ザバイカリエ地方ではあらゆる点で地域独特の習慣、そして東洋に近いものを感じさせられる。アギンスキー・ダツァン(アギンスキー寺院)の周りで鳴り響き、松の木の梢へと舞い上がる聖なる鐘の密やかな音の中にも、ステップを吹き渡る埃っぽい風の中にも、またカフェのドアから町の通りに漏れだす作りたての羊肉のブウズ(独特のレシピで作られた大きな水餃子)の香りの中にも、それは感じられる。
シベリアの多くの人々にとって、アギンスコエは地図のどこにあるのかさえ知らない場所だ。しかしこの地域の人口の大半を占めるブリャート人、それにザバイカリエのみならずブリャートやアルタイ共和国、モンゴル、トゥヴァに住む仏教徒にとって、アギンスコエは民族の伝説や儀式を記憶する祖先たちがいる家であり、心安く祈りを捧げ、遠いさすらいの旅から戻りたくなる家なのである。