プーチンが新外交指針を提示

=タス通信撮影

=タス通信撮影

ロシアは今後も、国際舞台で現代的な経済外交およびソフト・パワーを活用しながら、意欲的に外交を行い、情報の流れにうまく乗っていく――。ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシア連邦安全保障会議に国の新たな外交政策を示しながら、このように述べた。

 「ロシアは今後も国際問題において、積極的かつ前向きな路線を続けて行く。世界でのロシアの重みと権威が増すだろう」。プーチン大統領はこう述べる一方で、「外交政策の根本は変わらない」と強調した。

 「それは開放性、予見可能性、プラグマティズム(実用主義)、国益の獲得と遵守への確固たる姿勢であり、そこには、いかなる対立も生じない」とプーチン大統領。

 プーチン大統領によれば、ロシアは、国内発展の課題を実現するための好条件、また社会的課題や経済的課題の解決に関心を持っている。「当然これは、国連の役割と国際法を前提としてのことだ」。

 

世界的文明の転換に際会して 

 新たな外交政策のコンセプトでは、ここ数年間に世界で起こった変化すべてが念頭に置かれている。大統領はその内容をこう要約した。

 「いまだ収束していない世界的な金融・経済危機、世界の勢力バランスの変化、中東・北アフリカの混乱の激化、世界の競争における文化的、文明的な尺度の重要性の高まり。こうした状況にあって、この新外交コンセプトでは、現代的な外交活動の形態と方法の活用に重きが置かれている。そのなかには、経済外交をうまく行い、ソフト・パワーの要素を導入して、世界的な情報の流れに乗ることも含まれる」。

 

コメント:フョードル・ルキヤノフ、

「世界政治の中のロシア」誌編集長、外交・防衛政策会議議長 

 ロシアの対アジア外交の強化の必要性について、ここ2~3年世間で、活発に議論が行われているにもかかわらず、西側諸国との関係がこれまでと同様、ロシアの外交的優先項目となり、アジアよりも重視されていることに注目すべきだ。優先順位では上からCIS諸国、西側諸国、そしてようやくアジアがくる。 

 世界がさまざまな脅威を抱えていることが、このコンセプトのいたるところに反映されていると思う。これらの脅威を把握し、予測することが、極めて困難、また時にまったく不可能となっていることが、この外交政策で透けて見える。

 このような状況下では、各国の基本的な部分が特に重要となってくる。それはすなわち「国家的同一性」という概念だ。つまり、国のアイデンティティーである。

 現代世界の安全保障は、この国家的アイデンティティーの安定性、発展性、明確性に多くの場合、依存している。世界は相互作用の場であり、異なる「国家的同一性」の衝突や競争の場でもあり得ると、この新コンセプトに記されている。これが、これまでのコンセプトと違う点だと私は考える。

 ロシアの外交官と政府は長い間、イデオロギーにはこだわらず、具体的な事柄や利益を追求するというプラグマティズムを標榜していたが、今そのアプローチがある程度見直されているのだ。プラグマティズムは重要だが、価値観や思想的基盤なしに外交政策は発展不可能だ、と。

 新たな原則のなかで目を引くのは、ソフトパワーの導入だ。これは実は、他の国々に自国のアイデンティティーを投影することにほかならない。これほどソフト・パワーに注意を割いているのは、ロシアが自国の思想・倫理的基盤を創ろうとしており、それを“価値観の世界市場”に一つの選択肢としてオファーする意向であることを示している。その際、経済も重視されている。

 ロシア外交はこれまでと同様、国の経済利益を促進するために、活発に活動するだろう。大規模な戦争のリスクは、今のところ低いと見られており、その結果、別の形態の対決が、とりわけ経済的影響をめぐる競争が激化しているのだから、なおさらだろう。

 

記事全文(ロシア語)

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる