ナタリヤ・ソロンツォワさん(54)は24番ルートのバスに乗るごく普通の車掌だった。深く息を吸い込み、「今、わたしたちはサンクトペテルブルグでもっとも美しいルートを走っています。このバスは街の中心部を横切るネフスキー大通りを端から端まで移動しています。窓の外には多くの観光名所が見えます」と語り出したあの日までは。以来、彼女は、バスで通りすぎる建物や名所を窓越しにたびたび説明するようになった。
ナタリヤさんは生まれ故郷であるサンクトペテルブルグをずっと愛してきた。オフィス勤務にうんざりした彼女は人生を一変させようと車掌の職に就いた。「バスでの仕事はまさに動きがあって、絶えず人とコミュニケーションが取れるものです」。ナタリヤさんは地元のニュースサイトSobaka.ruに対し、このように話す。
この仕事に就いた当初、ナタリヤさんは多くのロシア人が車掌に対して非常に尊大な態度を取るのにショックを受けたそうだが、笑顔を絶やさず、乗客によい1日をと声をかけ続けているうちに、人々も次第に親しみを感じてくれるようになったという。彼女は仕事した日に感じる自由な気持ちが気に入っている。
最近では乗客から嫌な思いをさせられることはほとんどないとのこと。彼女の説明の小さな間違いを訂正されたり、たわいのないことで言い合いになったことが何度かあったくらいだそうだ。「でもどれも敵意のあるものではありませんでした。単にペテルブルグの人々は街について話すのが大好きなんです」。
ナタリヤさんは毎回、何か面白い情報やストーリーを付け加えるようにしている。そこでペテルブルグに関する書物をたくさん読み、すでに読んだものを読み返しているという。お気に入りの一冊はニコライ・ゴーゴリの短編小説「ネフスキー大通り」。ナタリヤさん曰く「信じられないような雰囲気を伝えてくれる1冊です」。
ナタリヤさんは自分が何か特別なことをしているとは感じていないそうだ。ただ自分の仕事をこなし、その仕事を通じて、自分自身と乗客に喜びをもたらそうとしているにすぎない。
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