あなたのお気に入りの映画はロシアでどんなものになっているのか?

Global Look Press, Vexels
 ロシアの人々は外国映画を「ロシア式に」鑑賞することに慣れている。しかしこうしたアプローチには大きなデメリットがある。タイトルにはおかしな翻訳がつけられ、また吹き替えも正確でないことが多い。

 外国人であるあなたがロシアに滞在中、自分の国で作られた映画を観にいくなら気をつけた方がいい。もしかすると、ロシア語を知っていたとしても、その映画がなんなのか分からないかもしれないからだ。しかもあなたがよく知っている俳優たちがまったく違う声で話し、またあなたが子どもの頃からよく耳にしている表現がまったく意味の違う翻訳になっているかもしれない。そしておそらくタイトルも違っているだろう。

インパクトのあるタイトル

 現地でのタイトルの考案は配給会社が行なっている。その重要な目的は、人々の目に留まりやすいよう、より興味を惹くタイトルにすることである。その結果、配給会社はあらゆる手を尽くすことになる。その主なやり方の一つが、恋愛をテーマにした映画をすべて「セックス」という言葉で表現するというもの。たとえば「FriendsWithBenefits」のロシア語版タイトルは「友情のセックス」、「No Strings Attached」は「セックス以上」、「The Rules of Attraction」は「セックスのルール」といった具合である。

 しかしながら、もしも映画の中にまったくセックスが出てこない場合は、別の策を取るしかない。たとえばエミ・アダムス主演の2013年のコメディ映画「Identity Thief」のロシア語タイトルは「できるものなら太っちょおばさんを捕まえろ!」で、これが2002年のレオナルド・ディカプリオとトム・ハンクス主演の映画「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」に由来するとしたら、かなり奇妙である。

 いくつかのタイトルのロシア語訳はまったく説明不可能なものである。フランスのコメディ「Intouchables」はなぜか「1+1」と付けられた。一方、嵐の海で生き残った船員をテーマにした映画「All Is Lost」はまったく反対の意味を持つ「希望は消えない」となり、「FairGame(2010)」もロシア語ではまったく反対の「ルールのないゲーム」となっている。

 「ユニバーサル・ピクチャーズ・ロシア」マーケティング部のエレーナ・シネエルソン部長は「わたしたちはいつもできるだけタイトルを直訳するようにしています。何らかの重要な理由で、直訳ができない場合に限って、クリエイティヴなタイトルをつけることにしています」と述べている

ロスト・イン・トランスレーション

 しかしここには難しい問題がある。それは翻訳家という職業にクリエイティヴなアプローチが求められるのかどうかということである。映画を訳すのは簡単なものではない。一つ一つのフレーズの対訳を正確に選び取らなければならないだけでなく、吹き替えがオリジナルのセリフと同じ長さになるように、ぴったりの尺で訳出しなければならないのである。しかも映画のセリフをすっかりそのまま訳すのは不可能である。罵倒語(ロシア映画では汚い罵倒語は2014年に禁止された)、スラング、ジョーク、掛け言葉などは省くか、ロシア語の同等の言葉に置き換えるしかない。

 「翻訳というのは妥協の繰り返しです。そしてその作品は多くの点で、常に終わりのないジレンマと闘っていくということなのです。どちらの悪がまだ許せるか、何を削るのかという選択の連続です」とスタジオ「Kubik v kube」の翻訳者、タチヤナ・オメリチェンコさんは言う。また限られた短い時間内で仕上げることが求められ、事実確認も翻訳者の責任になることも多い。当然、そのような状況の中でときには間違いも生じてくるというものだ。

 YouTubeのチャンネル「Movie English」はそんな翻訳の間違いを集めて紹介している。ジェイク・ギレンホール主演の戦争をテーマにした映画「マイ・ブラザー」(2009)で主人公が言うこのセリフ。「Icantwaittostartbouncingchecks」。ロシア語訳では「請求書に応じて支払う日が待ち遠しい」となっているのだが、実際には「bounce  checks」は不渡りを出すという意味である。

 もちろん、ロシアで上映、放映されている多くの映画やドラマは最大限にオリジナルに近くなるよう訳されている。しかしそれは常に賭けのようなものである。吹き替えられた翻訳を聴きながら、あなたはそれがオリジナルにどれほど忠実かは知る由もない。なぜならオリジナルを聴くことはできないからだ。

吹き替えは悪なのか?

 吹き替えに関してはロシアだけが特別なのではない。外国の映画を字幕つきで観るのが好きな国もあれば(たとえばアメリカ)、母国語に対する思いが強く、映画は吹き替えに限るという国もある(たとえばドイツ)。ユーリー・セルビンさんは「ロシアは吹き替えが多い。なぜならそのスタイルが人々により親しみがあるからだ。そこでほとんどの映画が吹き替えで上映されている」と指摘している

 字幕の方が好きだという人たちは、なぜ吹き替えが悪なのかという論拠をさまざまに挙げている。翻訳ではセリフの歪曲が避けられないことはもちろん、映画の世界に入り込めないというものもある。たとえばイギリスの映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」の黒人ラッパー、「トレインスポッティング」に登場するヘロイン中毒者、「ダウントン・アビー」の高貴な伯爵は実にさまざまな英語を話しているが、吹き替えになるとその違いはまったく感じることができないのである。

 俳優の演技もまた忠実に伝えることはほぼ不可能である。「吹き替えの声優が頑張っているのは分かる。イントネーションを真似し、叫んだり、囁いたり、笑ったり。しかし、どんなに努力しても、アル・パチーノやケヴィン・スペイシーの演技の半分も真似することはできない」とライヴジャーナルで、ユーザーのsamsebeskazalさんは書いている

 一方で吹き替えを批判する人は少数派である。たとえば、YouTubeに投稿されている「ウルフ・オヴ・ウォール・ストリート」の吹き替え版とオリジナルを比較する動画には、吹き替えを賞賛するコメントが書かれている。「ロシア語の吹き替えは傑作だ!」と。また声優たちの吹き替えの技術の高さも評価されている。そんなわけで、ロシアではこの先もまだまだ吹き替えが主流であり続けるだろう。

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