ムーロムのカラチ:古代ロシアから伝わるふわふわのパン(レシピ)

Olga Brovkina
 ロシア料理はパンの種類が豊富なことで知られるが、ムーロムのパン(カラチ)は中でも特別な位置を占めている。ムーロムで作られた古代から伝わるパンは何世紀にもわたって人々の心をつかんできた。

 カラチはムーロムにルーツを持っている。ムーロムというのはモスクワの東およそ280キロに位置し、とても長い歴史を持つ。記録によれば、ムーロムのカラチは、モスクワのカラチやブーブリクよりずっと前に作られたものである。

 カラチに関する記述が最初に登場するのは、1117年に執り行われた大公ウラジーミル・モノマフの末息子、アンドレイ公とポロヴェツ族のハン・トゥゴルカンの娘の結婚式に関する記録文書である。16世紀半ばになると、ムーロム・カラチが焼かれた8つの場所が明確に記録されている。

 伝説によれば、エカテリーナ女帝はムーロムを訪れたときにこのパンにすっかり魅了され、このカラチを皇帝の食卓にも出させたことから、パンは料理の宝としてのステイタスを確立することとなった。そして1781年以降、ムーロムの紋章には3つのカラチが描かれている。

 ムーロムのカラチのオリジナルレシピは失われてしまったが、地元の歴史家たちが世代を超えて地域で焼かれてきたレシピを記録してきた。生地は、発酵の際に出るガスを抜くために思い切り叩いて作るため、驚くほど柔らかく、ふんわり仕上がる。

 ムーロムのカラチは3つの部分に分かれる。「お腹」の部分は分厚くて丸く、お腹の上についた「くちびる」の部分はカリッとしていて、そして「取っ手」がその2つの部分を支えている。

 理想的なムーロムのカラチを作るには、よい小麦粉を選ぶことがとても大切である。良質で、乾燥した小麦粉を使うこと。洗練されたテクスチャーと最上質のクオリティの「特に上質な」小麦粉を使うに越したことはない。

 ムーロムのカラチの大きな特徴は、生地の作り方にある。伝統的に、生地は二酸化炭素を保つため、氷の上で、かなり長い時間、手を使って叩くかこね、それにより多孔質のパンにする。この技術は「すりおろしカラチ」とも呼ばれるもので、そこから転じて、比喩的に、経験豊かな人物のことをも指すようになった。ここでは、多孔質のテクスチャーにするため、かなり長い時間、生地を叩く。というわけで、多孔質のムーロムのカラチの焼き方をご紹介しよう。

材料 2個分:

  • 小麦粉 (最上質) 500g
  • 水(室温に戻したもの) 320ml
  • ドライイースト 4g
  • 砂糖 2g
  • 塩 2g
  • 溶かしバターまたは油
  • 打粉用小麦粉

作り方:

1. 大きなボウルに水250ml、小麦粉150g、ドライイースト、砂糖を入れ、水分の多いサワー種を作る。

2. サワー種を暖かい場所に30分ほど置き、発酵させる。

3. 30分したら、生地をこねながら、残りの小麦粉(350g)を少しずつ加える。小麦粉は生地がなめらかになるまで少量ずつ加えること。

4. 塩を加え、生地が完全に混ざるまでこねつづける。5分ほどかかる。ミキサーを使う場合は、スピードを中にし、15分ほどこねる。

5. 生地をラップか清潔なふきんで包み、暖かい場所で2時間半発酵させる。暖房器具の近くに置くとよい。40分経過したところで、ガス抜きをするためパンチする。さらに40分経過したら、同じ工程を繰り返す。

6. 2時間半が過ぎたら、生地を打粉をした作業台の上に乗せる。めん棒か手を使って、生地を繰り返し、半分に折り畳みながら、しっかり叩ガス抜きする。この工程を10分ほど行い、ダンプリングの生地のように密度の高いものにする。

7. カラチの形に整え、取っ手を作ったら、もう一度、暖房器具の近くなど、暖かい場所で30〜40分ほど休ませる。

8. オーブンを250度に予熱する。

9. カラチに溶かしバターか油を全体を覆うように塗る。全体に小麦粉をたっぷりふりかける。

10. 写真のような切り込みを入れる。切り込みを覆うように小麦粉を塗る。

11. 250度に予熱したオーブンに入れ、10分、スチームで焼く。スチーム機能がなければ、オーブンに3回水をスプレーする。

12. 10分後、温度を210度に下げ、カラチにきれいな焼き色がつくまで35〜40分焼く。

13. 焼き上がったら、オーブンから取り出し、1時間以上冷ましたら、手作りのムーロムのカラチの出来上がり。どうぞ召し上がれ!

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