ロシアのルーブルが今試されている

画像:アレクセイ・ヨルスチ

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ルーブルが自由変動通貨となった現在、ロシアは、同国経済のファンダメンタルズは依然として上昇傾向にあり、中国との新たな貿易提携関係が今後成果をあげるということを、自国民と世界の通貨トレーダーの両者に向けて説得することを余儀なくされるだろう。

 グローバル市場でルーブルが適正な市場価値になるまで変動することが許されるとしたら、次に何が起こるだろうか?

 ルーブルが下落する中、ロシア下院議員のある一人は、ロシアでドルの取扱いを禁止することを目的とした、非常に意見の分かれる法案を提案した。これが可決されて法律になった場合、ロシア国民は1年以内にロシアの銀行で保有するドル建て口座を閉じ、既存のすべてのドルを他の通貨に替える義務が生じることになる。

 そのような法律を通過させる必要は全くない。実際には、これは非常に感情的ながらも経済的なメリットの少ないプロジェクトであり、あまりにも現実からかけ離れている。さらに、既存の通貨法と中央銀行の指令により、個人がロシア国内でドルを使用できる方法はすでに制限されている。

 

ロシアにおけるドル 

 ちなみに、ソ連崩壊後のロシア独特の思考様式において、米ドルは特別な位置を占めている。ロシア人は今や、ルーブル以外の通貨なら何に対してでも献身的なファンなのだ。多くのロシア人は、ほとんど誰もが、時に何の理由もなく熱狂的にルーブルをドルに替え始めた1990年代初期を覚えている。彼らの動機は一つしかなかった。彼らはルーブルが「くず」になることを恐れていたのである。

 最初にルーブルを投げ売りしたのは通貨トレーダーたちで、彼らは直接路上に繰り出して処分するほどだった。平均的な市民がこの「病気」に罹ると、彼らは西側からの消費財の新市場にもこの新たな心的態度を持ち込んだ。そうなったのも想像に難くない。最初のトレーダーのグループは、金利が変動する中で「取引」を確保するために外貨を必要としていた。二つ目のグループは、いわゆる街角で見かける一般市民で、彼らは無意識ながらも超国家的な通貨制度に向けてロシアを推進した。

 結果はまったくもって衝撃的だった。ロシアの経済と金融システムの生命線であるマネーが「輸血」された。あるいは、少なくともソ連崩壊直後のあらゆる沈滞と負の遺産が希釈された。成長して耐性を強化する予定だった新生ロシアの組織体は、生き延びることに精一杯だったのだ。

 数十年前、ドルは、ロシアだけでなくほとんどの新興市場国で支配的地位を確立していた。ドルは国際貿易の主要な手形であり、その需要は毎年のように増加傾向にあった。世界の準備通貨となっていたドルはその値を維持し、ドル建ての米国債の必要性を促進した。世界の大多数の国の準備金はドル建てだった。そしてこれにより、米国政府は容易にドルを借入れて、制限なしに使うことが可能になった。

 

取引通貨の多様化 

 しかし今、こうした状況が変化する可能性がある。発展途上国の新規経済は、世界貿易においてより大きな役割を担うようになってきている。多数の国が、自国経済においてドルが担う役割を減らすという新たな可能性を模索している。石油貿易国の中には、ドルを獲得するために石油を売ることをすでに中止したものもある。国連と世界銀行は、ドルに連動しない新たな準備通貨を構築する潜在的な理由を示唆するレポートを発表している。

 昨年、中国に加えてロシアが、特定の貿易分野におけるドルの使用を制限する協定に署名した。実際には、モスクワと北京がこれらの変化の原動力であった。2011年から2014年の間に、両国はドル建ての契約から離れて、国際貿易においてルーブルと人民元を使用することに合意した。その後、日本は、円を貿易における主要取引通貨とする契約に署名し始めた。

 これにより、当事者間を仲介する通貨としてドルを使用せずに通貨を交換する制度が可能になっている。これに加えてロシア、中国、ブラジル、インドおよび南アフリカの間で新たな合意が成立しており、国際関係においてこれらの国の通貨を促進することになっている。2009年には、ほとんどのアフリカ諸国にとって中国が最大の貿易相手国となった。その結果、2015年までにはアフリカと中国間の貿易額が1000億元を超えるであろう。

 さらに、ドルからの距離をおくという考え方は、数々の事業体によって支持されている。彼らは預金をドルからユーロ、ポンド、スイスフランや香港ドル建てに大幅に移行しており、それを米国ではなく中国で維持している。

 今後の見通しとしては、こうしたことすべてがロシアの最高レベルの経済政策立案者だけでない。ルーブル建ての預金について突然の懸念を抱いている平均的なロシア市民にも影響力を行使することになるであろう。実際には貯蓄や預金を他の通貨に多様化したり、金などの貴金属に替えて保管した方がより安全なのだろうか?

 しかし問題は、ここ数カ月間のルーブルの下方の軌道がロシア経済におけるファンダメンタルズの弱さによるものなのか、それとも通常は合理的に機能する金融市場に危険な投機が感染した結果によるものなのか、である。

 

マクシム・サフォノフ、ロシア大統領府直属国立経済行政アカデミー(RANEPA)准教授

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