なぜロシアの司祭がセックス話やキリスト教布教のためにYouTubeを使っているのか

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 ロシア正教会の司祭は、YouTubeでセックスやタトゥーについて語り、他の司祭たちの神話を摘発しなければならないのだろうか。「神父が答える」というYouTubeチャンネルを持つアレクサンドル・クフタは、その答えを知っている。

 一見したところ、アレクサンドルは創作活動をする一般的な若い父親である。フルシチョフカと呼ばれる集合住宅の小さなキッチンで、彼は白紙のWordファイルに幾度となく向き合う。数分すると彼の妻は仕事へ行き、彼の注意は幼い息子のミーシャで独占される。

 しばらくすると彼の「フコンタクチェ」に投稿が新着する。「誰か、自分をシナリオに集中させる方法を知りませんか? 何日も試しているけどうまくいかない。」

 実はアレクサンドルは、26歳のロシア正教会の司祭である。彼はほとんどタブーに近いテーマでYouTubeの動画のシナリオを書こうとしている。教会で蝋燭を買うことで、祈りは神に届くのだろうか?

説教の場としてのYouTube

 アレクサンドルの最初の動画は3年前に公開された。これは当時すでにYouTubeで5千人のチャンネル登録者を持っていた同業者のアレクサンドル・ミトロファノフに触発されたものだった。

 「当時ロシアのYouTubeでは、司祭は皆無に等しかった。彼が最初の司祭ユーチューバーだった」とアレクサンドルは振り返る。一方主教たちはインターネットでの説教の必要性を認識しており、若く活動的な司祭にインターネットへ向かうことを促すだけでなく、インターネット空間で何をすべきか、また何をすべきでないかを定めた司祭ブロガー向けの覚書まで作成している(昨年ロシア正教会は、司祭ブロガーのコンテストを開催した。アレクサンドルは2位だった。ちなみに1位は該当者なし)。

 ミトロファノフの動画を研究したアレクサンドルは、結婚祝い金の200ドルで時代遅れのビデオカメラを購入し、実験を開始した。彼は単純明快な言葉で、潜在的な視聴者に向かって、自分が重要だと思うことについて語り始めた。婚姻前の性交渉がなぜいけないのか。教会はタトゥーやアニメとどう向き合っているか。またアレクサンドルは、視聴者に、キリスト教が時代遅れの蒙昧主義などではなく、まさに現代の最も先鋭な諸問題を解決する鍵であることを分かってもらいたいと考えていた。彼は小さい村の教会(正確な場所は明かしていない)で司祭をしているため、実際の彼の信徒はインターネットを見ない年配女性ばかりだ。それゆえアレクサンドルは、インターネットの視聴者向けに話す言葉を試行錯誤しながら探り出さなければならなかった。

 初め登録者はほとんどいなかったが、徐々に人が集まるようになり、今やその数は2万5千人に達した(彼が見習った同業者のチャンネル登録者数は5千から8千人に増えた)。彼の動画のうち最も視聴されたものは、再生回数が7万5千回に上っている。この動画は、ニコライ2世とバレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤの恋物語を描いたアレクセイ・ウチーチェリ監督の映画『マチルダ』のロシアの映画館での上映禁止を求めていたフセヴォロド・チャップリンという別の聖職者の発言に答えたものだった。アレクサンドルは動画の中で、チャップリンに「自分の浅はかな考えを神の意志と偽らないよう」求めた。「この人物(ロシアの映画監督アレクセイ・ウチーチェリのこと――編集部註)の映画が一体どうしてロシアを危機に陥れるというのか。ロシアという大国を崩壊に導くリーダーはマルチダではない。ロシアは他の問題で溢れており、それを背景とすると『マチルダ』など塵のようなものだ。妊娠中絶、汚職、悪路、麻薬、酒、これこそが問題だ」とアレクサンドルはブログで語っている。チャップリンの考えが教会の総意ではなく、教会内にはほかの立場も存在するということを示すためにこのような動画が必要なのだと彼は言う。

正教会ブログ活動に伴う危険性と誘惑

 もちろん彼にもアンチはいる。最も無邪気な批判者は無神論的指向を持つ学童である。彼らはコメント欄に、YouTubeで司祭がやるべきことなどないし、始める意味もないと書き込む。このようなコメントを見ると、アレクサンドルはマウスを軽快に動かしてその利用者をブラックリストに入れる。彼自身はいつも、こうすることでインスピレーションの流入を感じ、先延ばしの誘惑に打ち克つことができる。

 より悪質なヘイトは、正統な正教会信者からのものである。例えば、正教徒のコサックは時に、彼を見つけ出してボコボコにすると脅す。「私は彼らに好かれていない。私が教会のしきたりと違って、現代の分かりやすい言葉で話しているからだ」とアレクサンドルは話す。

 他の人気ブロガーと異なり、アレクサンドルにマネージャーやスタイリスト、音響監督、撮影技師はいない。チームに給料を出せないからだ。設備として必要なのは、マイク、視聴者からもらった新しいカメラ、プロンプターの代わりにテクストを見せてくれるタブレット、取調室さながらに白い背景とアレクサンドルの顔を照らし出す照明器具だ。彼は古典的な服装を撮影衣装に選んだ。つまり、法衣を着て首から十字架を下げている。

 アレクサンドルは撮影のためにスタジオを借り、3時間ずっとカメラと背景の間を行ったり来たりしてピントとホワイトバランスを調整し、さまざまなジェスチャーを交え、温厚な話し方から攻撃的な話し方までイントネーションを変えながらテクストを読み上げていく。

 彼のYouTubeチャンネルには、初期の15本の動画を除いて広告がない。彼はすでに、中国製のヘッドホンや正教会の出版物、正教の心理学者のサービスまで宣伝することを提案されているが、彼にとっては収入より評判の方が重要なのである。それゆえ彼は、月400ドルというささやかな給料で教会に勤め、時間がある時に動画を撮影するということを続けている。

正教会ハイプの善意

 動画がYouTubeで公開された後、司祭はそれを正教会のコミュニティにもアップロードした。登録者からのコメントと質問への応答がPR活動の一部となっている。

 教会はヨガをすることを許可するか、どのようにしたらタバコを吸う罪から救われるか、愛する者とのセックスの際に神のことを考えることはできるのか――このような質問がアレクサンドルのところに毎日送られてくる。彼にとっては退屈だが、欠かせないルーティンである。

 「神について話したいが、もし背中を痛めているのなら、ただ祈るだけでなく医者のもとに行くことが必要だと説明せざるを得ないこともある。かといってあまり多くのことを引き受けてはいけない。私は医者でも心理学者でも精神科医でもないからだ。私のやるべきことは、人々をキリストのもとへと導くことだ」と司祭は考えている。

 アレクサンドルは、HIVとエイズについての動画を撮ることを計画している。こうした病気は存在しないと言った「一部の聖職者」の神話を吹き飛ばすためだ。彼によると、ロシア正教会はこれらの病気を認知しているし、こうした病気と闘うことを呼び掛けている。

 このような高次の目標に加えて、神父ブロガーには世俗的な目標もある。自分の子供と妻をより気遣うことと、チャンネル登録者を10万人に増やすことだ(100万人にするのは夢のまた夢)。

 「若い司祭にブロガー精神を植え付け、YouTubeに来てもらうことが必要だ。その一部がと登録者数100万人を達成するかもしれない」と司祭は考えている。

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