日本政府が集団的自衛権の解釈を変更

7月1日、安倍内閣は、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、今後、日本は、自国に対する軍事攻撃でない場合にも自衛隊を用いることが可能となったが、毎日新聞は、この決定が「日本の安全保障分野における基本政策を根本的に変えうる」点を指摘している。

ナタリア・ミハイレンコ

行動のより大きな自由

 新たな解釈は、憲法は日本が同盟国の義務を履行するための自衛隊の使用を禁止するものではない、とする憲法9条の拡大解釈へ向けた、さらなる一歩とみなすことができる。日本は、憲法改正の可能性を事実上除外する憲法見直しの手続きが困難をきわめるなかで、かなり以前からこの方向へ歩みはじめた。集団的自衛権の解釈変更は、日本が国連外交の枠内での国際法上の義務をより完全に遂行する可能性を与えるものとみられている。

 新たな解釈のもう一つの帰結とみなしうるのは、日本の領海に接続する水域における米国との共同行動へのより明確な法的根拠の適用である。言い換えれば、今後、日本は、太平洋における共同軍事作戦の際に、より自由に行動できるようになる。日本政府は、米国に対して軍事行動を行う国々へ向かう武器を積んだ船舶の臨検および拿捕ならびに東アジアで軍事作戦を遂行するアメリカの戦闘機への空中給油などを行う必要に自衛隊が迫られた場合の「追加の法的ボーナス」を手に入れるわけである。技術的・財政的・物流的な側面をふくむ対ミサイル防衛システムの開発への日本の貢献のための法的基盤が、より重みのある法的に裏づけられたものになる、とみられている。

 

米国が日本を軍事紛争へ巻き込む可能性は? 

 一方、この閣議決定は、批判の的となった。とりわけ非難を浴びているのは、集団的自衛権の行使を限定する基準が曖昧で不明確な点であり、たとえば、「日本と密接な関係にある他国」や日本国民の基本的権利にとっての「明白な危険」という概念は、十分に法的に明確であるとは言えない。また、集団的自衛権の行使の手続きそのものも、批判の対象となっている。閣議決定の際の説明によれば、生じた軍事紛争の状況が武力行使容認のための要件に適っているかどうかは、内閣が判断する、という。裏を返せば、自衛隊の使用は、立憲体制の根幹にかかわるものであるだけに、国会の承認なしに政府がこの分野における決定を行うことは、行政府と立法府の相互関係の原則に違反する、ということになる。

 日本にとっては、自国の意思に反して軍事紛争に巻き込まれる、というもう一つの基本的リスクもある。日本は、たとえば、紛争地帯で自衛隊を使用させるために日本に加えられうる米国サイドからの圧力に、いっそう屈しやすくなる。米国との軍事同盟ゆえにイラクにおける作戦への参加を余儀なくされて自国の軍人のあいだに犠牲者を出した英国のケースが、悪しき例としてよく挙げられる。

 

“申し分のない”同盟国 

 集団的自衛権の解釈変更によって、日本が、米国の参加を伴う軍事紛争が起きた場合に自国の立場をより明確にできるようになることは、明らかであり、この意味で、非の打ちどころのない同盟国としての日本のステータスへ向けた進化に弾みがついた、と言えよう。

 ただ、現実に日本が自らの国益を守るために集団的自衛権を必要とする状況は生じうるのか、という疑問が湧く。日本が武力紛争へ巻き込まれる現実的な危険性は、自衛権の「緩やかな」解釈を考慮してさえも、あるとは思えない。たしかに、米国が直接的な軍事攻撃に晒されれば、日本は同盟国として直接的な軍事支援を行うことになるが、閣議決定において問題となっているのは米国に対する直接的な軍事攻撃であることを考慮すべきである。   

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日米も日露も大事

 米国は、今のところはまだ世界最強の経済と軍隊をそなえた核大国であるので、近い将来にそうした状況が生じるとは到底思えない。米国が巻き込まれうる地域紛争について言えば(日本の国益に直接的にかかわる状況をのぞいて)、アメリカ軍が参加する軍事行動は、アメリカに対する「攻撃」を意味するわけではまったくなく、結果として、日本は、武力行使に関する決定に際して自由な選択が許される。

 

社会の不満 

 国内の政治状況も、新らたな解釈の適用を妨げよう。日本には、憲法問題をめぐって事実上分裂したかなり強力な世論が、今もなお存在している。しかも自民党は、連立与党の公明党に政治的に大きく依存している。同党は、平和主義的な姿勢を堅持しつつ、防衛分野における政府のきわめてラディカルな決定に歯止めをかけている。

 

地域情勢への新たな視点 

 ロシアについて言えば、東アジアに軍事的安全保障に関する多国間協議のメカニズムが存在しないなかで、ロシアは、極東地域における国際政治情勢の安定化要因としての日米同盟に理解を示している。それゆえ、ロシアは、その同盟の進化へ向けた新たな一歩を、冷戦時代の旧いステレオタイプな精神で「日本の軍国主義路線を物語るものの一つ」とみなすことはしておらず、このところ深刻な懸念を呼び起こしている地域における軍事戦略的状況の行方を注意深く見守っている。

 

ドミトリー・ストレリツォフ、モスクワ国立国際関係大学教授・東洋学講座主任