日露の「ペレザグルースカ(再起動)」

=セルゲイ・ヨルキン

=セルゲイ・ヨルキン

安倍普三首相の訪問は、その大胆な経済外交でロシアをあっと言わせた。世界的な大企業の代表が記者会見に一堂に会することなど、これまでなかったのでは ないだろうか。

 そうそうたる顔ぶれをここにあげてみよう。東芝の佐々木則夫社長、川崎重工の長谷川聰社長、オリンパスの笹宏行社長、住友重工の岡正義氏、 味の素の伊藤雅俊社長、北海道銀行の堰八義博頭取などだ。わざわざフォーブス誌のランキングで確認する必要がないほど、知られた企業ばかりだ。そしてこれ は安倍首相に同行した大経済視察団のメンバーの一部にすぎない。

 これらの日本の経済人は、「ロシアの医療と生活のレベルを上げる」べく、イノベーションを提案している。特に重視している分野が、都市環境、食品および農業、医療、省エネと新しいエネルギーだ。

 

ロシアの“桜さん”たち 

 安倍首相の訪問によって、ロシアで愛されている優しい日本文化を再び見つめることもできたはずだ。安倍首相の桜の見物から映画(アレクサンドル・ソクー ロフ監督の「太陽」)や文学まで、またフセヴォロド・オフチンニコフの著書「桜の枝」からボリス・アクーニン(芸術家イーゴリ・サクロフの挿絵が200点 ほど入った小説「ダイヤモンドの馬車」は再出版されたばかり)まで。「桜」をロシア姓に変えるとSokurovやSakurovになるが、これらの日本文 化の関係者の姓に“桜”が入っているのは偶然にしては出来過ぎだ。

 日本では首脳会談が行われる前に、この訪問を「ペレザグルースカ(再起動)」と呼んでいたが、その名にふさわしい始まりとなった。経済交流を強調した今回の特別な訪問は実際に成功した。

 セルゲイ・ラブロフ外相と岸田文雄外相は4月10日、ロンドンで開催された主要8ヶ国(G8)外相会議の場で首脳会談の事前調整を行い、全体的な日露関係発展の「長期的なベクトルを示す」ために、このような形にすることを決めていた。

 日露の関係は、人類にとって重要な分野での、「エネルギーとイノベーションの交換」に見える。だがロシアには、その未熟なビジネス環境を何とかしなけ ればならないという課題がある。これはもっとも困難な日露問題だ。土地配分を必要とするような大きなプロジェクトの承認を得るために、なぜ日本のビジネス が2~3年も待たなければいけないのだろうか。中国に投資をしたなら、この期間で利益を出すことすらできる。日本がシベリア鉄道ではなく、海洋を経由して 船便でヨーロッパに貨物を届けることを考えているのはなぜだろうか。

 

 急がば回れ

 その他の日露問題について言うなら、ある問題以外はそれほど深刻ではない。ある問題とは例の領土問題だ。ここでは二国間関係だけでなく、全体を見なければならない。

 今回の訪問前に日本が示した提案を再度注意深く読むと、これは領土交渉の「新たなスタート」に関する話であって、それ以降の話ではない。スタートして、「長期的なベクトル」に合わせて進むのだ。この交渉の期限は特に示されていない。

 今回のロシアの声明はわかりやすい。プーチン大統領は最初に、平和条約について(つまり領土問題について)話すと述べ、その通りに進めた。長期間交渉が行われていなかったため、問題を突き詰めることはなかった。

 日本の首相は10年もモスクワを公式に訪問していなかった(とはいえ、G8やAPECで両国の首脳会談は行われていたし、プーチン大統領は2005年に 日本を訪れている)。日本が内閣改造によって、外交政策をうまく進められなかったことも要因ではあるが・・・メドベージェフ首相が昨年7月3日、南クリル (南千島)を訪問した際、日本は激しくロシアを批判し、ロシアも反論した。その後関係は落ち着き、今回の訪問でようやく普通の穏やかな交渉に戻れたわけだ が、それ以上の進展はない。

 ロシアでは1990年代、北方領土を日本に返還し、貿易や投資を活発にすべきだとの意見が存在していた。それでも昨年は貿易額が急増し、330億ドル (約3兆2200億円)に達した。投資はどうだろうか。ロシアのビジネス環境が改善されれば、領土問題に関係なく拡大するだろう。領土問題は経済とは切 り離し、これについてはゆっくり、そして真剣に、話し合っていくべきであろう。

 

*ロシアNOWの記事の内容は、編集部の見解と必ずしも一致するものではありません。

元記事(露文)