プーチンにウクライナ・ルーレット

画像提供:K.Maler

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ウクライナ情勢の悪化後初めて、プーチン大統領が記者会見を行った。非常に落ち着き、自身の正当性に自信を持った様子で、対ウクライナ方針を続ける用意があることを伝えた。

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 大統領の発言は、ロシア株の大量の売りが起こった金融市場、またロシア政府に向けて直接的な揺さぶりをかけていたアメリカを筆頭とする西側諸国の政府の熱くなった頭を、冷やすはずだった。

 しかしながら今後の事態の発展について、むしろセンセーショナルな声明を発表。ロシアはウクライナの領土の保全を認めようとしていない。「ロシアが(ウクライナ情勢のことを)憲法に反する転覆だと言うと、いや、そうではなく、これは非武装の政権奪取で革命だと反論される。これが革命なら、この土地に新しい国家が生まれたと考える一部専門家の主張が、正しいということになる。ロシアはこの国家に関するいかなる義務的文書にも、この国家とともに署名を行っていない」。また、革命によってロシア帝国が崩壊し、新しい国家が生まれた1917年の状況との類似性にも触れた。

 これは1994年のブダペスト覚書を念頭に置いて述べられたものだ。この覚書は、ウクライナがソ連の核兵器を手放し、非核国となる代わりに、ロシアがアメリカ、イギリスとともに、ウクライナの領土の保全を尊重することを義務づけるもの。もっともプーチン大統領は、ロシア、アメリカ、イギリスのいずれも、この覚書を批准していないことには触れなかったが。

 さらにこの解釈でいけば、恐らく3月30日の国民投票で住民が支持するであろうクリミア半島の独立を認める用意だけでなく、他の左岸ウクライナ地域で行われる国民投票の結果を認める用意も含まれていることになる。クリミア半島をロシアに併合することが検討されているのかという質問に対して、プーチン大統領はこう答えた。「検討されていない。私は概して、意思表示の自由、安全の自由の条件が整っているどこかの領域に暮らしている住人のみが、自分の未来を決めることができるし、決めなくてはならないんだろうと考える。例えばコソボ人やコソボのアルバニア人にそれが許されたなら、地球上の多くの場所でそれが許されたなら、私が知っている限り、そして国連の文書でも、国民の自決権はなくなっていない」。

 これらの詳細な回答は、ロシアと国境を接するウクライナの東部地域の分離という、ウクライナ情勢のより病的な問題に関する国際的な議論に、プーチン大統領が加わる用意のあることを証明している。プーチン大統領が、ロシア語系住民を守るための軍事力行使を完全に撤回しようとはしていないものの、ウクライナと戦争をする気はないことをはっきりと記者会見で示したことを考えれば、これはウクライナ情勢のより原則的な側面だ。大統領の机上にすべてのオプションがあるというのは、アメリカ的構造のロシア版である。

 西側諸国の報道から判断するに、領土の保全の問題についてはすでに、ロシアとアメリカの大統領の電話会談において話し合いがなされているようだ。しかしながらクレムリンの広報室はこれに言及していない。

 プーチン大統領は、ウクライナ問題に関する西側の指導者との会話について、こう述べた。「我々の会話は極秘であり、一部は閉鎖回線で行われている。したがって私に公表する権利はないと考える」。

 閉鎖回線とは、外務省を通らず、指導者が仲介者なしで難しい問題にすばやく回答できる回線のようだ。キューバ危機の時もそうだった。

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