欧米原油在庫増と原油安の影響

Shutter Stock/Legion Media撮影
 原油安によってヨーロッパとアメリカの貯蔵タンクの充填率が記録的な高さになっており、今後は原油需要が急減する可能性もあると、アメリカの投資銀行「ゴールドマン・サックス」のアナリストは伝えている。これはロシア経済への脅威となる。一方で、ロシアの専門家は、原油市場のパニックが起こるとは考えていない。

 ゴールドマン・サックスが10月27日に発表した研究報告によると、欧米の貯蔵タンクの石油量が記録的な多さになっており、将来的にはこれが原油の需要低下および原油価格の急落を引き起こす可能性があるという。

 例えば、アメリカ・エネルギー省のデータによると、アメリカの民間石油在庫は10月23日を最終日とするわずか1週間で、340万バレル増の4億8000万バレルに達した。「現在起こっていることは、石油製品の貯蔵タンクが満杯になって原油価格が急落した、1998年および2009年のできごとをほうふつとさせる」とゴールドマン・サックスの専門家は警告している。

 このようなシナリオはロシア経済への深刻な脅威となる。アメリカ系金融会社「シティグループ」の調査によると、原油価格が1バレルあたり10ドル(約1200円)下がると、ロシアのGDPが0.8%縮小するという。

 

主な原因

 ゴールドマン・サックスのアナリストはこれまでに幾度となく、原油安の予測で市場を脅かしてきたと、ロシアの投資会社「フリーダム・ファイナンス」ロシア株式市場運用管理責任者のゲオルギー・ヴァシチェンコ氏はロシアNOWに話す。「最近だと、『原油価格は1バレルあたり20ドル(約2400円)レベルまでさがり、10年間そのレベルにとどまる』と言っていた」

 原油安は備蓄と関係しているものの、反対の因果関係だと、ヴァシチェンコ氏は説明する。備蓄が増えるのは原油価格が下落しているからで、その逆ではないという。

 ロシアの投資会社「UFS」のアナリスト、ピョートル・ダシケヴィチ氏によると、備蓄が増えるのは、中東からの供給が止まる恐れからだという。「今のところ、市場に大量の石油が流れ込むという保証はない」とダシケヴィチ氏。とはいえ、相場はすでに、ネガティブな予測に反応している。10月29日、北海ブレント原油は、1バレルあたり1.57%安の48.3ドル(約5796円)まで下がった。

 原油安はすでに半年以上続いており、この期間は買い手の在庫が満杯になるに十分であると、ヴァシチェンコ氏は説明する。「在庫が満杯であることを含めた、すべての明らかになっている情報が、現在の価格に反映されている」と、会計事務所「フィンエクスペルティザ」評価部のアレクセイ・バスカコフ部長は考える。いずれの場合にも、このことは原油への小さな負の圧力となり、12月の石油輸出国機構(OPEC)の総会まではわずかな相場の下落があると、バスカコフ部長。

 

今後のシナリオ

 事実上、石油業界には、需要増を待つか、減産するかの2つの選択肢しかないと、ダシケヴィチ氏は説明する。「まだどこも減産したがっておらず、市場を去っているのは、大陸棚プロジェクトおよび個別のシェール鉱床を含む、最も非効率的な生産者のみ」とダシケヴィチ氏。この時、予測にもかかわらず、原油安はアメリカのシェール鉱床閉鎖を招いていないという。

 「アメリカは1バレル45ドル(約5400円)でも生産を続けており、閉鎖された鉱床は非常に少数」とバスカコフ部長。ヴァシチェンコ氏によると、アメリカの鉱床は1バレル40ドル(約4800円)でも利益を出すのだという。

 ここ1年、アメリカのシェールオイルの生産量はほぼ変わっていないと、ロシアの投資会社「ルス・インヴェスト」のアナリスト、セミョン・ネムツォフ氏は話す。市場から去っているのは、効率の良くない会社であり、この点で有利な生産会社がそのシェアを獲得しているのだという。アメリカでは生産効率が年数十%の勢いで高まっており、積極的に使用されている新技術は、生産コストを約5~10ドル(約600~1200円)削減していると、ネムツォフ氏は説明する。