ロシアが対外宣伝で負けているわけ

=ハビエル・イカサ

=ハビエル・イカサ

 ロシアのメディアは常に、ロシア政府が“ソフトパワー”つまり対外宣伝を強化しようとしていることを報じている。実際に、既存の外交的ツールによる情報は、絶えずグローバル化している世界の人々に届いてはいるが、ロシアの国際的なイメージは改善していないようだ。なぜだろうか?

 冷戦時代、ソ連のプロパガンダは、グローバルな対決の強力な武器だった。両極端な世界が終わったとき、ロシアは破産寸前で、より緊急な課題があったため、自ら対外的なコミュニケーションのスイッチをほとんど全て切ってしまった。

 

チャンネル入れても効果が上がらない理由は? 

 新しいロシアの指導者は、西側に誤解されていると感じた数年前に、そのような状況を変えようとし始めた。プーチン大統領は、国営通信社であるロシア通信の復活を始め、新たな国際テレビチャンネル、ロシア・トゥデイを設立した。

 また、毎年恒例の、大統領と学者や外国人ジャーナリストなどの会合「バルダイ・クラブ」の設立や、ソチでの2014年冬季オリンピックの開催など、ロシアの対外的コミュニケーション・プロジェクトの数は増え続けた。

 しかし、ロシアの国際的なイメージは、ここ数年で改善されたという確かな根拠はなく、国の外交政策の効果が問われる。

 「グローバル·イノベーション·ラボ」のイーゴリ・バルク氏によると、ロシアの悪い国際イメージの影響を受けていない業界は少なく、そのうちの一つはIT業界だという。

 

文化は評価するが政治は評価せず 

 何によらず、メカニズムが期待されていた効果をもたらさない場合、二つの疑問が生じる。一つは、そのメカニズムが機能しているか。二つ目は、それが正しく利用されているか。

 ロシアの外国向けメディアに触れている人々は増えており、数値で表せる部分に置いては、うまくいっているようだ。しかし、そうした努力にも関わらず、ロシアのイメージが改善されているとは言い難い。

 英国のサイモン·アンホルト氏による国家ブランド指数では、ロシアの文化は(50カ国中)トップ10以内にランクされたが、ロシアの政治に関しては、トップ20以内にもならなかった。2009年にはアメリカの回答者はロシアを43位に評価した。

 皮肉なことに、ロシアの外交は、信頼感の醸成に役立つ、文化や価値観に焦点を当てていない。その代わりに、主にロシアの政治ポリシーの発信にとどまっており、これは役立つこともあるかもしれないが、不十分だ。

「ピュー·リサーチ·グローバル意識プロジェクト」によると、2007年から2012年にかけて、ロシアに対して概ね好感を持っている人の数は、17カ国で減少し、増加したのは3カ国だけだった(1年分以上のデータがある27カ国が対象)。

 

一方的プロパガンダでは役に立たない 

 現代のロシアは、ソ連の国際コミュニケーションの経験を復活させようとするなかで、非常に重要な部分を忘れている。世界の特定の地域でソ連が人気だったのは、プロパガンダ故ではなかった。国際的な開発プロジェクト、建設、教育などがソ連の人気を支えた。ソ連のプロパガンダは、メッセージを一方的に広める手段でしかなかった。

 だから、ソ連のコミュニケーションの仕組みを再構築しても、ロシアがその文化や価値観を広めるのには役立つかもしれないが、政策の推進には役に立たないだろう。ここでソフトパワーが成功するためには、政策が他国の意見を反映している必要がある。

 ロシアは、メッセージを配信する効果的なメカニズムを構築したが、今後の課題は、外国との双方向コミュニケーションを開発し、政策策定プロセスにおいて部外者の意見の考慮することにより、コミュニケーションを強化していくことだ。