プリセツカヤが映画関係者を魅了したのも驚きではない。ソ連のアレクサンドル・ザルヒ監督のクラシック映画「アンナ・カレーニナ」で演じた
ベッツィー・トヴェルスカヤの役と表現力で競えるのは、本人のバレエの
役だけである。映画への出演はこれだけではない。映画「チャイコフスキー」で歌手デジレ・アルトー役も演じている。また、絵画「黄道十二宮」のチュルリョーニスの女神にもなっている。
プリセツカヤはその後、イワン・ツルゲーネフの中編小説を原作とした
映画「春の水」の制作をアナトリー・エフロス監督に提案した。「あれは
プリセツカヤのアイデアだった。演劇の役を演じ、その演劇でバレエも踊ると。私は自分の習慣から、一旦、相手を傷つけないように『合意』したと言い、その後で何らかの理由をつけてうまく逃げることに決めた。私は後で
消えるために、いつも合意するが、うまくいかない。ましてやプリセツカヤから逃げるなんて、絶対に無理だ。逃げるぞと思いながら、なぜか本人が
練習しているバレエのクラスに行ってしまう。その練習の見事なことと
言ったら」!»
残念ながら、プリセツカヤを演劇のシーンで見ることはなかった。その代わり、日本の能の演目「羽衣」に出演している。白足袋と草履をはき、地上に舞い降りた天女になった。また、能の演目「黒塚」でも主役を演じている。2008年には京都の上賀茂神社で一流能楽師の梅若六郎と共演。会場にいた観客だけでなく、テレビの放送を見た人をも感動させた。2003年、宝塚歌劇星組公演「王家に捧ぐ歌」の振付師にもなっている。