ロシア連邦英雄の称号はどのような功績に対して与えられているか

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 ロシア最高の称号を得るのは職業軍人や警察官だけではない。ふつうの高校生が受章することもある。受章者の多くに共通するのは、時に自分の命を犠牲にして、人々の命を救ったということだ。

高校生

 マリーナ・プロトニコワは、ロシア連邦英雄の称号に推薦された初の女性だ(死後受章)。

 1991年6月30日、17歳のマリーナは妹のジャンナ、レーナ、友人のナターシャとともに川で遊んでいた。ナターシャが溺れると、マリーナは深みから彼女を引き上げ、岸の茂みへと押し上げた。恐ろしいことに、彼女は妹らがナターシャを助けるために飛び込み、水の渦に呑み込まれていたことに気付いた。

 少女は最後の力を振り絞って妹らを引き上げたが、自分は浮上することができなかった。自らの命を犠牲にして、3人の命を救ったのである。

宇宙飛行士

 ロシアでは、宇宙へ行った宇宙飛行士ほぼ全員に英雄の称号を授けるのが慣習となっている。だが、数十人の名前の中に、ひときわ傑出した人物の名も見られる。

 例えば、宇宙飛行士のセルゲイ・クリカリョフは、軌道上で5ヶ月間過ごすため、1991年5月に宇宙に旅立った。だが、彼の任務中にソ連が崩壊へ向かうことになった。混乱と混沌の中、クリカリョフを地上に戻すことができず、帰還は常に延期された。セルゲイは結局宇宙で311日過ごし、その後ようやく地上に降り立った。だがそこはもうソ連ではなく、新生ロシアだった。

 クリカリョフは、ソ連邦英雄とロシア連邦英雄の称号を授けられた数少ない宇宙飛行士の一人だ。また、彼は宇宙滞在合計時間の世界記録保持者の一人(計803日)である。

スポーツ選手

 ロシアで最も誉れ高いスポーツ選手の一人であるアレクサンドル・カレリンは、グレコローマンスタイル・レスリング界のレジェンドだ。彼は世界チャンピオンに9度、欧州チャンピオンに12度輝いた他、4度地上最高のレスリング選手と認められ、世界最高のスポーツ選手とまで言われた。

 カレリンは現役時代には888試合に勝ち、負けたのはわずか2回だった。1996年、ロシア連邦英雄の称号を授けられた。

幼稚園教諭

 2002年9月26日夜、戦闘員集団がイングーシのアルクン村に侵入した。彼らは一度も発砲することなく村を占拠できると考えていた。

 だが、テロリストの計画は幼稚園の教諭だったマレム・アラプハノワによって妨害された。彼女は叫び声で近隣住民を起こそうとしたのだ。女性を黙らせるため、戦闘員らは自動小銃を彼女の夫に向けた。マレムは夫をかばって被弾した。

 4人の未成年の子供を残して世を去ったマレム・アラプハノワの自己犠牲により、テロリスト集団は適時に発見され、殲滅された。

救助隊員

 2004年9月1日、テロリストが北オセチアのベスラン学校を占拠すると、事件現場に救助隊が派遣された。その中にワレリー・ザマラエフがいた。

 戦闘員らとの合意により、救助隊は撃たれた人質を搬送することになっていた。しかし作業中に校舎で爆発が起き、テロリストが発砲を始めた。

 擲弾で重傷を負ったザマラエフは、手当を受けることなく長時間校内に留まった。担架で運ばれている時でさえ、彼はまず怪我をした児童を避難させるようにと話していた。ワレリーは病院までもたず、救急車の中で息を引き取った。

学者

 宇宙飛行士のセルゲイ・クリカリョフと同じく、海洋学者のアルトゥール・チリンガロフもまた、ソ連と新生ロシアで英雄の称号に推薦された数少ない人物の一人である。

 チリンガロフは、生涯を北極と南極の研究に捧げてきた。2007年、彼は学者のグループとともに深海探査艇に乗り込んで北極海の底に潜り、史上初めて地理的北極点に到達した。彼はそこにロシアの旗を立てた。

消防士

 2010年3月20日、内務省大佐のエヴゲーニー・チェルヌィショフはモスクワ北部のビジネスセンターの火災現場に到着した。5階建の建物の4つの階が炎に包まれており、火災は街中から目視で確認できるほどだった。

 チェルヌィショフは救助された人々を外へ誘導し、燃える建物の中に戻って行った。最上階まで登ると、彼は自分の班に退避を命じ、一人だけで取り残された人々の捜索に向かった。エヴゲーニーは無線でボンベの酸素がなくなりそうだと連絡をした。数分後、彼は崩れた天井の下敷きとなって殉職した。

水兵

 19歳の水兵、アルダル・ツィデンジャポフの活躍によって、ロシア太平洋艦隊所属の駆逐艦「ブィストルイ」の乗員300人以上の命が助かった。

 2010年9月24日、アルダルはボイラー室の機関士の当直についた。この時、燃料の配管が破裂し、配線がショートして機関部で火災が発生した。もし電力装置が爆発すれば、船は沈没を免れなかった。

 燃料漏れを止めようと、アルダルはほとんどためらわずに火の海に飛び込んだ。彼は9秒間激しい炎に晒され、重度の火傷を負った。彼の努力で最悪の事態は未然に防がれた。アルダル自身は、4日後に病院で亡くなった。

軍人

 シリアでのロシア軍の軍事作戦中、特殊作戦軍上級中尉のアレクサンドル・プロホレンコは、敵の背後という最も危険な地点で活動していた。地上から、テロ組織「イスラム国」の重要施設への空襲の誘導を行っていたのである。

 2016年3月17日、ホムス県タドムル市の一地区で、アレクサンドルは戦闘員らに包囲された。降伏して捕虜になることを望まなかった彼は、最後の戦いに挑み、自らを空爆の標的にした。彼は自分を包囲していた敵もろとも爆死した。

警察官

 2016年7月9日、警察中尉のマゴメド・ヌルバガンドフは、ダゲスタンのセルゴカラ村近くの森で親族と休息していた。そこで彼らは、「イスラム国」の新兵を名乗る武装集団に襲撃された。

 武装集団はマゴメドのいとこを殺害すると、後に発見された携帯電話の動画から分かるように、マゴメドに同僚たちを退職させるよう要求した。誓いと義務に対する忠誠を失わなかったヌルバガンドフは、断固拒否し、「兄弟よ、働け!」と言った。この後彼は射殺された。

官僚

 ユーリー・ボリソフは、ソ連軍とロシア軍で20年間勤めた後、産業や軍産複合体、ロシア軍の軍事技術保障の発展および国家防衛問題に関わるさまざまな役職で能力を発揮した。

 2018年、ボリソフは、「特殊任務の遂行に際して発揮された勇気と英雄的行為」を讃えられ、非公開の大統領令でロシア連邦英雄の称号に推薦された。

パイロット

 英雄称号の授与が話題となった直近の事例は、2019年8月15日の航空機事故だ。この日、A321旅客機がジュコフスキー空港近くのトウモロコシ畑に奇跡的な着陸を行った。

 機体両側のエンジンが、離陸の際に鳥の群れを巻き込んで故障した。操縦士のゲオルギー・ムルジンとダミル・ユスポフには、空港に隣接する畑に緊急着陸を行う以外の選択肢は残されていなかった。操縦士らの冷静かつ熟練の行動によって、飛行機は燃料満タンの状態で(着陸の安全を確保するため)降着装置を出すことなく無事に胴体着陸した。ムルジンとユスポフはこの功績を讃えられ、国家最高の称号に推薦された。

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