良いシナリオはない・・・

ウクライナのヤヌコビッチ政権が、EU(欧州連合)との自由貿易協定を骨子とする「連合協定」の締結を拒否した結果、事態は、国内の権力闘争に発展した。

コンスタンチン・マーレル

 欧州にシフトすべきか否かの論争は、大集会と混乱と対立の激化を招いている。

 なぜ、「連合協定」調印の支持者たちをマイダン(独立広場)から強制排除したのか理解に苦しむ。どうやら、2015年の大統領選に照準を合わせて、政治ゲームが始まったようだ。

 なるほど、ヤヌコビッチ大統領は、社会的、経済的危機の激化を未然に防いだ(*現在、外貨準備高が輸入額の3ヶ月分を下回っており、もし協定締結に踏み切れば、経済的に強く依存しているロシアとの関係悪化で、一気に危機が深まりかねなかった)。彼が、EUとの連合協定の条件をのんでいたら、必然的に危機は加速しただろう。

 もちろん、ロシアとの今後の交渉は、ぬかるみを進むようなもので、天からマナが降ってくることを保証するわけではないが、とりあえず“沈没”は防げる。その後でまた、EUとのゲームを始めればいい。

 

野党にタナボタで切り札

 野党は、あらゆるキャンペーンに使えるスローガン手に入れた。すなわち、「我々の欧州としての未来を奪われた」。ユリヤ・ティモシェンコ元首相が服役中であることも、実は、抗議行動の指導者たちにとっては好都合だ。

 今や、穏健なシナリオは消えつつある。抗議行動を牛耳るようになるのは、ラディカルな勢力で、彼らとの妥協は不可能だ。

 それにだいたい、何をめぐっての妥協なのか。もはや、問題は、「連合協定」調印ではなく、権力だ。そして、このウクライナ国内の権力闘争には、地政学的な要素が含まれている。

 リトアニアの首都ビリニュス開かれたEU首脳会議が流産したことで、EUは、ヤヌコビッチ大統領に対して怒っているから、反ヤヌコビッチでさえあれば、いきおい、どんな勢力でも、政治的、精神的支援を与えることになるだろう。例えば、民族主義政党「自由」とその党首オレグ・チャグニボク氏のように、実際には、ヤヌコビッチ氏より“西向き”でなくても。

 

アイデンティティ定まらぬまま地盤沈下

 抗議行動の強引な鎮圧の結果、事態は安定に向わず、逆になる可能性がある。また、ヤヌコビッチ氏は、唯一残った味方として、ロシアにすがることになりかねないが、これで彼は、完全にフリーハンドを失うことになろう。

 そうなれば、ロシアとしても、またウクライナの内政に引き込まれることになる。この濁ったドロ沼では、ロシアは既に再三足をとられてきた。

 どうやら、ウクライナには良いシナリオは無いらしいという、悲しい印象だ。この国は、自分の国益が何なのかはっきり自覚していないのに、無理やり最終的に立場を鮮明にさせる試みがなされてきた。そのせいで、ウクライナはこれまで何度も、その国としての堅固さを試す試練にさらされてきたが、試練のたびにリスクは大きくなり、“軟着陸”の可能性は減っていくようだ。

 

元記事(露語)

 

フョードル・ルキヤノフ、

ロシアの外交専門誌「世界政治におけるロシア」編集長、外交・防衛政策会議議長。