劇場で第一ソリストを務め、昨年ブリヤート国立オペラ・バレエ劇場の芸術監督に就任した岩田守弘氏など、日本人もロシア文化の世界で活躍している例が増えていることは喜ばしい。日露間の人的交流が活発化することで、お互いの文化を一層豊かにすることができると思います。
なお、在ハバロフスク日本総領事館は日本文化の紹介に努めており、3月には、日本文化月間として、日本映画祭、着物デモンストレーション、エコカーの専門家による講演等、様々な行事を行う予定です。
―日本人がロシアとロシア人についてもつイメージは、現実のそれとは違いますか? ロシア人が日本についてもっているイメージはどうですか?
歴史的には、戦争や冷戦など両国には厳しい時代もあったが、一般に、ロシア人は日本人に対して一定の敬意を持っていると感じますし、日本人もロシアの芸術・文化に憧れを抱いていると思います。一方で、冷戦時代のソ連の負のイメージも一部残っており、また、ソ連・ロシアでのビジネスで一定の困難を経験した人も多いです。しかし近年、ロシアはいろいろな面で変貌を遂げており、実際にロシアとの交流に携わった人は、ロシアの印象を新たにしているのではないかと思います。われわれはいろいろな分野で交流を一層活発化することによって、これまで以上にお互いを知ることができ、それが二国間関係の強化にもつながると考えます。
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