極東のロシア軍の動き

 ナタリア・ミハイレンコ

ナタリア・ミハイレンコ

極東におけるロシアの軍事的な動きは、パートナー国のさまざまな反応を呼び起こしている。最も大きな懸念を抱いているのは日本で、韓国は理解を示しており、中国は今のところ静観している。

一度に六機の戦略爆撃機「ベア」が飛来 

 先日、日本の小野寺防衛相は、自国の領空付近において頻発したロシア軍機の飛行に対する懸念を表明し、そうした行動は「冷戦時代にも見られなかった異常なもの」であるとし、日本はロシア軍機の飛行を注視していくと声明した。日本の航空自衛隊の戦闘機は、一週間に亘り、連日、日本の国境付近を飛行するロシア軍機を監視するために緊急発進したが、日本は、最近の北朝鮮の短距離ミサイル発射ののちに地域におけるロシア空軍の動きが活発化した点を指摘している。

 そのうちの一日は、一度に六機の戦略爆撃機Tu-95MS(コードネーム「ベア(熊)」)が、日本の沿岸付近に現れた。二機は、朝鮮半島の東部と東シナ海の上空を飛行したのちに日本の太平洋岸沿いを北上し、別の二機ずつの二組は、北から日本海上空へ飛来して中国・北陸地方付近を通過した。それらの飛行機は、いずれも日本の領空を侵犯しなかったが、それほど多くのロシア軍機の飛来は、日本の軍事指導部を驚愕させ、さまざまな憶測と嫌悪のための口実を与えた。

 最近、外国のアナリストらも、クリル列島およびサハリンにおける軍備やインフラの現代化、ロシアのミサイル防衛力の強化、原子力潜水艦やヘリ空母などによる太平洋艦隊の刷新、極東地域における演習や航空機の発進や艦船の出航の頻度の増加に対する懸念をしばしば表明している。

 

威嚇の意図はない 

 一部の専門家は、2013年9月の安倍首相とプーチン大統領の会談およびそれに続く2プラス2(国防・外務担当相)サミットののちに顕著となった露日関係の改善を背景としてそうした動きが過剰なものに思える点を指摘している。しかし、国外におけるロシアのあらゆる行動に「クリミア(もしくはコソボ!)のシナリオ」を見てとろうとする試みも見られるが、ロシアの防衛力の向上を領土問題と関連づけようとするのは、まったく的外れである。ロシアには、東の隣国を威嚇する必要はまったくない。生産的な対話を軌道に乗せ、極東におけるものを含めた投資やプロジェクトのための条件を整え、エネルギーや輸送やエロコジーや救難などの分野における共通の利益を認識することが、ようやくできたのだから。

 ロシアとの戦略的パートナーシップ体制を上首尾に実現しつつある中国にとっても、ロシアとの二国間対話がもっぱら経済的なものから多様で包括的なものへと変容しつつある韓国にとっても、同じことが言える。

 しかも、地域の緊張の高まりは、まず第一にロシアの経済的イニシアティヴを麻痺させるので、北東アジアにおける安全の保障は、ロシアの国益に適う。極東におけるロシアの軍事的な動きの活発化は、偶然ではない。この地域は、ロシアにとって死活に係わるほど重要であり、安定を損ねる北朝鮮の行動やアジア太平洋地域の二国間対立の深まりに見られるとおり極めて不穏なのだから。ロシアは、主要国に和平交渉や危機回避を呼びかけつつ、地域の二国間紛争への不干渉の原則を堅持している。

 

日本と韓国の節度ある対応 

 もちろん、ロシアは、北東アジアから生ずる脅威に反応しないわけにはいかない。まず第一に、ロシアは、ミサイル防衛分野における日米協力を懸念しており、先に、ショイグ国防省は、「日本へ配備されるエレメントを含む米国によるグローバルなミサイル防衛システムの創設のプランは、ロシアの深い憂慮を呼び起こしている」と述べた。理論上、イージス・システムを備えた日本の海上自衛隊の艦船は、米国のためにロシアの核抑止力を抑えるべく行動することができるが、実際のところ、ロシアとしては、軍事的脅威でもなく経済的ライバルでもない日本のパートナーたちの誠実さや賢明さを信じたいところである。戦闘状態における空中発射巡航ミサイルの迎撃も弾道ミサイル用機動式弾頭の迎撃も今のところ行われておらず、検証する願望がどちら側にもないとあれば、なおさらである。

 注目すべきなのは、ミサイル防衛力のアップおよび艦船や潜水艦への攻撃兵器の装備を見込んだ韓国の海軍再軍備計画がロシアではさしたる脅威とみなされていない、という点である。両国間には、政治的不和や領土問題がないのだ。また、ロシア社会には、軍事分野における中国の台頭を警戒する気運も若干見られるが、両国間には、相手の意向の誠実さに疑念を覚えるような機会は今のところない。

 クリミア情勢に対する国際社会の反応という文脈において、極東におけるロシアの活発な軍事的動きは、制裁導入に備えた保険とみなすこともできよう。しかし、日本は、かなり形式的な「非難」にとどまり、「ウィン・ウィン」の状態を目指しつつ二国間関係における部分的成功に留まろうとはしていない。韓国も、同様の姿勢を保っており、短期的にアメリカの国益を支持するというよりはむしろロシアとの長期的な協力を目指している。中国は、慎重な姿勢だが、ロシアの側に立っている。

 オバマ大統領の東京およびソウルへの訪問ののちに強まったと思われる米国サイドからの明らかな圧力にもかかわらず、安倍氏と朴氏の両政権は、ロシアに対してかなり節度をもってふるまっており、ロシアのEUのパートナーに模範を示している。アジアの隣国の賢明さ、そして、アジアの隣国が欧米とロシアの関係に左右されずに協力の優先事項を見誤らないことを、切に信じたい。

 

 アンドレイ・グービン 

政治学博士、ロシア戦略研究所・アジア太平洋センター・学術プログラム

リーダー、極東連邦大学・地域国際研究学院・准教授